ファミレスで 3
「無理矢理、こんなところに連れてきてごめんね。でもさっきも言ったように未来予知ができるんだよ。それでここにつれてきたわけだけど、そんなことより、君って何歳?」
僕がそういうと彼女は怪訝な顔をした。
「なんでそんなことを聞くんですか?」
「一応学生とか未成年だとかだと色々と考えないといけないところがあるじゃん?わかるだろ?」
「なら、未成年だとか学生とかじゃなかったら色々と考えないということですか?」
「いや、そういうわけじゃないけど、特に考えないといけないということだよ。」
少し僕の焦ってる様子を見て彼女は少し笑ってくれた。それにつられて僕も少し笑顔になれた。
「学生ですよ、A高校に行ってます。」
A高校、また懐かしい名前を聞いた。
「僕もそこにいってたよ。」
「本当に、じゃあ卒業生ですか?」
「ま、それ以外考えられないよね。」
「そうなんですか、なんか親近感がわいてきました。」
さっきまでの沈黙が嘘のように、思いのほか会話がはずんだ。意外なところに接点が見つかった。
「高橋先生ってまだいる?」
「いるますよ。世界史を教えてもらってます。」
「そうなんだ。あの先生は雑談が多いから授業進まなくて、急にテスト前になって真面目に授業するよな。それに模試とかの役にもたたない話しだしね。今もそう?」
「そうです、そうです。昔もそうだったんだですね。」
「それと、岩波先生もいる?あの人には結構世話になったよ。部活の顧問でもあってさ、担任でもないのに大学のことを心配してくれてさ。僕に国立の大学を受けるだけ受けろっていうだよ。まったく勉強にしてないのに受かるわけないのに、お前は頭がいいからわからないしそもそも受けなければ受かるものも受からない、とか言ってきてさ、結局落ちたんだけどね。そのあと一度も顔を合わせてないな。ま、合わせる機会もなかったし、合わせる顔もないんだけどね。それで、岩波先生は元気にしてる?」
「はい、しています。というか岩波先生の顧問している部活ということはあなたサッカー部だったのですか?」
「そうだよ。あまりうまくはなかったけどね。でも人数が少なかったからレギュラーではあったよ。」
「そうなんですか。私、実は彼氏がいまして、サッカー部なんですよ。」
「そうなの?というかそれなら顔知ってるかも知れないな。名前はなんていうの?」
「高橋亮太って名前です。」
「そいつか。知ってる、知ってる。結構あいつうまかったよな。一年のころしかしらないけど、結構記憶にあるな。しかも彼女なんかつくりやがって。羨ましいな。それにしても懐かしいな。というか亮太と一緒なら今二年生?だから17、16才ってところ?」
「はい、16才です。」
「そうか、なら色々と考えないといけないとな。それに人の彼女とこうやって一緒にいるのもまずいしな。お金だけ置いて帰りたいところだけと、君の様子を見ているとどうやら帰る場所がないようだけど、実際のところはどうなの?」
そう聞いた途端に今まで明るかった彼女の顔が暗くなった。
「そうです。途方に暮れてるっ感じです。」
「そうか、でも僕の家に泊めるわけにもいかないから、今日は漫画喫茶にでも泊まるのか?」
「そうしたいところですけど、お金がないんです。」
「いいよ、僕が出すよ。」
「本当ですか?」
「ああ、本当さ。」
この言葉を聞くと彼女の顔に明るさが戻った。そして残りのチャーハンを綺麗に食べ終えた。
僕は財布にお金があることを確認した。そのときに、まだ彼女の名前を聞いてないことに気づいた。
「名前はなんていうの?」
「飯田 綾っていいます。」
「いい名前だね。」
そういって会計を済ませた。