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鉄腕ラリアット  作者: 鳩野高嗣
第十一章 原石たちの輝き
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原石たちの輝き【Gパート】

 その後、投手(ピッチャー)を控えの伊藤、捕手(キャッチャー)一塁手(ファースト)の金森と入れ替えた宮町中は八幡の逆転を許し、二対三でサヨナラ負けとなってしまった。


「原島先輩、試合を受けて頂き、どうもありがとうございました。」


 三浦は帽子を取り原島に一礼した。


「三浦‥‥お互い、いい原石が集まったものだな。」


 原島は三浦の右肩を叩いて言った。


「はい。次ぶつかる時には磨いた形でお目に掛けますよ。」


「それはうちも同じだ。」


 両監督は固い握手を交わした。



「次、当たる時にはルールを覚えとけよ、ジャーマン女。」


 藤原が帰りの支度をしている直実(なをみ)に話し掛けてきた。


「ルール覚えて、次は絶対、勝ちますから!」


「ははっ、その意気だ。楽しみにしてるぜ。」


「あ、それから、あの四番打者さんに伝えといてくれませんか?」


「ん? うちの部長に?」


「次に当たる時までには受け身が取れるようになってて下さい、ってね。」


 直実の答えに、しばらく呆然としていた藤原であったが、時間が経つにつれおかしさが込み上げてきて大笑いを始めた。

 それは直実が一礼し、八幡中を後にしても尚、続いた。


「藤原、どうした?」


 いぶかしげに武蔵がたずねた。


「ベンケイ、今まで俺は軟式なんて高校でやる硬式の為のつなぎとしか思ってなかった。

 正直言って、辛さは感じても楽しさは感じなかった。

 でもな、今日の試合、すっげぇ楽しかったぜ。

 こんなの、ガキの頃にやった草野球以来だ。」


「無茶苦茶な奴らだったからな、俺も楽しかったぜ。

 ――だが、先生の顔見てみろよ。」


 武蔵が眉間にしわを寄せ、アゴをポリポリと掻いている原島を指さして言った。


「うげっ、あのリアクションをした後は決まって練習がキツくなるんだよな‥‥。」


 発した言葉とは裏腹に藤原の表情はどこか楽しそうであった。


 ● ● ●


「手、大丈夫なの? 見せて。」


 八幡中前から出るバスの中で隣りに座っている羽野(はの)に直実が話し掛けた。


「少し()れてるけど大丈夫だよ、痛みも引いてきたし。

 まあ、一応、病院には行くけどね。」


 羽野はそう言って左手を見せた。


「あはは‥‥やだ、ミット外してよ、もう。」


「外してるって‥‥。」


「私の三倍くらいありそう。」


 直実はそう言うと羽野の左手に自分の右手を合わせた。


「鷹ノ目さんの手が小さすぎるんだよ。」


 何気なくそう言った後で羽野の脳に自分が今『女子と手を触れている』という情報が流れると、妙に意識してしまい、心臓が高鳴った。


「ああ、そうそう、炎のストッパーの事なんだけどね‥‥。」


 羽野は努めて自然に左手を引くと、試合中に約束した説明を始めた。

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― 新着の感想 ―
面白いねぇ。 青春していていいねぇ。
[良い点] 照れる羽野がいいですね。 羽野と直実の会話はほのぼのさせてくれます。
[良い点] 試合はまさかの展開で負けてしまいましたが、ラストの二人のやり取りがかわいすぎます。
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