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リントヴルムの揺籠(ゆりかご)外伝  作者: 翠山 朔


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外伝:白竜の青春

リリアーナがまだ1歳にも満たない頃。ルークは8歳になり、白銀の鱗を輝かせる美しい若竜へと成長していた。今やルピーネ、ロドルフ、アルヴィンの三人(と赤ん坊のリリアーナ)を背に乗せて悠々と空を舞うことができる。


その日、S級冒険者パーティー『白銀の疾風』が受けたのは、帝都の南に位置する旧帝国の神殿跡に棲みついた飛竜ワイバーンの群れの駆除だった。 数にして一ダース。油断ならない相手だが、魔導スリングを操るルピーネ、ハルバードを振るうロドルフ、そして魔法の矢を放つアルヴィンの連携は完璧だった。三時間の激闘の末、八頭を討伐。残る数頭は恐れをなして雲の彼方へと逃げ去っていった。


「やれやれ、終わったか」 討伐証明の鉤爪かぎづめを集めるロドルフが息をつく。横ではアルヴィンがワイバーンの翼を検分しながら、「これで丈夫な落下傘パラシュートが作れそうだ。魔導飛行船ルフトシッフから飛び降りる時に使えるね」と楽しげに笑う。 「……直接飛び降りるのか? エルフの辞書に『安全』の文字はないのかよ」 ロドルフが呆れ顔で突っ込んだ、その時だった。広場の最奥にある礼拝堂跡で、ガサガサと音がした。


三人が武器を構えると、そこから這い出してきたのは、ルークの三分の二ほどの大きさしかない若いワイバーンだった。色素の薄い若草色の鱗が、成人(成竜)前であることを物語っている。 「礼拝堂の地下で寝ていたのか……。どうしよう、この子。親を狩っちゃったんだったら、生かしておいても可哀想かもしれないね」 アルヴィンが伝説の片手剣レイピアを向けた、その瞬間だった。


「キュイイイッ! 殺しちゃダメー!」 ルークが叫び、そのいたいけな飛竜を庇うように自分の後ろへと隠した。 「でも、ルーク。連れて帰るわけにもいかないでしょう?」 ルピーネが諭すが、ルークは頑として動かない。 「キュキュイイ、キュキュイイ」と一生懸命に言葉をかけ、ワイバーンの子も「プールルル……」と戸惑うような声を返す。


「……メスだね」 アルヴィンが面白そうに目を細めた。 「これは、ルークの初恋かな?」 「えっ、一目惚れ!?」 「っていうか、ルークって男の子だったのか。アルヴィンにべったりだから、てっきり女の子かと……」 ロドルフの不躾な独り言を、ルークは尻尾の一振りで一蹴した。


結局、一行は幼い飛竜――「ワイリー」と名付けた――を帝都まで連れ帰ることにした。ギルドの裏庭にある厩舎を賃料を支払って借り、騎士を見張りに立てるという物々しい状況。ロドルフが「この依頼、赤字になるかもな」と財布を叩いたが、ルピーネが「いいじゃない、ルークがこんなに嬉しそうなのは初めてだもの」と、乳母から受け取ったリリアーナを抱きしめながら微笑んだ。



一週間ほど、ルークは甲斐甲斐しくワイリーの世話を焼いた。自分の食事を分けてやり、鼻先を擦り付けて宥める。野生の警戒心に満ちていたワイリーも、次第にルークにだけは甘えた声を出すようになっていた。

だが、別れは突然やってきた。 帝都の上空に、巨大な影が二つ。逃げ延びたワイリーの両親が、娘の気配を追って不時着したのである。 「プルルルー!」 両親の姿を見たワイリーが、これまでにない歓喜の声を上げる。その声を聞いたルークの動きが、止まった。


「ルーク。ワイリーはおうちに帰りたいんだよ。……帰してあげよう?」 アルヴィンの静かな言葉に、ルークは悲しそうに瞳を瞬かせた。 そして、大きく「キュルルルー!」と一声。それは祝福か、それとも惜別か。滞在中、二頭をつないでいた魔法の糸を自ら解き、ルークは大きく翼を広げて空へ飛び立った。自分を置いて両親の元へ駆け寄るワイリーの姿を、高い空から見届けるために。

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