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異世界選挙とジャーナリズム  作者: ぼんじり子
2/5

序章1 「ーーーの残骸」

ときどきーーー思うことがある。

自分が使命と感じているものは、他人からみればただのエゴで


自分が思う「善意」そのものが、世界を歪めてしまっているのかもしれない、と。

それはつまりーーーー


自分という存在は、消えてしまった方が良いのかも知れないーーーーーと




▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼


「てめぇ!こんなボンクラネタしか取って来れねえんだったらぁ!!

仕事やめちまえよ!給料泥棒が!!!!」


上司の佐藤がツバを振りまきながら、いつもの如く罵声を浴びせてくる。

白髪混じり、ボサボサの髪。ヤニがこびり付いた黄色い歯。

絵にかいた様なゴシップライター、正にそのものである。


こいつは何かと大げさな物言いで、私のことを罵るのが好きだ。

積極的にネタを取りに行くわけでもなく、いつもデスクに座ってタバコを吸いながら

2chをみているクズ。(決して言葉にはできない)


「あのなぁ、2chって場所はネタの宝庫なんだよぉ。

俺はいつも必死にネタをさがしているわけ。歩数だけ稼いで何の成果も出さないオマエとは効率がチガウの。」


嘘をつけ。

お前がいつも見ている「ちょっとHな風俗スレ」から何の情報が得られるというのだ。私は知っているんだぞこの野郎!!


ーーーと言えるだけの度胸があれば。

そもそも私はこんなところにいないだろうか。



私の名前は、朝霞なぎと。

世の真実を追求する正義のジャーナリストーーーーーの残骸だ。

東京は阿佐ヶ谷にある出版社「東明社」で写真週刊誌に携わる、いわゆるゴシップ記者だ。


社会人2年目、月給18万7000円、彼女なし。

社会的なスペックは低めだとしても、いまは仕事に熱中している時期だから大丈夫ーーーーという訳でもない。


上記のとおりロクにネタを取ってこれず、それが原因で上司との関係もいびつな感じに…。

正直、きつい。

生活、人間関係、自分の不甲斐なさ。

さらに、仕事から充実感が得られないことへの不満。なんとなく毎日を、、ダラダラと過ごしているこの感じが、とても嫌だ。


そして何より、

嫌だ嫌だと言いながら、どうにもできない自分が一番嫌だった。




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「えっ、群馬ですか。なんでそんな突然…?」


「面白そうなネタを仕入れたんだよぉ。オレ独自のルートでな。

オマエが自分の考えで動いても何の役にも立たないから、

優しい先輩がネタ提供してあげようっての。現地行って何か取ってこい!」


(佐藤の野郎、いつかぶん殴ってやる。

いっそ2chにスレ立てて社会的に抹殺してやろうか…..)


湘南新宿ラインの車内、コンビニのおにぎり(海老マヨ)を食べながら

脳内で罵詈雑言の限りをつくす。直接言わないのはまぁ、、世渡り上手ってやつだ。


仕事柄、こういう突発的な出張はよくあるものだ。

2年目の私に拒否権などもあるはずもなく、こうして渋々と群馬に向かっている。


取材の目的はーーーーーーー白装束の集団。

数年前にワイドショーを騒がせた集団で、その実態は宗教法人らしい。

電波で人を操ろうとしているとか、宇宙人と大規模交信をしているだとか、

その活動は推測の域を出なかった。


5年ほど前から活動は下火になっていて、メディアに取り上げられることも

少なくなった。それこそ、取り上げたりするのは「月刊◯ー」くらいで

一部のオカルトファンの話題程度になった程度だ。


それが、最近になって活動が活発になってきたらしい。

佐藤のことだから、ソースは「オカルト超常現象@2ch」くらいのものなんだろうが、火の無いところに煙は立たないと言うし。

とにかく、上長の命令に従うしかない私なのである。


「ひもかわうどんでも食べて帰るかなーーー」

なんて、気楽に構えていたもんである。この時の私は。

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