第0話 サイド・イン・ザ・ミサイル・クライシス
1962年、キューバ…
1962年10月15日、南アメリカの島国、キューバとアメリカが衝突。ソ連のミサイル基地を発見したことでアメリカ側は海上封鎖。それに対しキューバとソ連が猛反対し、核戦争手前まで行くという事件、通称、キューバ危機が発生した。
トートが命令を下す。
「キューバ派遣班はダークエルフ、ヤクルス、カラドリオス、タッツェルヴルムの4名とする。アメリカ政府派遣班はシーサー、ティーターンの2名。海上封鎖監視班はヤオフー、アンズー、アポピスの3名。緊急事態に備え、予備班はアクリス、デミヒューマンの2名とする。全体の指揮は私ことトートが取るが、予備班に関してはニヴルヘイム2代目リーダーであるユミルが特別に取る。以上。各自配置につけ!」
私はダークエルフ。キューバ派遣班のエリートエージェントだ。相棒のエルフは私を指揮する司令として動いている。今回、全体の指揮権はトートにあるが、私達の班はエルフが指揮権を握る。
キューバ…
夜中、キューバに潜入。敵の潜水艦が到着する前に、素早く潜入を行った。
<みんな聞こえるね?今作戦はキューバのミサイル基地に潜入すること。基地内にソ連将校がいる。名前はスラヴィク・スミルノフ。KGB工作員の1人で、ボリスラーフっていうKGB幹部直属の部下で信頼を得てる。今作戦はスラヴィクを誘拐する。頼んだよ>
ある日の夜中、私達は作戦を開始。素早くミサイル基地に近づいた。
「タッツェルヴルム。お前はここで待機して退却の合図を送れ。カラドリオス。あの警備塔に登って敵スナイパー排除した後に援護しろ。ヤクルス。お前は俺についてこい」
ミサイル基地の内部に入ると、キューバ兵の将校が誰かと話し合っている声が聞こえた。
「Товарищ Борислав дал нам приказ. Они придут. Я рассчитываю на тебя.」(同志ボリスラーフからのご命令だ。奴らは必ず来る。頼んだぞ)
…ロシア語。例の将校だ。
ヤクルスが周りの警備を次々暗殺する。
「敵はいない。殺るなら今だ」
「分かった」
扉を押し開け、中にいたキューバ兵とスラヴィクを引っ捕らえた。麻酔薬を使い2人を眠らせた。
「よし。連れ出すぞ」
急いで外に出て全員と合流すると、素早く脱出用のボートで出航した。
「こちらキューバ派遣班。ターゲット捕獲。帰還する」
<了解〜。お疲れ様〜>
ニヴルヘイム本部に到着し、ヤルクス、カラドリオスが2人を担いでいくと、俺の肩をタッツェルヴルムが叩いた。
すると、後ろからタッツェルヴルムが俺達に銃を向けていた。
「タッツェルヴルム…?」
「静かにしろ」
タッツェルヴルムが首から自らの顔を捲ると、奴の顔が現れたのだ。マスクだったとは…。
「…時間か」
「計画を実行する。行くぞ」
「分かった」
本部の中で、司令担当をしていたエルフに会い、共にティータイムを過ごした。これが、最後の晩餐だった。
「いやぁお疲れ様ダークエルフ。もう一緒に任務できないかと思ってたよ…」
「俺もそうだろうとは思っていた。だが現場にはもう行けなさそうだな」
「うん。司令になっちゃったからには無理かもね」
「ああ…。エルフ。正直、俺はうんざりした。俺とお前はいい相棒だった。なのに、お前だけ昇進して、俺は孤独に任務を熟す毎日。やりがいも、プライドも、友情もない地獄のような日々だ。お前が作戦指揮官だった今回は偶然に過ぎないはずだ。俺はわかった。この世界は俺のような性格には似合わねぇ場所なんだとな」
「ダークエルフ…一体何を言ってるんだよ。俺とお前…お前…おま…あが…」
エルフが苦しみ出した。お前の紅茶は毒入りの紅茶だ。お気に召したか?
「ダーク…エルフッ!…なん…で……」
その場に静かに倒れたエルフは、もう起きることはない。あばよ。元相棒。
「要は済んだか?」
「ああ。行こう。ミズガルズに」
冷戦真っ只中、とある男がモンゴルの草原を歩み、ゲルに入る。
「Капитан. Ты перейти к Монголия.」(大尉。君はモンゴルに行きたまえ)
「Понял」(承知しました)
その上官からの命令1つは、国境なき諜報機関を混乱の渦に巻き込む事件へと発達するのだった。