表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マ魔王様はお忙しい!  作者: 依静月恭介
Mermaid in empty blue
39/39

99 Mermaid in mixed blue


 その日、私は鳥魔族ハルピュイアの男から指示された場所に辿り着いた。

 エインカイルの海からずっと東に行った、少し寒いけれど穏やかな流れの海域。


 鳥魔族の男──‬ゲイルには数分前に会って「あとはキミと彼等に全て任せる」と言われ陸から離れるよう更に指示を受けた。


「あの街程じゃないけれど、綺麗な海ね」


 そう言って自分を励ますけれど、暖かな海で育った私には少し寒い。


『アア、貴女デスネ! ゲイル様ガ仰ッテイタ綺麗ナ三日月の海精女族クレセント・マーメイドトハ!』

「──‬海魔族ビリッシュ!」


 魚の顔をした、全身鱗だらけで二足歩行の魔族。

 あまりにも気さくに声をかけられたので、少し反応が遅れてしまう。


(そう……。そうよね。私は彼を石にしたんだもの。相応の罰があって然るべきだわ)


 騙されたと思ったけれど、先に害を与えたのは私。これはきっと仕方のない事なのだわ。


「おいサルム、先に行き過ぎるなと……と、もういらしたのですね。私達の海域へようこそ。私は海精男族マーマンのオーバル」

「え、どうして海魔族と海精男族が一緒に?」


 私はきっと、ぽかんと口も目も開いてしまっている。

 だって、背びれと水掻き以外は人間と大差のない容姿をした海精男族が、敵なはずの海魔族と軽口を叩いているんだもの。


「はっは、驚くのも無理はありませんね。私達も最近まで海域を制するべく歪み合っていたものですから」

『ソノ争イニ人間ノ商船ヲ巻キ込ンデシマイマシテ。デスガソノ船ニハ、拐ワレタ海精女族マーメイドガイタノデス』

「え、もしかして、それって……」


 昂る鼓動と、早まる尾ひれの動き。

 まさか、また会えるの?

 もう二度と会えないと思っていたのに。


「そんな傷ついた彼女達を見ていると、わざわざ諍いを起こして傷つく自分達が馬鹿らしくなったのです。そこに魔王が現れて、皆で仲良く過ごす様叱られたのですよ。お恥ずかしい話です」

「そう……そうなのね。あの人は、本当に共存を目指しているのね」


 優しくて、強くて、どこかぶっ飛んだ発想を持つ魔王。

 彼女の言った野望も、世迷言ではないのかも知れない。


 そう考えていると、海の彼方から声が聞こえてきた。


「本当にいるわ。三日月の人魚!」

「無事だったのね、アスル!」


 涙が溢れ、海になる。


「ありがとう、良い場所ね」


 魔族がくれた、新しい私の居場所。


「お気に召しましたか?」

「ええ。イケメンもいるし」

『ハハ、コレデモ海魔族デハ美男デ通ッテイマスガ、面ト向カッテ言ワレルト照レマスネ!!』


 イケメンな海魔族の彼を尻目に、私は会いたかった人達や初めて会う子達に手を振りながら、私は込み上げてくる笑みを堪えず顔に出す。




「何より──‬──‬トモダチがいるわ」




***



 ある港町に、こんな噂話がある。


 南東の海域を渡っていると、それはそれは美しい女声が聞こえてくるそうだ。


 ある時は単独の、またある時は複数の笑う様な声に惹かれて船を寄せると、人影に出会える事がある。


 その人影に向かって手を振ると、人影は魚の様な脚で水を跳ねさせ、優雅に歌い出すという。


 ひとたび聞けば骨でも抜けたかの様に魅了されるであろう歌声を耳にした船乗り達は、口を揃えてこう言う。




『あの歌声は美し過ぎる。まるで石にでもなったみたいに、聞き惚れちまったよ』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ