表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/56

第50会 天界と壊れたパソコン

最奥の草原に出るとものすごい勢いで天空へ。

そして、天界。


「うへー……、雲海が広がってるー。」


「これすら珍しいのか。」


「そうですねぇ。」


よくわからない力で連れられているっぽい。

触ってもいないのに……。

いや、もともと熾天使ですもんね……。


「あ、天使。」


「気になる?」


「……確かに寂しそうな顔をしているなぁ。」


「構ってほしいような顔してるくせに

全然構ってほしくないその曲がった性根が嫌い。」


「迷惑らしいならいいんですけどね。」




と、教会の前に到着する。


「……見覚えがないんだけど、ミカエル様がいそうな教会。」


「シュライザルに罪を着せたりしないから。

怒られたら全面的に謝るよ。」


「どうしてここまで?」


「ここの中を見る価値があると思うんだよねー。」


ゴゴン、と扉が開く。

小さな歌声が聞こえる。

幼い子供の天使が飛んでいる。

ステンドグラスに中世のつくりを思わせる細かな装飾。

自分の中ではこういう印象なんだろうな……。

教会とは言ったが、相当に広い。


「どう?」


「夢の中で見る夢、という印象でしょうか。」


「ふむ。」


すいっと中に入っていくウリエル。

自分の意思とは関係なく連れられて行く。


「待て。」


「何よ。」


槍を持った天使に声をかけられた。


「ウリエル、連れている者は誰だ。」


「めんどくさいやつに見つかったわね……。」


「答えろ!」


「多分、天使。」


「多分、だと?」


「前世が天使だと思ったから連れてきた。

この私が連れてくるんだからそれなりに見込みがあるのはわかるでしょ。」


「しかし、見たところ人間ではないか。」


「今は、ね。」


「帰れ、ここは神聖なる聖域であるぞ。」


「……アルメルスだっけ。」


「それがどうした。」


「この人間、死ぬほど強いよ。」


「ちょっと、ウリエル様……!」


「ほう?

そなたの保護下なしに浮くことすら叶わない人間がか。」


「いいだろう、私に一撃でも当てられるなら通してやる。」


確かに男性の天使だ。

ここに来てまで女性の天使だったらどうしようかと思ったよ。


「じゃ、落とすよ?」


「へ? わっ!」


庇護がなくなり少しだけ下に下がる。


「ほう、浮けたんだな。」


「気が進まないんですが、ウリエル様。」


「いっちょやってみよう。

全責任は私が負うから。」


「重いことをおっしゃいますな……。」


鋭い突きが来る。


「うん?」


ひらりとかわす。

魔法乗せ、振り回し、突き、その全てをかわしている。


「ウリエルが推すだけはあるな……。」


無手では勝てない。

武器を召喚する。


「む!? 待て!」


手が止まった。


「何か?」


「記憶の限り、ブラムスと……、ノーチェスに見えるが。」


「別に滅しはしませんが。」


「その武器を持っているということは我々より格上だ。

まさか、実在したとは思わなかったが。」


「そっか、それ見せたほうが早かったんだね。」


「知っていたのか、ウリエル。」


「シュライザルの娘だからね。」


「シュライザル……? どこかで聞いたな。」


「お? 轟いてる感じ?

シュライザル、有名人だよ。」


「嬉しくないなぁ。」


「ひょっとしてミカエル様とお知り合いか?」


「一応には。」


「む、これは失礼を働いたかもしれないな。

すまない。」


「部外者が入っていい場所ではないと思います。

真っ当な防衛手段であったのではないかと。」


「ウリエル、なにしてるんですか。」


「ミカエル様。」


「騒がしいと思って来てみたらアルメルスまで。

大丈夫です、不審者ではありません。」


「面目ない……。」


すいっとアルメルスが去っていく。


「さて、ウリエル?」


「あ、あはは……。」


「シュライザルをここに連れてきた理由を聞きましょうか。」


「相応しいかなーって。」


「あ、ミカエル様怒っちゃいやです。

私も興味があって連れてきてもらいました。」


「もう、シュライザルはウリエルに甘くしないでください。

だからこんなことするんですよ。

後でお連れする予定ではありましたが。」


「ほらー。」


「ウリエルは図に乗らない。」


「はぁい。」


「アストテイル君の言っていたように寂しそうですね。」


「天使ですか?」


「えぇ。」


「あなたなら気になると思っておりました。

もともとそんな顔です。」


「助けてほしいわけじゃないとウリエル様から伺いましたが。」


「えぇ、そうですね。

大体は無感情なのでそう見えるだけです。」


「なるほど……。」


「私たちみたいに感情がある天使も珍しいんだけどね。

上位天使はそんなもんなんだけど。」


「ウリエル様明るいですもんね……。」


「なにー? 惚れたー?」


「一緒にいて楽しいとは思いますが、

明るすぎませんか。

僕には感情が眩しすぎますかね。」


「奥さん見てたらわかるけどさー。」


「面白い表現をされますね、シュライザルは。」


「そうでしょうか。」


「下位天使に感情がないのは事実です。

会話がそもそも拙い天使も多いので。」


「……ミカエル様、あの、失礼かと思うのですが。」


「はい。」


「執務室を見学させていただけませんか。」


「あら、興味がありますか?」


「えぇ。」


「ご案内しましょう。」




ミカエルの執務室。


「こちらです。」


「ミカエル様、よくシュライザルを通しましたね?」


「まぁ、一目置いていますからね。」


「上位天使でもあんまり入れないんだけど。」


「えっ!?」


「気になさらないでください。

私と戦闘して切り結べる相手もそうそういません。

楽しかったですよ?」


「僕は燃えるグローブで力を増幅していたんですが。」


「そもそも天使と人間では恐ろしいほど差があります。

リーフェの燃えるグローブを使ったとて、

通常の人間では天使に及びません。

シュライザルはご自身がどれだけ異常か

ご理解いただいていないようですね。」


「万能ってないんだなぁって……。」


「とある分野の創作物の影響でしょうか。

なんにでも勝てる、というものは存在しませんよ。

無論、それは我々にも言えることです。」


「ミカエル様にも勝てない方が見えるんですか?」


「……分野が違えば、ですが。

あなたに勝てないなって思うこともあります。」


「えー?」


「例えばそこのパーソナルコンピュータ。」


「天使もパソコン使うんですね。」


「壊れています。」


「いや、壊れてるんですか!?」


「電源ボタンを押しても動かないんです。」


「見ても?」


「ほらそこ。」


「ん?」


「すぐに直そうと思いましたよね?」


「直せる確証はありませんが。」


「出来るなら直ってほしいです。

直せる者がおりませんので。」


「ふむ。」


電源ボタンを押してみる。


一瞬電源ボタンが光ったが消えてしまった。


「電気が来てない、ってオチはない……な。

コンセントは刺さってるや。

電気がどこから来てるかは置いて置いてだ。

電源自体が入らないなら電源ユニットかマザーボードですね。」


「は?」


「ウリエル様、それはないんじゃないですか。」


「2個かどっちかじゃん、もうわかったの?」


「パソコンなんてそんなもんです。

バラしてもいいですか?」


「構いませんよ?」


取り出してバコン、とふたを開ける。


「む、何ですかこのもこもこは。」


「ホコリですね。」


「綺麗にはしていたんですがね……。」


「冷却に空気を吸い込みますんでどうしてもこうなりますね。

電気お借りします。」


掃除機を召喚してホコリを吸い込んでいく。


「明晰夢って便利だねー。」


「さっぱり何をしているかわかりません。

電気自体は構いませんが。」


「電源ユニットっぽいな。

まずはここだろうね。

ほいほい。」


ころりと電源ユニットが現れる。


手早くコネクタを抜くとねじを外して交換していく。

元に戻ったところでパソコンを戻して電源を入れてみる。


ヒュイイン……、ピッ。


「うっそ!直ったじゃん!」


「シュライザルのスキルらしいですが、

リーフェから聞いたらほぼ独学だそうで……。」


「マジで!?」


「直りましたー。」


「綺麗にしていただきありがとうございます。」


「いえいえ。

天使のパソコンかー。

OSなんだろうなとか色々気になりますが、

……うっそ、ウィンドウズあがってるやん。」


「専用より汎用です。

でなければこのコンピュータは直らなかったでしょうし。」


「そこかー。

そこを疑うべきだったー。」


「さて、紙ベースでやっていたデータを移すところからですね。」


「そのファイル全部じゃないですよね?」


机に山のように置かれたファイルを横目に尋ねてみる。


「数年動いてませんでしたからねー……。

替えのコンピュータというわけにもゆかず。」


「ひぇぇ……、あ。」

現在進行形でいじってないファイルを別のパソコンで作業したらどうでしょう。」


「そんなことできるんですか?」


「作業が難しくなければ他の方にお願いができますね。」


「……ミカエル様、シュライザルにちょっといてもらいません?」


「そうですね……。

良ければシュライザル、コンサルティングしていただけませんか。」


「あ、よろこんでー。」


後で調べて分かったことだが、ミカエル様はNASまで置いていた。

マニアックだ……。

Copyright(C)2025-大餅 おしるこ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ