第59会 バチャメリーノとフェローチェ
またある夜。
「ふんふーん。」
「あら、ご機嫌でやってきたわ。」
「こんばんはリーフェ。」
「こんばんは。」
「なんか、ピザが置いてある。」
「食べる?
美味しいと思うわよ。
それも、夢から覚めても忘れないくらい美味しいピザ。」
「ほう。」
ピザを取ろうとした手をぱしん、と叩かれた。
「おや、失敬。」
「ちーがーう。
撫でてから行きなさい。」
「……本当にそれ慣習にするの?」
「あら、お嫌?」
「嫌じゃないんだけど、
リーフェ的に子ども扱いされてるようなもんだよ。」
「あなたになら、いいわ。」
「あら、そう……。」
ふわりとリーフェの頭を撫でる。
「うん、いいわよ。」
「いただきます。」
一切れちぎって食べてみる。
「ほわっ!?
トマトとチーズのシンプルなピザかと思ったら、
いや、そうなんだけど……。
トマト滅茶苦茶美味しくない!?」
「いいトマトが採れてね。
ピザにしてみたのよ。」
「リーフェ何でもできるね……?」
「ピザ生地買ってきてピザソース塗って
トマト置いてチーズ散らせただけなんだけど。」
「なんて名前のピザ?
いつかまた食べたくなりそう。」
「名前つけてなかったわね。
うーん。
トマトの品種はバチャメリーノって言うんだけど。」
「おや、変わった品種。」
「私の国で育ってたヨーロッパの異次元トマトね。」
「じゃ、このピザはバチャメリーノだね。」
「すぐに受け入れるあたり、素直というか……。」
「嘘だったんですか?」
「本当だけど。」
「うん、美味しい。
トマトの香りが強い。
フレッシュで味が濃いけど、まとわりつかない。
ケチャップにも向いてそう。」
「……ねぇ。」
「あ、うるさかったね。」
「じゃあなくて。」
「うん?」
「そのケチャップを作ってあるのは言うまでもなく。」
「早いね。」
「で、あなたの炒飯を食べてみたいわ。」
「やれるけど、道具変わったら味が変わるかもしれないよ。」
「明晰夢、許可してあげる。」
「こういう時は許可されるのね。」
「私はわがままだからね。」
「可愛いもんじゃない。」
「ふふ。
で、やっていただける?
ご飯は炊いてあるから。」
「おっけ。」
自分が使っているコンロ、フライパン、オイルを召喚。
「……ここ、ガスってくるの?」
「夢だから、大丈夫よ。
それくらいはサービスするわ。」
コンロにオイルを入れて火にかける。
しばらく待ってオイルに熱が回ったのか湯気がもやもや出てくる。
「……結構熱するのね?」
「これがポイントです。」
ボウルにご飯を投入し、卵を割り入れてヘラで混ぜる。
途中、塩コショウにマジックソルト、オレガノ。
完全に混ざったらフライパンに投入。
じゅわあああ……。
「ちょいと待っててくださいよ。」
火が少し回ってきたところでバチャメリーノケチャップ投入。
あとは水分が飛ぶまでじゃかじゃか木ベラで混ぜる。
「水分飛んだかな。」
どんぶりに炒飯をより分ける。
「はい、召し上がれー。」
「いいにおい、いただきます。」
れんげでリーフェが一口食べる。
「ん!これ美味しいわね!」
「どれどれ、もぐ。
……これケチャップの優勝じゃなーい?」
「コショウとかオレガノのバランスがいいわね。
卵がムラなく回っているのも綺麗。
……これ、編み出したの苦労したんじゃない?」
「ポイントは外から学んだのでー……。
そんなに苦労はしなかったかな?」
「はふはふ。」
「聞いてませんな。」
「聞いてる聞いてる。
こんなに美味しいものなかなか食べる機会ないから。
あー、美味しい。」
「意外に好評。」
「ミカエル様やウリエル様も喜びそうね。」
「だといいのですが。」
しばらく食べて、どんぶりが空になった。
「洗い物するよー。」
「いいわよ、やっておくから。」
「いあいあ、料理は洗い物までして完成なので!」
「……そう?
キッチン奥にあるからどうぞ?」
キッチンあったんだ。
カチャカチャ洗い物をする自分。
「終わったよ。」
「はい、じゃあ私からはこれ。」
「……ケーキだ。」
「レアチーズケーキに似てるかしらね。
まぁ、混ぜて固めるだけだからそんな大したものでもないんだけど。」
「なんか、チョコっぽいリングついてますが。」
「チョコじゃなくて、飴よ。」
「あめ!?」
「まぁ、食べて行って。」
「いただきまーす。」
「じー……。」
「めっちゃ見てくるじゃないですか。」
「どうかなって。」
「フォークが軽く入る。もぐ。
……うん?味が、レアチーズじゃないような?」
「あ、わかるのね。」
「なんか、香ばしいんだけど甘い。
飴……、カラメル焼きのような。
んー。」
「そこまでわかれば十分よ。」
「そうですか?
因みに何て名前のケーキになるんです?」
「フェローチェ。」
「綺麗な名前のケーキですね。」
「……はぁ、ウリエル様と決闘だなんて気が滅入るわ。」
「勝算は?」
「無いわね。
天使の格が一緒でも、私は経験値が圧倒的に不足してるから。
空中戦に持ってかれたら終わりね。」
「電気ナマズの石でサークルビームにするとか。」
「それ、あなたしかできないんじゃない?」
「そうでしょうか。
師匠たるリーフェならできそうな気もしますが。」
「あのねぇ、いつ私が師匠になったのよ。」
「エシェンディアだった時?」
「ずいぶん昔の話を持ち出すわね……。」
「リーフェにとっては昔だね。」
「世界線が違うけど。」
「できそう?」
「姫龍閃だっけ、あなたの技。」
「うん。」
「ちょっと派生が特殊ね。
一撃七閃っていうのは普通では難しいわね。
明晰夢使ってるんでしょうけど。」
「使ってますね。
普通では無理です。」
「……ちょっと、やってみるかしら。」
「ん?」
「最奥の部屋、いい?」
「うん。」
連なって最奥の部屋へ。
本気なのかリーフェが衣装チェンジしている。
「一応に動きやすい服だけどー……。
あなたに技を乞うのも悪くないわね。」
「どうしちゃったの。
あんなに強気でしたのに。」
「あなたそういう人が好きなわけじゃないでしょう?」
「そうですけど。」
「電気ナマズの石、貸してくれる?」
「はいな。」
リーフェに石を渡す。
「こつん、こつんと当てる感じよね?」
「掌で当てて、右親指から小指まで放って、拳にして7撃。」
「ほっ!」
ぽーんと石が飛んでいく。
「あー、もう。」
「まっすぐ、一撃で当てる感覚?
なんだろう。」
「ほっ!」
石を拾ったリーフェが再び石に拳を当てる。
ピカッ!と石が光る。
「おっ……、感覚では合ってるみたいね。」
「センスいいなぁ。」
「教え方が上手ね。
……苦労したんでしょ?」
「明晰夢頼りです。」
「はっ!」
真っ白い光が円になって空を駆け巡る。
「お!サークルビーム!」
「……あなた、当たらなかった?」
「防ぎましたが。」
「ごめんなさいね。
自分でも制御できないみたいで。」
「そんなもんそんなもん。」
「技名、何だっけ。」
「翠翔。」
「まだ時間はある?」
「ありますね。」
「もうちょっとあなたの技を賜りたいわ。」
「おっけ。」
結局朝が来るまで訓練し続けた。
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