表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
184/205

出た、マントの2人組


 ねずみは、驚きに声を上げた。


「ちゅっ、ちゅぅうううううっ?」


 カーネナイのお屋敷からの、帰り道のことだった。

 今度こそ、ツインテールちゃんの追跡を振り切ろう。そして、本格的な調査を始めようと、小さく計画を立てていた。

 ツインテールちゃんを、守るためである。怪しいマントの二人組みと再会することを、避けるためであった。


 怪しいマントの二人組みが、目の前だった。


「おぉ~………昨日ぶりでございます、ドラゴンのお使い様。そして偉大なるねずみ様と、しゃべる犬さま」

「すげぇ~、偶然って、あるんだな~」


 マント姿の二人組みが、土下座していた。

 ツインテールちゃんと、駄犬とねずみのセットであったのが、運命を決めた。昨日の今日というタイミングであれば、即座に見分けられるのだろう。

 道で見かければ、追いかけてくる組み合わせだったのだ。


 あなたは、昨日の――ということで、土下座されていた。

 お待ちください――と言う声に振り向いたのが、今の状況である。


 ツインテールちゃんは、きょとんとしていた。


「だれだっけ?」


 無邪気なお子様である。

 そして、やむをえないことである。ねずみが、二人からツインテールちゃんを隠すために、魔法の輝きで守っていたのだ。

 ツインテールちゃんの角度からは、マントの二人組みの顔は見えなかったらしい。まぁ、一度見た程度で人の顔を覚えるなど、難しいかもしれない。


 代わりに、ポニーテールちゃんが反応した。


「ねぇ、この二人、昨日出会ったって話の?」

「マントの二人組みですし………」


 オーゼルお嬢様も、それしかないと首をかしげていた。

 お姉さんと、そっくりなしぐさである。内に秘めた凶暴さもまた、姉とそっくりなアックス使いである。

 今は、魔法少女である。魔法の力で暴れないように、ねずみは本気で願っていた。お願い、暴れないで下さい、おとなしくしていて下さい――と、しばし見つめて………


 お嬢様たちは、ツインテールちゃんを見つめていた。


「ふふふ、抜け駆けするからですわよ」

「ちょ、オーゼルさん、それ、私のセリフっ」

「えぇ~?」

「わ、あわわわわ、ワン」

「………ちゅぅ、ちゅううぅ~」


 下水へと抜け駆けをした。

 そのことに、多少なりとも先を越された、ズルイというお怒りを抱いていたお嬢様たちは、ツインテールちゃんを囲むように、見つめていた。


 ねずみは困惑し、駄犬ホーネックはおろおろとしていた。


 幸い、人通りが少ない、屋敷が並ぶ町並みである。今はお子様探偵団と、謎のマントの2人組だけであった。

 しかし、人口密度の低い場所でもあるなら、偶然出会ったのは、なぜだろう。


 困惑の空気を打ち破ったのは、新たなる少女だった。


「ちょっと、いきなり走って――あら、その子たちは?」


 大きなリボンが可愛らしい、元気一杯のお嬢様が、現れた。

 走ってきたのに、疲れた様子は見せない。おそらく、普段からよく走っているのだろう、活発な印象を受ける。オーゼルお嬢様たちより、少しお姉さんの12~13歳ほどの女の子の、登場だ。

 そして、怪しいマントの二人組みの、仲間のようだ。


 マントの二人組みは、振り向いた。


「あぁ、お嬢様。申し訳ありません――」

「すいやせん」


 いや、あるじと言うべきだ、マントの二人組みは、腰を低くした。

 いつも腰を低くして、ぎっくり腰にならないか、ねずみは心配になった。そして、コソコソと、言い合っていた。


「(コソコソ――)おまえは、待ってろって言っただろっ」

「(コソコソ――)いや、いきなり走り出すからよぉ~」

「(コソコソ――)バカヤロ、お嬢様になにかあったらどうすんだよ、鬼執事が――」

「(コソコソ――)だってよぉ~………」


 ナイショ話だった。

 ねずみ達にも、しっかりと聞こえる、ナイショ話だった。

 もちろん、新たなるお嬢様にも聞こえている。イライラとしていても、すこし待ってあげるあたり、部下思い?のお嬢様なのだ。


 短い時間であるのは、仕方ないのだ。


「いいから、ちゃんと私を紹介しなさいっ!」


 両手をぶんぶんと回して、お怒りだった。


 ねずみたちを置いて、なにやらもめ始めた。

 このまま、逃げ出してもよいのではないかと、ねずみは思った。しかし、すでに顔をあわせている、ねずみは、鳴き声で逃げ出そうと声をかけようか迷っていたが………


 少し、遅かったようだ。


「あなたたちが、ドラゴンの使い?」


 迷う余裕は、すぐに消えた。


 ずかずかと、大きなリボンがやってきた。

 遠慮をしないのは、こちらが子供ばかりと言うことか、年頃が近いため、お姉さんぶっている気配もある。

 保護者があの2人だ、ワガママお嬢様を止めるものは、だれもいまい。


 大きなリボンのお嬢様は、探るように、ねずみ達を見た。


「ねずみさんの魔法使いに、しゃべる犬さんに………ドラゴンの使いの女の子はツインテールって言ってたけど――」


 ねずみは、ドキドキだ。

 平穏な日々が、音をたてて崩れる錯覚を覚える、ねずみ生活のピンチである。

 好奇心の塊は、お子様探偵団だけではなかったのだ。活発な印象の、新たなる少女が、こちらを見ていた。


 仁王立ちで、腰に手を当てていた。


「………なんだ、子供じゃない。だったら、私がドラゴンさんとお友達になっても問題ないわねっ」


 リボンちゃんは、ワガママなお嬢様のようだ。

 気の強そうな笑みで、わたしもやる――宣言していた。全て、自分の思うがままになると言う、自信に満ちた笑みが、可愛らしい。

 ねずみには覚えのある、とってもいやな予感の笑みである。


「ちゅぅ~、ちゅうう、ちゅう~」

「わわん、わん、………だ、ワン」


 駄犬ホーネックは、未練がましく犬の鳴きまねである。

 しかし、二匹の思い描く女の子は、決まって赤毛のロングヘアーのフレーデルちゃんである。


 にっこり笑顔で、やらかすのだ。


 暴走娘は、どこにでもいるらしい。お子様探偵団の暴走娘さんが、いまは注目のツインテールちゃんである。


 ツインテールちゃんが、キョロキョロとしていた。


「ねぇ、昨日の2人、近くにいるよ?」


 何のことだと、ねずみ達はツインテールちゃんを見る。


 マントの2人組も、互いを指差して、そして、お嬢様を加えて3人で、首をかしげる。昨日の2人とは、自分達のはずだと思っているのだ。

 なぜ、今さら気にするのだろう。


 その疑問が、答えてくれた。


「さすが、ドラゴン様に選ばれるだけはある………はじめまして、私こそは――」


 ばさっ――と、マントをひるがえして、なにかが現れた。

 15歳当たりの、少年だった。

 ねずみのかつての姿、ネズリー少年と、ちょっと重なった。われこそが、偉大なる魔法使いだと言う幻想が、真実と思っているのだ。


 自分にとっては――


 いや、2人組みなのだ。


「いやいや、さすがです、お坊ちゃま――」


 腰の低いマントも、新たに現れた。

 ねずみ達に覚えのある、魔法使いのローブである。


 ねずみは、鳴いた。


「ちゅぅうううううっ」


 両手を空に掲げて、いい加減にしやがれ――と言う、怒りの鳴き声であった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ