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第11話 託されたもの

「観念するんだな。ダークエルフ」

「…俺が何も考えずデミヒューマンを見逃したとでも?」


壁が爆破されると数名の傭兵と1人のエージェントが突入してきた。フヴェルゲルミルは直ぐに隠れ交戦する。


「カスピエル。随分と早い到着だったな」

「でしょう?」


ダークエルフがM1911を拾い壁に向けて3発撃つと、グリフォンの防弾スーツとバジリスクの耳に命中。もう1発はヤタガラスのルガーMk.Ⅱを撃ち抜いた。バジリスクが悲鳴をあげる。


「なんて技やってやがるあの裏切り者め…」


ダークエルフとカスピエル達は爆破された場所へ進み、逃げていく。


「あの野朗!」

「待てグリフォン。今は負傷者もいる。撤退しよう」

「…そうだな。バジリスクの応急処置は頼んだ。俺はデミヒューマンを見に行ってくる。先に離脱しろ」


この時、バジリスクは初陣。初陣で片耳を失ってしまったのである。


「無事を祈るぞ」



デミヒューマンは苦戦していた。圧倒的な弾幕には抵抗手段もない。武器はピストル一丁。もはや交戦すらできなかった。

なんとか切り抜けようと、必死に考える中、閃きが舞い降りる。

デミヒューマンは上のスーツを脱ぎドレスシャツ姿になる。脱いだスーツを廊下に投げ、重武装兵に撃たせると、速攻、固定機関銃の同じ箇所を撃った。固定機関銃は故障。弾詰まりを発す。急いで重武装兵の場所へ突っ走りジャンプ。重武装兵の真上で回転し靴に仕込んだナイフを突き刺した。毒が回りその場で倒れる。


「急がなきゃ…」


アクリスに肩をかし、デミヒューマンは一生懸命に歩く。

しかし、諦めよう、見捨てよう、止まろうという感情は一切湧かなかった。それは愛。紛れもなく純粋な心の証拠。愛がデミヒューマンの動力源となり、動力源は愛となった。


「デミヒューマン!」


グリフォンが駆けつけ、デミヒューマンの代わりにアクリスを抱えた。


「ありがとうグリフォンさん…」

「よく頑張った。脱出するぞ」


歩く中、倉庫に辿り着く。たくさんのエージェントと傭兵の死体が散らばっていた。1人でデミヒューマンがやったのである。


「最初見た時は目を丸くしたぞ」

「えへへ…」


突如、倉庫の1つのガレージが警報と共に空き、キャタピラを動かして出て来た。正体はTO-55火炎放射戦車。


「まだ生き残りがいた…!」


砲塔がこっちに向くと停車。主砲の横に搭載された火炎放射器を発射する。

命中はしなかったが、炎が地面を長く燃やす。


「ありゃまずいぞ…」

「動きが鈍い。多分、搭乗員が足りてないかも…」

「なら少しは抵抗できるか…」


さらに、奥の壁が爆破。重武装兵3人がゆっくり攻めてくる。

スピーカーからキーンと、電源が入った音がした。


[終わりだデミヒューマン。全て動きは監視カメラで撮影されている。既に包囲されたのだ]

「…ダークエルフ!」

[お前の先輩とやらであるアクリスは時期に死ぬ。この基地を出てもシベリアの寒波がお前らを襲うのだ。もう助からん。それに、そんな男を助けて何になる?かつては相棒と任務を捨て、ギャンブルにハマり、数年間ニヴルヘイムから逃げていた。地の底に堕ちたその男に、価値はない。キューバ危機を解決したのは結局、ソ連とアメリカだ。ボリスラーフを殺したのはトピェレツを上手く我々が利用できるようにもした。まさに裏切り者だ。本当にいいのか?デミヒューマン]


TO-55を中心に、重武装兵とエージェントが包囲した。


「…アクリス先輩を侮辱しようが…貶そうがどうだっていい!人は弱くて、脆くて、失敗もする!でも、成長する。それを学んで成長するんだ。例え、失敗をして、逃げて、地に堕ちて、長く立ち直れなかったとしてもだよ!成長して、いつか再び道に戻って来る!元の道じゃなくても、新しく自分が切り拓くんだ!その切り拓いた道は、そんな軽蔑の言葉で、崩れるほどやわじゃない!アクリス先輩は、そんな言葉で破壊されるほど弱くない!僕の知ってる先輩は、強くて、人想いで、人間らしさも兼ね備えた最強の先輩!それを僕が支えなきゃいけない!それこそ、僕が生きる意味と任務!お前は否定するだけ弱い存在なんだ!支えも自分も、味方も殺して、道を閉ざす奴なんかに負けるもんか!」


デミヒューマンの目が火のように光った。


「なんなんだコイツ!」

「撃て!」


素早くグリフォンは握っていたスタングレネードを投げ牽制する。

同時に、アクリスはデミヒューマンの言葉で生気を取り戻していた。


「デミ…ヒューマン?」


デミヒューマンの全ての手の指から球体状の光が出現する。


「喰らえぇぇぇぇぇっ!」


目がピカァッと閃光を放つと、指から光線が発射されレーザーカッターのようにエージェントや重武装兵、戦車、基地を切断した。光線は再び集まり巨大な球体を作ると、大規模な爆発を起こした。

その爆発は、デミヒューマンと俺達だけが守られているかのように、俺らには効かなかった。


シベリアの遠くの原住民の村では、巨大なキノコ雲が見えていた。



爆風が消えると、デミヒューマンが鼻血を出して倒れた。アクリスが近寄り、抱える。


「アクリス!デミヒューマン!大丈夫か?」

「俺は……なん…とか…」

「無理はするな」


天上から月光が刺してくる。


「大丈夫ー?」


カラドリオスが天上から覗いてきた。紐を垂らし俺らを助ける。


「地上へおかえり。ただ…これから、少し旅をしなきゃいけないよ」

「…嘘だろ?」

「合流ポイントまで行かないと。ここシベリアの中央辺りだから墜落の配慮からヘリが来れないよ。随分前もそうだったじゃん。シベリア訓練の時」

「…確かにな。しょうがない。アクリス、動けるか?」

「なん…とか…」


フレースヴェルグが倒れそうになるアクリスを支えた。そのままおんぶって歩き始める。ヤタガラスがデミヒューマンをおんぶし、覚悟を決めた顔をする。


「バジリスク、動けそうか?」

「ああ。耳だけでよかった」

「初陣で耳を失うのは災難だが、生きてるだけマシだ。次の任務で返上しろ」

「…そうだな!」

「よし。行こう。合流ポイントまで急ぐ」


最後の戦い。それはシベリアの大自然だ。

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