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異世界選挙とジャーナリズム  作者: ぼんじり子
1/5

プロローグ -城の演説台にて-

ーーーーーーーーー十数万の眼が、様々な種族の眼が。本来”ここ”に立つべき者ではない私のことを見上げ、見つめている。



「….かつて私がいた国では、大きな間違いが起こりました。

一部の者達だけが情報を独占したために、争いを止めることができませんでした」



ーーーーーーー吐きそうだ。心臓の鼓動が早い。手の震えも止まらない。

水が欲しい、言葉を発するたびに喉の奥が乾燥していくのがわかる。



「…この世界でも、同じようなことが起ころうとしています。

ある者は情報を隠し、あるものは噂を操っている。あなた達を騙そうとしている」



ーーーー私はしっかりと喋っているか?

いや、正しく喋れていたとしても。世界を余計に混乱させるだけじゃないのか?

遠くで耳鳴りがきこえる。



「…世界を疑うべきだ。考えることをやめるな!

疑って、考えて、話し合って、答えを出す。そんな当たり前のことを

もっと皆がすべきなんだ。自分たちで、自分たちの国をつくるんだ!」



ーーーいや、ここまで来て何を言っている。弱気になるな。

ここで言葉にできなければ、私はただのヘタレだ。残骸だったあの頃に戻ってしまうだろうが。



城門を叩く音がどんどん大きくなってくる。

それに混ざって聞こえる怒声の数も多く、あまつさえ上位魔法をチャージする音さえきこてくる。


「ナギト!門がもう持たないよっ!!」


彼女はその小さな体躯を、一生懸命に門に押し付けている。

ここまで良く耐えてくれた。こんな小学生が考えそうな作戦に、全てをかけてくれた彼女には一生頭が上がりそうにない。


テンパって声をあげる彼女に対し、微笑みかけるように一瞥をする。

ひと呼吸を置き、覚悟を決める。その目にいっさいの曇りは無い。



「…シンプルに言おう。この王宮の中に、戦争を望む者達がいる。

街を村を、焼きはらうことで利を得ようとするものがいる。

賛同も非難も、好きにやってくれていい。だが、知るということから逃げるな!

これがその….証拠だ!」



投影魔法で撮影した写真をスケールする。

群衆があつまる城下の空には、現代でいうところのーーーーーVRホログラムのように

数多の写真が写し出された。

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