プロローグ
『魔力のある生物とその生態 〜タクミ・ソノダ 著〜』 前書きより抜粋
この世界には、『魔力』と呼ばれる不思議な力が存在している。
それはこの世の理の外にある力。
不可能を可能に、夢を現実にしてしまう力だ。
皆も周知の通り、我々人間は魔力を持たない。
では何故、我々は魔力の存在を断言出来るのか。
それはもちろん、我々の身の回りに魔力を持つ生き物たちが存在しているからだ。
ゴブリン。ドラゴン。エルフ。ペガサス。
名前を上げればきりがない。
君たちも一つくらいは聞き覚えがあるだろう。
わたしはそんな、神秘的な生き物たちに心奪われた者の一人だ。
奇妙で、不可思議で、神聖で、冒涜的。
残忍で、慈悲深く、尊大で、矮小。
彼らに常識はない。すべてが規格外で、奇怪だ。
わたしはそんな彼らのことが知りたくて仕方がなかった。
世界のルールを無視して存在する彼らに、言い知れぬ魅力を感じたのだ。
だからわたしは、この本を書くことに決めた。
この本には、わたしが見聞きした魔力をもつ生き物たちの図と、その奇妙な生態が記されている。
彼らは不可思議な存在だ。
もしかしたら、わたしの見聞きしたものはすべて幻であったのかもしれない。
しかし。それでも。
もし貴方がこの本を手に取ってくれたのなら。
神秘的な彼らの幻想に思いを馳せて欲しい。
では、ページをめくろう。
彼らを知るための一歩を共に踏み出そうではないか。
彼らの幻が、あなたの心に根付くことを祈って。
タクミ・ソノダ