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第2話 目覚め

 目が覚めた時、最初に気づいたのは天井が違うということだった。見慣れない木の梁、カビ臭い匂い、どこか湿っぽい空気。ここは——どこだ?身体を起こそうとして、違和感に気づいた。軽い。異様に軽い。普段なら両手をついて起き上がるのに、腹筋だけで身体が起きる。


 手を見た。小さい。子供の手だ。

 

 「……は?」

 

 声も高い。子供の声だ。慌てて身体を確認する。足も小さい。腕も細い。俺の身体が——子供になっている。パニックになりかけて、深呼吸した。落ち着け。状況を整理しろ。最後に覚えているのは——龍介に撃たれたこと。胸を撃たれて、死んだ。でも、今生きている。子供の身体で。転生?そんなバカな。でも、他に説明がつかない。


 ベッドから降りようとして、床までの距離があることに気づいた。子供の身長だと、ベッドが高い。着地に失敗して、床に手をついた。その時、改めて気づいた。両手がある。龍介に破壊された両手が、ちゃんとある。五本の指が、全部ある。動く。ちゃんと動く。涙が出そうになった。あの痛みを思い出す。でも、今は痛くない。

 

 「両手……ある」

 

 当たり前のことが、こんなに嬉しいなんて。


 部屋を見回した。広い部屋だ。たくさんのベッドが並んでいる。そのほとんどで、子供たちが眠っている。孤児院?窓から月明かりが差し込んでいる。夜中らしい。ここはどこだ?日本じゃない気がする。でも、確証はない。

 背後から声がした。振り返ると、金髪の男の子が眠そうに目をこすっていた。何か言っている。でも、聞き取れない。言語が——分からない。

 

 「What are you doing?」

 

 男の子が、もう一度聞いてきた。今度は英語だった。完璧な発音の英語。ネイティブだ。

 

 「ナッシング!」

 

 咄嗟に答えた。男の子は首をかしげて、自分のベッドに戻っていった。

 

 「Don't wet your bed~」

 

 おねしょするなよ、と言われた気がする。馬鹿にされた。でも、気にしている場合じゃない。

 俺は大人しくベッドに戻った。状況を整理する必要がある。まず、俺は死んだ。龍介に殺された。でも、生き返った。子供の身体で。ここは英語圏らしい。孤児院のような場所。俺の名前は?記憶を探る。……ルクス。この身体の名前は、ルクスらしい。でも、俺の記憶は健太のままだ。つまり、健太の記憶を持ったまま、ルクスという子供に転生した?


---


 龍介のことを思い出そうとすると、頭が重くなった。記憶に蓋がされているような感覚。でも、確かに覚えている。龍介が俺を殺したこと、利香のことを言っていたこと。「利香は俺のものだ」——あの言葉の意味は?龍介は、利香に何をしたんだ?利香は無事なのか?不安が込み上げてくる。でも、今の俺には何もできない。この状況を理解するのが先だ。


 記憶を探る。ルクスという少年の記憶。断片的だが、いくつか分かることがある。ここは孤児院で、街の名前はトゥルグ?言語は英語のようだ。年齢は十歳くらい。家族はいない。孤児だ。ルクスは昔から無口な子供だったらしい。都合がいい。俺が急に喋り方が変わっても、不自然じゃないだろう。


 混乱してきた。情報が多すぎる。とりあえず、今分かっていることをまとめよう。一、俺は龍介に殺された。二、子供の身体で生き返った。三、ここは英語圏。四、俺の名前はルクス、孤児院にいる。五、健太としての記憶はある。今後の目標は?まず、この世界で生き延びる。そして、元の世界に戻る方法を探す。龍介と利香のことを確かめる。


 ベッドに横になった。眠れない。龍介の顔が浮かぶ。「すまない」と言った時の、あの表情。苦しんでいるように見えた。でも、それでも俺を殺した。許せない。絶対に許さない。必ず、真実を知る。そして——。いつの間にか、眠っていた。夢を見た。利香と龍介と三人で遊んでいる夢。高校時代、文化祭の準備をしていた時。龍介が冗談を言って、利香が笑って、俺も笑った。楽しかった。あの頃は、まだ——。


 目が覚めた。朝だった。周りの子供たちが起き始めている。俺も起きた。新しい人生が、始まる。木下健太として死んだ俺が、ルクスとして生きる。それが、俺の物語の始まりだった。

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