落日の決闘【Bパート】
翌日、一年生は各部活の入部を促す部活発表会の為に体育館に集められていた。
毎年の事ながら今年も持ち時間をオーバーする部が多く、終了予定の時間を大幅に超えていた。
「最後は女子卓球部です。」
生徒会役員の女生徒のアナウンスが響くと、ステージの上に試合用の黒いユニフォームを着た部長の長谷川を筆頭に五名の部員が現れた。
デモンストレーションでもするつもりなのだろう、卓球台が首尾良く用意される。
長谷川は一礼すると設置されているマイクに向かって話し始めた。
「私たち宮中女子卓球部は昨年県大会の団体戦で‥‥。」
ピンポンパンポーン!
話の腰を折る形で校内放送が入った。
「一年生の皆さん、これから野球部のグラウンドで世紀の対決が行われます!」
直実の声だった。その煽り文句に体育館に集められていた一年生がざわめき始める。
(また、あの娘!)
長谷川は額に青筋を浮き上がらせ、ぷるぷると怒りに震えて始めた。
「野球部期待の女子ピッチャー、鷹ノ目直実の鉄腕ラリアットが勝つか、元リトルリーグ日本一の四番、大ヒール太刀川が負けるか、今世紀最大の野球対決!
良いお席はお早めに!」
教師や生徒会役員の生徒は必死に静めようとするが、尚も続ける直実の放送は火に油を注ぐかのようにざわめきを一層大きくした。
「おーい、太刀川ぁっ! 聞いてるんでしょう?
逃げんじゃ‥‥。」
「コラっ! 誰だ、勝手に入り込んだ奴はっ!?」
直実がそこまで挑発した時、放送室の扉をドンドン叩きながら怒鳴る男性教師のダミ声がマイクに飛び込んできた。
放送室の扉は中から鍵を掛けてあったが、そのダミ声教師は外から合鍵で扉を開けようとしていた。
「やばぁっ!」
直実は慌てて窓を開けた。
放送室は二階にあったが迷っている時間はない。
(空中殺法に毛が生えたぐらいだよね‥‥。)
直実はそう自分に言い聞かせると、ひらりと飛び降りた。
無事、着地すると一目散にソフトボール部の部室へと駆け込んだ。
次の瞬間、ダミ声の男性教師が勢い良く放送室の扉を開けた。
「むっ、くそぅ、逃げられたかっ!」
春風が入って来る窓を睨みながらダミ声の男性教師は舌打ちをした。
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