プロローグ -城の演説台にて-
ーーーーーーーーー十数万の眼が、様々な種族の眼が。本来”ここ”に立つべき者ではない私のことを見上げ、見つめている。
「….かつて私がいた国では、大きな間違いが起こりました。
一部の者達だけが情報を独占したために、争いを止めることができませんでした」
ーーーーーーー吐きそうだ。心臓の鼓動が早い。手の震えも止まらない。
水が欲しい、言葉を発するたびに喉の奥が乾燥していくのがわかる。
「…この世界でも、同じようなことが起ころうとしています。
ある者は情報を隠し、あるものは噂を操っている。あなた達を騙そうとしている」
ーーーー私はしっかりと喋っているか?
いや、正しく喋れていたとしても。世界を余計に混乱させるだけじゃないのか?
遠くで耳鳴りがきこえる。
「…世界を疑うべきだ。考えることをやめるな!
疑って、考えて、話し合って、答えを出す。そんな当たり前のことを
もっと皆がすべきなんだ。自分たちで、自分たちの国をつくるんだ!」
ーーーいや、ここまで来て何を言っている。弱気になるな。
ここで言葉にできなければ、私はただのヘタレだ。残骸だったあの頃に戻ってしまうだろうが。
城門を叩く音がどんどん大きくなってくる。
それに混ざって聞こえる怒声の数も多く、あまつさえ上位魔法をチャージする音さえきこてくる。
「ナギト!門がもう持たないよっ!!」
彼女はその小さな体躯を、一生懸命に門に押し付けている。
ここまで良く耐えてくれた。こんな小学生が考えそうな作戦に、全てをかけてくれた彼女には一生頭が上がりそうにない。
テンパって声をあげる彼女に対し、微笑みかけるように一瞥をする。
ひと呼吸を置き、覚悟を決める。その目にいっさいの曇りは無い。
「…シンプルに言おう。この王宮の中に、戦争を望む者達がいる。
街を村を、焼きはらうことで利を得ようとするものがいる。
賛同も非難も、好きにやってくれていい。だが、知るということから逃げるな!
これがその….証拠だ!」
投影魔法で撮影した写真をスケールする。
群衆があつまる城下の空には、現代でいうところのーーーーーVRホログラムのように
数多の写真が写し出された。




