表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/205

カウントダウンは、始まっていた


 動物になってみたい


 そんな、子供の夢のような魔法は、たしかに存在する。 

 意識を移す、情報系の魔法の一種である。

 動物を操るので、召喚獣系統だとも言われる。そのような分類わけは、用途や、術の性質によっていくらでも分類できて、混乱するのが常である。


 また、魔法の成否は、個人の資質に左右される。

 力自慢だが、細やかな作業が苦手な人物に、針の穴に糸を通すような作業ばかりを続けさせれば、どうなるか。


 ぶちきれる。


 手先は器用だが、細身も病的と言う人物に重労働をさせれば、どうなるか。


 ぶっ倒れる。


 逆であれば、問題ないだろう。そうした色々のおかげで、魔法は万能に見えて、全く万能ではないのだ。この認識は、魔法使いでなくとも、知っている。


 魔法は、使えないと。

 

 そんな魔法使いたちの頂点のお一人は、シワシワの目を細めて、にっこりと笑っていた。


「おまえら、そろいもそろって、面白いことになったなぁ~………」

 

 森の丸太小屋を前に、長いローブを引きずるミイラ様は、楽しそうだった。

 今のお弟子さんたちが、アニマル軍団という、森の丸太小屋の住人になっていたのだ。予想外過ぎて、とても楽しそうだ。


 ミイラ様の前には、アニマル軍団が全員、ひれ伏していた。

 駄犬ホーネックと、クマさんのオットルお兄さんの耳は、ぺたんと。

 ドラゴンの尻尾も、ぺたんと、ひれ伏していた。

 この国をはじめ、人にとっては神々と言う扱いのドラゴンも、おてんば娘には違いない。

 老婆と言う年齢を数倍生きたバケモノ………偉大なる魔法使いにとっては、教え子の一人である。

 大変手間がかかるため、いやでも共にいる時間が長くなる。手間がかかっているために、少しの成長でも、まぶしく思える。

 失敗をして、成長するというが……


「まぁ、今回の尻拭いは、自分達でやるしかない………まぁ、いい薬だなぁ~」


 怒っているのか、あきれているのか、微妙な時間であっても、油断は出来ない。気付けば、地面から首だけを出した、反省タイムが待っている。


 クモの大群が、首の周りでマイム、マイムを踊る時間が始まるのか、ワサワサと、カサカサと、黒光りするヤツらの、『G』による、宴会の特等席になるのか。

 もう、いい子になりますから、許してくださいと言いたくなる時間だ。


 ただ………すぐに、忘れるらしい。


「安全対策の結界は、ちゃんと発動しているしなぁ………まぁ、成長してるとは、思うんだわ………」


 成長しないのは、後先を考えない、好奇心だけだ。

 魔法技術としては、それなりの成長がある。そのため、実験を強行しようと、新たな術を自慢しあおうという、無謀を行うわけだ。


 素直に、師匠の言葉通りに修行をする。そんないい子ちゃんばかりでは、寂しいものだ。たまにこのような悪ガキ軍団を育てるのだが………

 アニマル軍団となっていた。


「ところでなぁ、さっきも言うたが、あんまり動物の姿で魔法を使うと、ヤバイな。その状態で、どれだけ魔力を使ったか知らんが………最後には、衰弱死………かなぁ~」


 顔を上げたクマさんは、真っ青だ。

 必ず組合に顔を出す必要はなく、目減りしていく財布の重さを悲しみつつ、日々を送っていた。まだ、数日と言うことも、理由だ。

 ただ、命のタイムリミットまで、数日かもしれないと思うと、真っ青だった。


「あぁ、しばらくは、何とかなろうな。ホーネックの少ない魔力でも、犬っコロに言葉を使わせる程度じゃ、早々、死なんわ」


 ただし、いつまでもこの状態では、カウントダウンが止まらない。止める方法を、唯一知るのはレーゲルお姉さんだ。

 だがそのお姉さんの答えは、すでに聞いている。


「自分で、戻ろうとする………戻らなきゃって感じることで戻る………って、ことだから」


 気まずそうに、アニマルモードになった仲間を見るレーゲルお姉さん。個人の意思次第という、なんら、役に立たないものなのだ。

 そんな助言で戻れるなら、戻っているのだ。


 動物とのつながりが強くなりすぎると、動物であることが自然だと感じると、人であったことを忘れてしまう。

 ネズリーはおそらく、何か小さな動物に意識を移し、身軽になった楽しさから方々を駆け回り………そのまま、人としての色々を、忘れたのだろう。


 むしろ、自由を選んだ。

 好奇心が旺盛おうせいな学生さんとして、ありえる可能性だ。


 ミイラ様は、確認をとる。


「魔方陣でくくっていた動物の大きさは、まぁ、小さかろうと………そうだな、レーゲル」


 うなずく、お姉さん。

 ついでに、指で小さな円を描く。小鳥か、ねずみ程度しか入れることの出来ない魔方陣である。

 最初は、安全を期して、小さなことから、コツコツと。

 そのつもりだったのかもしれないし、手ごろな実験材料と言う理由もあったかもしれない。

 消費される魔力量は、操る獣のサイズに左右される。


 ミイラ様は、どこかを見つめて、つぶやく。


「まぁ、手に乗る、ねずみ程度のサイズなら、一ヶ月や、二ヶ月は大丈夫だ。魔法で物をぽんぽん浮かせたり、調子に乗って、強い力を使たり、せん限りはなぁ………」


 まずいだろうなと、全員が感じた。

 調子に乗りやすいおバカさん筆頭だ。やらかす人物として、まず思いつく身近な人物と言えば、誰か。


 ネズリーである。


 自分たちを棚に上げているが、自分たち以外でやらかすのは、ヤツだけなのだ。

 強い力に目覚めて、試さずにいられるだろうか、眠ったままの今の状況が教えている。


「ネズリーが、一番最初に眠ったままになってるし………ヤバイわね」

「うん、ネズリー………ヤバイ」

「くまぁ~………」

「危険だと思うワン」


 みな、意見が一致していた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ