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鉄腕ラリアット  作者: 鳩野高嗣
第十二章 チャンス
37/42

チャンス【Aパート】

この作品は『エンターブレインえんため大賞(ファミ通文庫部門)』の最終選考まで残ったものを20余年の時を経てリライトしたものです。

希望(のぞみ)ちゃんたらねぇ、真っ赤な顔して言うんだよ~。

 絶対、誰か好きな人いるって!」


 今日はどういう訳か床屋が忙しく、両親が揃って散髪に当たっていた。

 その為、直実(なをみ)は弟・直冬(なをふゆ)を連れて三峰(みつみね)の経営する居酒屋『こうちゃん』で夕食していた。

 三浦のグローブとサンドバックのエピソードや、その帰りの希望との会話なども聞き上手の三峰に話していた。


「へぇ~、粟田(あわた)道場の娘さんもそんな年頃になったんだねぇ~。

 ところでナココちゃんには好きな人、いねぇのかい?」


「わ、私ぃ? い、いない、いない!」


 直実は急に自分に話の矛先が向いたので慌てて答えた。


「はっはっは、でもナココちゃんの年頃が一番楽しいのかもしれないねぇ。」


「えっ?」


「誰が誰を好き、とかで盛り上がんだろ?

 こういう商売してるとね、誰の事が嫌いとかの話ばっかり耳にしなくちゃいけないんだよ。

 オトナになると嫌いな人が多くなっていけねぇよなぁ。」


「ふぅ~ん、そうなんだ‥‥。」


 なぜ大人になると変わるのか疑問を抱きつつ、直実は好物のつくねをおかずにご飯を食べた。


 ● ● ●


 翌日、直実が部活に出ると、グラウンドが妙にざわめき立っていた。


「どうしたんですか?」


 直実は小首を傾げて松浦にたずねた。


「ああ‥‥それが‥‥。」


 松浦は明らかに答えにくそうだ。


「誰かが『スポーツ一番!』に応募したらしいんだ。

 宮中に元リトルリーグ日本一のピッチャーと、すごい球を投げる女子がいるってさ。」


 岡田が松浦の代わりに答えた。


『スポーツ一番!』とは視聴率二十%近くを取る人気番組で、各種のスポーツで抜きに出た強者が各スポーツに合わせた超人的な競技にチャレンジするという内容だ。


「それ、知ってますよ! 何回か観た事、あります!」


 直実が興奮気味に言った。


「で、その番組のディレクターが今、『ピッチング・ダーツ』の件で三浦先生と交渉してるって訳っス。

 宮中には中学一(ちゅうがくいち)のスラッガーだっているってのに‥‥。」


 星野が腕組みをして何か不満そうに状況を説明した。


「でも、一体、誰が応募したんでしょうね?」


 星野の隣りにいる希望がたずねた。

 その直後、


「ナココ~!」


 グラウンドに丸い声を響かせながら、明美が直実の所に向かって走って来る。


「アケ、どうしたの?」


 慌てて走って来た明美に直実がたずねた。


「‥‥あのね、テレビのハガキね、実はぁ‥‥私が出したの‥‥。」


 明美は首をすくめて答えた。


「ええ―――――っ!?」


 一同は一瞬の間を開けた後、一斉に叫んだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 明美の行動力が面白いですね。
[良い点] 本当に三峰のセリフは奥が深いです。 引用して使いたいですね。
[良い点] 「誰が誰を好き、とかで盛り上がんだろ?  こういう商売してるとね、誰の事が嫌いとかの話ばっかり耳にしなくちゃいけないんだよ。  オトナになると嫌いな人が多くなっていけねぇよなぁ。」 奥の深…
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