第9話 シベリアの空で
やって来たのはニヴルヘイムの基地。
「デミヒューマン。アクリス、ヤルクスが捕まった。ミズガルズにだ。最後の緊急通信はほんの数時間前。ジズからだった。お前を狙ってきたと。それ以来、応答はない」
「…え?」
「呼び出した理由はミズガルズの基地がわかったからなんだが…。どちらにせよ行かなきゃいけないな」
ロングウィットンからの連絡はこれだった。ミズガルズの基地を襲撃し、人質の回収。
「…アクリス先輩…」
「本来今日は作戦会議をする予定だったが、今すぐ突入することにした。大丈夫だお前1人じゃない。フヴェルゲルミル・スクワッドもついている。とりあえず作戦内容は機内で話そう」
既にエンジンが回っていたAn-12に乗り込んだ。黒く、いつでも走れるように息を荒げていた。中には戦車のようなものが搭載されていた。
「紹介しよう。フヴェルゲルミル・スクワッドのメンバーだ。グリフォン、フレースヴェルグ、バジリスク、ヤタガラスだ」
グリフォンはG3ライフル、フレースヴェルグはMP5、バジリスクはAk 4OR、ヤタガラスはルガーMk.Ⅱと、一人一人の役割に合った銃を持っていた。
デミヒューマンとバジリスクが会うのは2回目である。
「お久しぶりですバジリスクさん」
「うん」
「バジリスクと面識があるとは、よほどイカれた任務だったようだな」
離陸後、高高度に達し、作戦内容を話された。
「ミズガルズの基地はここ、ソ連のシベリアの中だ。ここの上空からこのASU-85と一緒に降下。屋根を突き破ってそのまま制圧し救出する」
「でも、これって、撃ち墜とされるんじゃないのか?」
「今回は護衛付きだ。擬装しつつ素早く退却する」
そういって外を見ると、MiG-21が3機並んで辺りを警戒していた。
ミズガルズの基地に入るのは簡単だ。シベリアの大地から見れば端っこにある。ただ、ソ連軍のレーダーには確実に映る。スクランブル発進ですぐさま航空機が来るだろう。今回は、キューバより命がけだ。
僕には新しい装備が支給された。
高火力のイサカM37、予備のUZI二丁。電気ショックのメリケンサック。そして毒が塗られた靴に仕込むナイフ。今まで毒は塗られていなかったが、新しく緊急用の武器として作られた。武器は少ないが、十分だ。
シベリア上空、An-12の後部ハッチが開き、朝日が僕達を出迎えた。
<もうすぐ到着だ。既にレーダーには映っている。到着後素早く降下しろ>
<敵機1機確認!急速接近中!>
<こちら1-1!目標を確認する!>
ハッチからMiG-21が飛行機雲を作りながら接近する航空機を迎えに行った。
<撃ってきやがった!>
弾丸がAn-12を横切る。後少しなのに!
<こちら1-2迎撃に当たる>
<同じく1-3迎撃する>
ビュゴーッと横を通り過ぎていった敵機。
あれ?…見たことある機体だ。
「もしかしてあれJ-7!?」
「J-7は中国の戦闘機だ。シベリアにはない。おそらく、ミズガルズの奴だろう」
<これ以上は進めない。ここで降下せよ>
パイロットからの指示で、全員が立ち上がる。
「…久しぶり。あの時以来」
<相棒のためだ!思う存分やって来い!>
無線からデミヒューマンの声が聞こえる。
高度約10000m…あの時とほとんど同じ…!
携帯音楽プレイヤーでビートルズの『Back in the U.S.S.R』を流す。
降下ランプがグリーンに光り、戦車を出した。
「デミヒューマン!お先に!」
「俺も」
「お先にね」
「やっほぉうい!」
次々フヴェルゲルミルのメンバーがはっちゃけながら飛び降りていく。
「先輩!今行くよ!」
僕も飛び降りた。同時に、An-12の片方のエンジンが火を吹いた。
今僕が出来ることは先輩達を助けること。このまま目標を目指す。
朝日が見える。はっきりと。もしかしたら、これがニヴルヘイム最大の戦いの始まりを意味するのかもしれない。
「Foooooo!」
「ヤタガラス。あんま調子に乗るんじゃない」
「パラシュート展開!派手に行くぞ!」
ASU-85の大型パラシュートが開き、ミズガルズの基地へ突っ込んだ。
「な、なんだ!?」
ASU-85に乗り込み走らせ基地内を破壊し回る。
しかしエンジンが停止。着陸の衝撃で壊れていたようだ。
ハッチを開け、手持ちのイサカM37を放つ。16ゲージがミズガルズの防弾スーツが破り、魂と一緒に威力で吹き飛んだ。
「進めば進むほど奴らは出てくるな。だが、こいつら、ミズガルズの雇われ兵士だ。エージェントじゃない」
「ミズガルズのエージェントはニヴルヘイムと比べてとにかく少ないが強い。少数精鋭というべきか、本当の戦力を無駄にはしたくないんだろうな」
傭兵が持っていた武器はAKMや56式自動歩槍、マカロフPMといった火力が高いものばかり。
「防弾スーツとはいえ、こいつらの武器ならいつかは破れる。素早く動くことだなデミヒューマン」
「はい」
フヴェルゲルミルのメンバー達がコッキングをしたり、リロードをする。僕はスーツが受け止めてくっついた弾を払い落とした。
「デミヒューマン。お前と合図で突入するぜ」
「分かった。じゃあ、行くよ!」
「「了解!」」




