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第3話 赤を追って

前哨基地から少し離れると、段ボールを開けて外の空気を吸った。バラライカのことをロングウィットンに伝え、その日は一日中トラックに積まれっぱなしだった。止まるのは給油と休憩の時だけで、荷台はとにかく乗り心地は悪いものだった。

でも、それがなんとなく緊張を和らげていき、気づけば僕は眠っていた。


「…やば…寝ちゃった…」


日の光が僕を照らし目覚めた。でも動く影が見える。まだ眠りから覚めていない状態で目を開け、起きると、AKMを構えたソ連兵がいた。


「…Привет」(…どうも)


ロシア語で挨拶すると、僕は銃床(ストック)で殴られ気絶した。


再び眠りから覚めると、牢屋にぶち込まれていた。武器も無線機もない。両手は縄で縛られている。


「お目覚めか。女のガキが諜報活動とはこりゃたまげたな。で、アメリカか?それとも中国か?」


僕は無言を貫いた。


「ロシア語も話せるそうじゃないか。無言ってこたぁねぇだろ。それとも、殴られたのが気に食わねぇか?」

「ウラジミール。後は私に任せろ」

「ハッ!」


歩いてきたのはあのスタニスラフだ。


「名前は?」

「…」

「この無線機と銃はなんだ?この銃、西側の物だよな?お前は誰だ。いや、どこのスパイだ」

「…」

「…話さないか。良かろう。わからせてやれ」

「承知致しました」


僕は縄を掴まれ連行された。

拷問のお時間だ。大丈夫だ。ニヴルヘイムで拷問訓練ぐらい受けた。

密閉室に閉じ込められた僕は、スーツとスラックスを破かれ、椅子に固定された。


「話すまで開放はしないぞ。楽になりたければ口を解くことだ」


スタニスラフが拷問室から出てくると、ソ連兵に命令した。


「Сначала сломай руку.」(まずは腕をもげ)

「Понял」(了解です)



<こちらハンサ。目標地点到達。投下する>



「さてお嬢ちゃん。拷問のお時間だ」

「何も吐かないよ」

「それはどうかな」


ソ連兵がナタを取り出すと、固定した腕を掴み、まるで棚板の上に野菜でもあるようにナタを振り下ろそうとした。

丁度、B-71爆撃機が超高速で飛行。誘導爆弾を投下し前哨基地を破壊した。

爆発で拷問室の屋根が崩れ、椅子も瓦礫で壊れ僕は脱出する。


「火災だ!早く火を消せ!」

「避難しろ!早く!」


僕は急いで基地から離れた。



目標達成(ミッション・コンプリート)。RTB>


B-71が旋回し帰投していく。


突如として爆撃された前哨基地に、ソ連とモンゴルは中国とアメリカを疑った。だが、両国は関与を否定。証拠もなかったため、輸送中のプロパンガスが事故で引火し爆発を起こしたことにして隠蔽した。


「で、その様か」


ボロボロのスーツを着て、今にもずり落ちそうなスラックスを押さえている僕にそう呆れた目で見つめてくるロングウィットン。


「でもでも!奴らの狙いは知れたよ!まだ作戦失敗じゃないもん」

「まぁな。首の皮一枚繋がったわけだ。こっちは新しい服だ。任務内容は無線でする。まだ任務は終わってないなら、気は緩めるなよ」

「それにしては秘密兵器のB-71を最新技術の爆弾を持たせて出撃させるなんて、随分リスキーな事したね」

「数百万、数千万の命がかかってるだけじゃない。これは今後の時代にも影響する任務(ミッション)だ。使っても文句は言われまい」


B-71は超高速の高高度戦略偵察機であるSR-71の爆撃機型。本来はアメリカで開発された試作機で没になった機体で、それを裏で取り引きし購入したのだ。世界にたった1つ。空飛ぶ伝説というわけだ。おまけに、B-71に今回搭載されていたのは最新技術で作られた爆弾、誘導爆弾を搭載していた。


「次は失敗できんぞ。気を引き締めろ」


ロングウィットンは去っていった。

少しは褒めてくれてもいいのに…。

再び宿に入り、ゆっくり休んだ。



朝起きて、目的地に到着する。


<いいかデミヒューマン。道路上に止まっている軍用車があるだろう。そいつに乗れ。一時的なパートナーがいる。作戦内容は彼女が知っている>

「了解」

<そして、嬉しい連絡だ。スタニスラフとヴァシリエヴィチの関係だが、親子関係のようだ。スタニスラフ・ヴォリスラーヴォヴナ・ヴァシリエヴィチの父親はボリスラーフ・アリスタルホヴィチ・ヴァシリエヴィチ。君がかつてアクリスと共に排除したこの男の息子とは、何かしら奇妙な縁があるようだな>

「参ったなぁ…とりあえず、次のミッションに移るよ。ついでにスタニスラフにも遭遇するだろうし」


ドアを叩いて開けると、サングラスをしたエージェントがいた。


「よろしく」

「こちらこそ。私はキョンシー。エリートエージェントじゃないけど、お役に立てるよう努力するわ」


綺麗なお姉さんだ…。


「僕は何すればいい?」

「今回の作戦はスタニスラフの追跡じゃない。修正主義者のバラライカの追跡をするわ」

「あの、その修正主義者のバラライカってなんなの?」

「これを見て」


写真を渡されると、MiG(ミグ)のような戦闘機が写っていた。だが、先端しか写っておらず、他はシートで被され隠れていた。


「もう1人のエージェントが撮影したものなの。加工はされてない。つまり、本物の写真よ」

「ただのMiGだけど…」

「いいえ。確かに形はほとんど同じ。でも、このMiGのタイプ、MiG-21は中国には導入されてないの。中ソ論争で関係が悪化したから対立中に開発されたMiG-21は中国には輸出されなかった」


このMiGモドキ、一体なんなんだ…?

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