Episode 5 ~心を失った少女は光を見つけた~
わからない。
一体由佳は何が一番大切だったんだ?
はっきり言えば、俺は由佳を「覚えていないのではなく見たことがあまりない」。
永田家には両親と死んだ親友の永司と由佳以外に、兄が2人いる。(合ったことも名前を聞いた事もないが)
すなわち、由佳が一人だけの娘というわけだ。
そりゃ手塩をかけて育てるわけで、
いわゆる箱入り娘。
由佳は中学校まであまり兄と出掛ける、といった事が無い。
そして、永田家は俺の家と交友関係はあったのだが、それでも噂に出る程度。
唯一覚えている事も、
俺の頭の中では断片的で、不確実だ。
すなわち、あの約束。
あの時は、俺は中2で、由佳は中1だった記憶だ。
もはや無駄と言っていいほど手塩をかけて育てられただけあって、恐ろしく真面目にできた奴だよ。
あの時かな、誰にも染まらず、無垢な白。
そんな風に思ったのは。
「さすがに考えすぎよ。休みなさい。」
「なんでだ。休んでる暇に由佳になにかあったらどうするんだ。」
「いいから休みなさい。もう何日寝てないのか考えたの?」
確かに、3日間俺は寝ていない。
でもここまでしか考えがまとまってない。
「寝たらもしかしたら思い出すかもしれないのに。たしか、たまに変な夢を見るのよね?」
「まさか、それに賭けろというのか?」
「ものは試しようよ。寝てみなさい。それに、私だって寝てるのにあなたが寝てなくて倒れて2週間経って手遅れなんて、嫌なの。」
「…わかった。今日のところは従おう。」
と、言われるがままに、倒れるかのように眠る。
その日、俺は夢を見た。
だが、いつもとは違う。
「なぜか由佳は目の前にいるのに辺りの情景は今までの時とは大きく違う」
なのに、今までの情景よりも、なぜか説得力があると感じる。
俺の入院してる病棟の中。
記憶を失う直前の自分の目の前に、由佳はいた。
「あなたは、藤道修哉。」
「だけどあなたは、来たる時まで記憶を壊させていただくわ。」
なんだこれは。
こんな奴じゃないはずなのに。
「だけど、このペンダントがその時と判断する時、壊された記憶は元に戻る。」
「だから、肌見離さず持っていなさい。」
「…わかりました。」
なぜ、受け取った。
こんな悪夢の象徴を。
「そして、約束してください。」
「忘れないで。」
「絶対に忘れないで」
「まだ意味はわからなくても、いつか守りたい人の為に忘れないで。」
「守りたい人を守る力は、もうあなたの手にあるという事を忘れないで。」
「ああ、わかった。」
「よかった…」
そしてその後。
全て、忘れた。
理由は、生命維持装置の重篤な破損。
俺は1週間生と死を彷徨い、死にはしなかったものの、全てを忘れた。
…
すなわち、彼女の大切な物とは、このペンダントだったんだ。
その後、そうであると確信した俺は、永田家に赴き、彼女にそっとペンダントを「返した」。
…
「…あの時記憶を壊したのに、もう取り戻したのか。」
!?
意識は戻った。が、確実におかしい。
「いや、まあいい。もはや我も必要無かろう。」
「また会おう藤道の子よ。」
次は殺す。
そう言い残して、由佳に「なりすましていた」奴は消えた。
「修哉…くん?」
「由佳、よかった…」
「おかしいな…私茜にいたはずなのに…」
「まあ、その辺は気にする事じゃないだろ。さて、そろそろ時ヶ丘に戻るぞ。」
「あ、これ…」
「そのペンダントか?俺はもういらん。」
「いや、まあ一応今の持ち主は修哉くんなんだし、はい。」
悪夢の象徴を笑顔で渡された。
「あ、ああ。」
冷や汗かいてないよな。俺。
「とりあえず、行くぞ。いろんな人が待ってる。」
「はーい♪」
こんな自由奔放だったのかよ逆に疑問になるわ。
というか親友の妹よ、なぜ俺の手を取る。
そういえばこいつ、昔からこうだったわ。
天然というべきか、甘えん坊というべきか。
とにかく永司にひっついたら離れない磁石のような奴だったことを思い出しながら、そして次は殺すと言って消えたあの謎の影に対する疑問を残しながら、時ヶ丘へ向かう。
一歩一歩確かめながら。
Episode 5&第一章「約束」終




