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第8話 相棒を目指して

愛情表現(ラブシチュエーション)は後にしてもらおうか。ニヴルヘイム」


俺とデミヒューマンは同時に腰のピストルを抜いた。


「ダークエルフ!」


この場面において現れたのは裏切り者、ダークエルフ。


「アクリス。探したぞ。危うく私が次期リーダーの立場から下されるところだった」

「ダークエルフ。数年間どこに身を隠していた。狙いがデミヒューマンなのはわかっている。いい加減表舞台に出たらどうだ」

「私はただ潜伏していただけだ。スパイエージェント同様にな。そのデミヒューマンの特殊能力。私はそれが欲しい。デミヒューマンの特殊能力である潜入能力(スニーキング・パワー)。どうだデミヒューマンよ。私の元に来る気はないか。アクリスを守る力も、ニヴルヘイムでリーダーの座を狙う力もやる」

「嫌。僕はアクリス先輩と一緒にいる。ニヴルヘイムは僕の家。生まれも名前もない、記憶もない僕にとって一番安心する場所(エデンの園)なの。それに、アクリス先輩とは約束したんだもの!最強のコンビを組むって!だからあんたみたいな裏切り者にはなれない」

「…そうか。ならば死ね!」


ダークエルフが汎用機関銃を構える。


「やばい!」


この小道でその武装はまずい!蜂の巣にされてしまう!


「行け!」


トートが撃ち気を引くとダークエルフはトートに狙いを優先し発砲。その間に俺らは走った。ただ、トートの頭はシャンパンのように弾けたのが、一瞬だけ見えた。

隣のマンションの部屋の窓ガラスが割れ、銃弾がダークエルフに襲いかかる。


<こちらヤルクス。助太刀いたす>

「すまん!手間をかける」


ヤルクスがグレネードを投げると、ダークエルフは素早くグレネードを掴みアクリスの所へと投げた。ブシュッと白い煙が出る。


「スモークか!」

「アクリス!デミヒューマン!遠くに逃げろ!うぉ!?」


ダークエルフがヤルクスに向かって乱射。壁を貫通し逃げながら外へ飛び出す。


「ダークエルフ!大丈夫か!」

「思うようには行かなかったが、計画通りだ」



「はぁ…はぁ…」


とにかく逃げ回った。ヤルクスは無事か…?無線が繋がらない。雨も止んでるのにまだ繋がらないか…!応えてくれ!


「そこまでよ」


サプレッサー付きのピストルを構えてきたのはミズガルズのエージェントだった。俺らは追い詰められてしまった。


「それは…Mk.22 Mod.0か?」

「そう。(こっち)じゃ、最高クラスのピストル。ここで死んでもらわないと、私自身も殺されちゃうの。死ぬ前に、デミヒューマンはどこ」

「素人は死にに来たようだな」

「は?」

「デミヒューマン!」


誰もいないマンションから銃弾を放つ。僕の能力が、もうちょっと強ければこんな場所にいなくて済んだのになぁ…!

防弾スーツに守られ逃げていくミズガルズのエージェント。弱っちぃ奴。

そのまま僕達はドイツ支部へと戻った。ただ、帰ってきたのは僕とアクリス先輩だけ。支部に居たのは小説を読みながら帰りを待っていたジズだけだった。


「…あれ、みんなは?」

「…わからん。だが、トートは助からなかった…」

「…そっか。ヤルクスは?」

「わからない。無線が繋がらないままだ。捕まったか…死んだか…」

「とりあえず、ボスから命令だよ。デミヒューマンはここに向かって。輸送は自分とは違うエージェントがやるけど、プロだから大丈夫。アクリスは自分と一緒にヤルクスを探しに行こう。形跡はあるはずだよ」

「…わかった」


こんな別れ方になるとは、思ってもいなかった。


UH-1が到着。ついにお別れ。


「デミヒューマン。これをやる。あの時持って帰って正解だった。これは、俺からのお守りだ」


渡してきたのはカセットテープ。『1812』と書かれている。


「…これ、ボリスラーフの時に流れてたクラシック…」

「そうだ。最強のコンビには、今日はなれなかった。だが、またいつか会おう。今度こそ、最強のコンビになろう」

「…本当…?」

「ああ誓うぞ。絶対にだ」


その真剣な眼差しに、僕も信用した。


「…ただ、今回みたいになったら次は許さないからね!絶対に約束だよ!」

「もちろん。絶対に約束する」


僕は最後に、アクリス先輩に近づいてほっぺたにキスをした。そのままUH-1に飛び込み、上昇する。


「またね〜!先輩!行ってきま〜す!」

「…行ってらっしゃい」


僕とアクリス先輩との物語は、再び幕を閉じた。


「…先輩、すっごい照れてた…可愛いかったなぁ…」



ミズガルズ本部、大聖堂…



「サマエル。君は確かニヴルヘイムではトップクラスのエージェントであったな」


大聖堂に呼び出したダークエルフは、ブローニングM1910を持っていた。

対するサマエルはMk.22 Mod.0。


「君の元上司でもあるけどね」

「中国兼モンゴルにKGB諜報員として忍ばせたトピェレツが東ドイツで死亡した。W54とデイビー・クロケットを奪われたわけだ。サマエル。いくら私の元上司とはいえ、今回の失態は許されないかつ、ラストチャンスだった。今は私の方が上だ。私が許さないと言うのならば代償を取らせる」

「上等よ」


サマエルがMk.22を発砲するが、ダークエルフは避けてサマエルに向け撃ち返す。


「無駄な抵抗だサマエル。私がただのエージェントだったとは思わない方がいいぞ」


再びサマエルは撃つが壁に向かって放った。その弾丸は跳弾してダークエルフに向かっていく。

素早くダークエルフは飛んできた弾丸に向かって撃ち、弾丸に弾丸を当て撃ち落とした。ブローニングM1910を大聖堂の壁に撃ち、柱の裏にいたサマエルに跳弾させ当てる。サマエルの右足に命中した。


「狙った場所を必ず撃ち抜く跳弾の技は私が生み出した特別な技術だと忘れたか?」

「この野朗!」


思いっきりダークエルフに飛びつき、Mk.22を頭に突きつける。

ダークエルフは即座にベルトのバックルに手を当てる。すると、バックルから2発の弾が発射されサマエルの防弾スーツに当たる。ゼロ距離射撃で防弾スーツは衝撃を吸収できず、サマエルの肋骨を折り、スーツも少し破けた。

その場に再び倒れたサマエルは立ち上がれない。


「…尾錠型仕込銃(バックルピストーレ)…?」

「そうだ。何も戦略を考えずただ憎しみに走るからこういったトラップに引っかかるのだ」


ダークエルフがMk.22を拾う。


「知っているかサマエル。Mk.22 Mod.0はうるさい猟犬を黙らせる、つまり人間も静かにさせることからハッシュパピー(犬よ、静かに)というそうだ。銃の名前も運の尽きだな」

サマエルの頭に向かってハッシュパピーを撃ちトドメをさした。


「カスピエル。後は頼んだ」

「あいよ」


ダークエルフは大聖堂を去っていった。

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