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第46会 21の世界より超付金落

今日も今日とて暗中訪問。

退屈させないでって言ってたし。


「あ、来たわ。」


「こんばんわ。

……おや? 何か綺麗な石が置いてある。」


「毎度のことだけどよく気付くわね……。」


「何これ、ケースに入ってるのはいいとして

何かもやもやが動いてる。」


「これは過時石かときいしって言ってね。

まぁ、魔力の化石みたいなものよ。」


「うへぇ、綺麗だねぇ。

妻が見たら喜びそうだ。」


「奥さん石好きなんだっけ。」


「ですです。」


「ちょっとこの石の力を見せようか。」


「お? どうやって?」


石に向かって手を翳すリーフェ。

すると石からカリカリと小さな音がする。


「まさかこの石。」


「あたり。」


ぐるん、と周囲が回転して外の風景に置き換わる。


「おっどろいた、錬時術だ。

いつぞやに来た未来じゃない。」


「あら、覚えてるのね。」


「西暦3223年の何もない土地だね。

向こうの歴では1000年だったけど。」


「過去にも飛ばせるけど、私がちょっと嫌ねぇ。」


「そんなに飛ぶんだ?」


「えぇ。」


「周囲に人がいないようだけど、時間は?」


「素晴らしい着眼点。

止まってるわよ。」


「なるほど。」


「じゃあ戻すわね。」


「はいな。」


ぐるん、と再び風景が回り書斎に戻る。


「……おや? 石の色が深緑から青に変わってる。」


「日本人は青も緑って言うんじゃなかったの?」


「これは露骨。」


「魔力を込められて活性化したのね。

ここまで純度が高い過時石は通称、過歴石かれきいしって言うのよ。」


「ほんとリーフェの世界って魔法のものが多いねぇ。」


「あなたの夢なんだけど?」


「それは言っちゃ嫌だなぁ。」


カツン。


「っ。物音。」


「あ、そんなに気を張らないでちょうだい。

おいで、紹介するわ。」


テーブルにボールペンが上がる。


「おや。」


「初めまして。

ボールペンウェイターのテディと申します。」


「面白い方ですね。」


「……モノ、とは言わないのね。」


「最高に失礼千万。」


「こういう身体である以上モノであることは仕方ないと思っておりますが……、

リーフェ様の仰るように、珍しいお方ですね。」


「あら、変わり者扱いなのかしら。」


「褒められてんのよ、あんぽんたん。」


「テディさんは普段は何されてるんですか?」


「リーフェ様のお手紙の宛名書きであったり、

手紙をしたためております。」


「めっちゃ重要な役やられてる。」


「思考リードで書いてもらってるの。

やること私多いから。」


「私の記憶の間を覗く暇があったら

テディさんの手を煩わせないでください。」


「いいじゃない、楽しいんだもの。」


「そこ、なぁなぁにしない。」


「もう付き合い長いんだからわかってるでしょ。」


「なんだかなぁ……。

あ、筆跡。

筆跡までは一緒にならないんじゃないの。」


「魔法を何だと思ってるの?」


「マジですかい……。」


「私の執事みたいなものだからねー。」


「シュライザル様は過去リーフェ様の執事をやられていたそうですね?」


「そうそう。」


「あんまりに来ないもんだからクビにしたのよ。」


「すみませんな……。」


「まぁ、最近はちょこちょこ顔出してくれるようにはなったけど。

ジンクスみたいなの生まれたからまた執事に起用すると来なくなりそう。」


「ありえる。」


「調子は? こっちに来てるってことは良くはないんでしょうけど。」


「ぼちぼちかなー、真面目にぼちぼち。」


「無難な回答したわね。」


「良くはないけど悪くもないね。」


「悪くもない?

あら、そんな状態でこっちに来れるのね。」


「そういやそうだね……?」


「あなた、年齢41だっけ。」


「41ですけど。」


「……うん? 本厄?」


「本厄……、ってかリーフェの口から厄なんて出ると思わなかったぞ。」


「体調が変わったのかもしれないわねー。

運命的に何か変化を感じることはあった?」


「……。」


「あるのね?」


「とあるゲームをしてるんだけど、

ガチャってやつで有り得ない当たり方をしている。」


「偶然ではなくて?」


「今年に入って始めたゲームなんだけど、

ちょっと周囲を見ても異常な当たり方してるかな……?

今までの自分なら、まぁこんなもんだよねーってあたりが

最近、死ぬんじゃないかってくらい幸運に恵まれている気がする。」


「ふーむ。」


考え込んだリーフェがテーブルに向かう。


「どうしたの?」


「私からあなたの運命を見ることはできないんだけど、

本厄という節目に起きた出来事だとしたら気になってね。」


「あやー、死ぬの?」


「そうじゃなくって。」


「うん?」


「私の国からは厄って概念なくてさ、ちょっと気になったの。

日本には結構古くからあるものらしいわね、えっとー……。」


本棚から一冊本を取ってパラパラめくるリーフェ。


「星の巡りもあるからねぇ。

一概に本厄だから悪いって言うのもなくてね。

ただ、運が良くなったっていうのも逆に珍しくてさ。

あなた運動始めたって言ってたでしょ。」


「健康のために。」


「お掃除してる?」


「部屋はマメって程ではないけど模様替えは好きね。

今年は2年目だからエアコンばらしてカビ清掃したよ。

トイレ掃除、台所掃除大好き。」


「ぶっちゃけ厄を気にしてる?」


「全くではないけど、運が悪くても気にしてないかな。

今まで通りこの程度で済んだんだろうなって思ってるし。

運が良かったら、ありがたいやーって思ってお礼を言いに神社に行く。」


「……運の巡りが良くなること全部してるわね。」


「そうなの!?」


「ちなみに、今年よく当たると言われた神社の運勢は?」


「低迷運であんまりよくないとは書いてあった。

気になる症状があったら病院へ。

家計が苦しくなるから見直しを。

全部やったけどそんなに運悪くないんだよ。

珍しく外れてて。」


「開運したのね。

運を切り拓いたのよあなた。」


「マジか!」


「今年始めたことをやめないことね。

地盤固めに入ったのよ。

良ければ来年も運がいいはずよ?」


「おー……、ありがたいなぁ……。

あれ? 前厄悪くはなかったんだけど、良くもなかったのは?」


「今年のための前段階だったんじゃない?

今まであなた不幸だったもんね。

よく頑張ったわよ。」


「あらー……。」


「……私だったらざまぁみろって思うんだけどね。」


「何を?」


「あなたを不幸にしてきた連中がいるでしょう?」


「私にも非が」


「なんですって!?」


「あぁいいやや。」


「とにかく!

あなたが幸せになることは最大の仕返し。

私は嬉しいわよ?」


「ありがとうねぇ。」


「そうそう、最近鉱脈探しに凝っててね。」


「また急ですな。」


「過歴石もそこで見つかってね。」


「あら。」


「そこの扉開けてすぐなんだけど。」


小脇に木の扉がついている。

開けるとクラスターむき出しの鉱石がいっぱい。


「わぁ! めっちゃ綺麗!」


「あなた喜んでくれるから楽しいわ……。」


「……おや、なんだこの金みたいなの。」


「何かあった?」


「ゴールドが見えます。」


「適当に掘っていいわよ。」


「どうやって? つるはし?」


「何でも。

本当に適当でいいのよ。」


つるはしを召喚し、カツカツ掘っていく。


「……掘れた、ちょっと重いな。」


「どうだった?」


紅茶を飲みながらリーフェが聞いてくる。


「こんなの掘れましたけど。」


「うぶっ! けほっけほっ!」


見せられたリーフェがむせる。


「どうしたの。」


「そ、それ21の世界の宝物じゃない!

どこにあったの!?」


「そ、そのへん?」


超付金落ちょうふきんらくって言うとんでもなく高価なものよ。」


「カンデララムート酒買える?」


「よく覚えてたわね。

あれが駄菓子になるくらいの値段。」


「いくらすんの、この塊。」


「……なんで超付金落って言うと思う?」


「さぁ?」


「億千万兆の付加価値がある、金脈だからよ。」


「……。」


「わかった?」


「ど、どうしよう。

宝くじに当たってしまった。」


「いやー、珍しいものだけどどこかにはあるからねぇ。

その辺に置いといてくれない?

21の世界の遺物ならミカエル様に一回お見せした方がいいかもだし。」


「その辺でいいんですかい……。」


「あなたが起きているときにでもいらっしゃったらお見せしておくわ。」


「はーい。

台座ないかな。」


「こちらにございます、シュライザル様。」


「テディさんどうもどうも。」


数キロはあろう塊を台座の上に置く。


「よし。」


そーっと光に照らされて超付金落が輝く。


「朝だー。」


「またいらしてください。

お待ちしております。」


「テディさん、ありがとー。」


「あなたがいると退屈しなくていいわー。

また早く来てね。」


「リーフェもありがとう。」


最近すっきり目が覚めるな。

Copyright(C)2025-大餅 おしるこ

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