家族になろう 2
僕らの世代が学生だったくらいの頃。
本や絵本が電子化して、本屋が減ってしまった時代…。
教科書さえ電子化していた大学で、君のママに出会ったんだよ。
本をよく読んでいた、君のママに。
みんなiPadを持ち歩いていたのが普通だったからね。
片手にいつも文庫本を持った彼女が気になって仕方なかった。
いや、本がなくても、彼女自体に惹かれていたんだけどね。
付き合い出したのは、それからしばらくしてからだった。
お互いに初めての恋愛じゃないのに、どこか不器用で、もどかしくて…今でも、笑えるよ。
それくらい、君に夢中だった…何て言ったら、君は笑うかな?
そういえば、あの頃から君はずっと言ってたね。
友達の受け売りだって言ってだけど、その友達が僕にこっそり教えてくれたよ。
「確かに私が言ったけど、それは一度だけよ?
だから、今は、それを何度も大切に使うあいつの言葉よ。」って。
流石、彼女の友達なだけある。
そう。その言葉はね…
『どんなに世の中が電子化した文章で埋めつつされても、
子どもに読んであげる絵本だけは、
きちんと重さを持った絵本を、
私の手と言葉で読んであげるの。』
君は本当に、素敵な女性〈ひと〉だよ。
だからね、この子の手にも今愛情溢れた言葉が握られている。
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