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お子様探偵団の、秘密会議


 クマさんのぬいぐるみが、ふわふわと浮かんでいる。


 紳士服を、紳士に着こなしたクマさんであった。カーネナイの若き主、フレッド様が、お嬢様たちのために用意したぬいぐるみさんである。

 受け取る前に、ツインテールちゃんは浮かび上がらせていた。


「ほらほら、クマさん」


 自らも、浮かんでいた。

 オレンジのツインテールもふわふわと、いすの上に立ち上がったほどの高さに浮かび上がり、御伽噺の魔法少女を気取っていた。

 子供の夢の一つだろう、お人形さんと、ダンスをするのだ。


 ダンスの相手は、クマさんだった。

 そのまま、紳士らしいポーズをして、飾ってもらうのか、他のぬいぐるみさんと、社交界としゃれ込むのか、ぬいぐるみの運命は、だれも知らない。


「いいから、座りなさいッ」


 ポニーテールちゃんには、ご機嫌斜めであった。


 ぬいぐるみさん程度では、ヘイデリッヒちゃんの追及から逃れることは、不可能のようだ。ツインテールちゃんは、イスの上に着地する。


「いつから、魔法を使えるようになったんですのっ」


 クマさんのぬいぐるみは、おひざの上で抱き合うように座った。魔力が限界なのか、精神的なものか、ちょっと、分が悪そうだ。


「えっと………最近?」


 なにも考えていないお顔で、自信なく告げた。

 そして、本当に自信がないのだろう、魔法使いには分かるのだが、魔法を使えるようになったのは、気がつけば――と言うことが、多いのだ。


 狙った魔法を発動できた、修行の成果が、現れた。


 そうした成果が生まれる前の、最初の一歩である。魔法の力を手にしている、そんな自覚が芽生えるのは、実は、あやふやだ。

 言われてみて、実は半年前、一年前、幼い頃………など、人によって様々である。


「ちゅぅ~、ちゅうう、ちゅう~う」

「懐かしいワン、いつの間にか本のページがめくられたんだワン」


 ねずみと駄犬は、懐かしがっていた。

 きっかけなど、気がつけば――である。それ以前に、何らかのきっかけがある。動かしていないのに、本が落ちた、ページが開いたなど、色々だ。


 ツインテールちゃんは、輝きだした。


「魔法の輝きだね………夜中に下水を歩いたら、目立ちそうかな?」

「ちゅちゅ~、ちゅう、ちゅうう」

「そうですわ、噂とも違いますし――それよりも、魔法ですわっ」


 魔法を使えるなど、誰も知らなかった。


 そう、驚かされたのだ。


 みんなが驚く話題を提供して、ほめられたい。そんな気持ちだったヘイデリッヒちゃんは、またも見せ場を奪われたという気持ちで、いっぱいのようだ。


 ここへ集まった目的は違うのだが………


「こっそり調査だなんて………はっきりさせたいものですわね」


 オーゼルお嬢様は、冷静のようだ。

 都市伝説を探す、ただし、危ないことをしない。それが、昨日のカーネナイのお化け屋敷で取り決められた、約束である。


 大人の側として、メイドさんを中心とした話し合いの結果であるが………


 メイドさんは、クスクスと笑っていた。


「そうだね。メイドさんとしては、下水の調査に向かった話をしたいかな~?」


 素直に守ってくれるなら、大人は苦労しないのだ。大人を困らせることこそ、子供の役割とばかりに、ツインテールちゃんは暴走したのだ。


 ねずみは、空を見上げた。


「ちゅぅ~、ちゅううう、ちゅぅ~」


 懐かしそうに、目を細めていた。

 思い出すのは、オレンジのツインテールちゃんと同じく、とっても元気な暴走娘である、フレーデルちゃんだ。


「まるで、フレーデルみたいだワン」


 駄犬も、目を細めていた


 ねずみたちには、赤毛のロングヘアーの女の子が、悩みの種だった。

 ばかげた魔力の持ち主で、常に空中に浮遊し、そして、感情を表すように、炎を背負っていたのだ。

 仲間内のリーダーは、よくこぼしていた。


 嫉妬しちゃうわ、才能の、無駄遣いを――


 まったく、嫉妬を感じさせない物言いであった。

 魔法的な炎であり、燃えやすい衣服やカーペットは安全で、それでも、炎を操ることも出来る、暴走に注意な女の子だった。

 目の前のツインテールちゃんは、そうなるに違いない。


 さっそく、大人の頭痛の種となっているあたり、素質は十分だ。フレーデルの正体はドラゴンと言うオチが待っていたが、まさか、オチまで似ていることはないだろう。


 好奇心が抑えられない、子犬のような女の子である。その、ぴょんぴょん飛び跳ねるしぐさから、本当に耳や尻尾があるのではないかと、見つめてしまう。


 犬耳さんが、現れた。


「………同属?」


 どうやら、同じ意見のようだ。

 ティーセットを持っている、ちょうど、皆さんも休憩時間のようだ。正式なお客様の前では考えられない、お友達感覚である。


 尻尾は、メイドさんのロングスカートで目立たないが、犬耳は、さすがに突き出ている。顔を覆う布があればごまかせたが、メイドさんのカチューシャでは、ムリなのだ。


 遊びとして、犬耳のカチューシャは存在するが、そのような人物と思われる可能性と、ホンモノの犬耳と思われる可能性の、どちらだろうか。


「あの子も、犬さんの国の出身かしら?」

「耳がない………でも、同意」

「子供は元気でいいなぁ~………ちきしょう、年を感じるぜ」

「田舎の甥っ子達、元気かなぁ~」


 背後では、巨漢のメイドさんと、ぶかぶかな服のメイドさんに、壁からも、ゴキ○リのように、身軽な青年たちも現れた。


 カーネナイの使用人、全員集合である。


「ちゅぅ~、ちゅううう、ちゅう、ちゅう」


 ねずみは、ふわふわとテーブルの上へと降り立った。

 頭をさすりながら、軽くお辞儀をしている。なんか、すいませんね~――という言葉が聞こえてきそうだ。


 もちろん、鳴き声だけだ。


 しかし、通じる人には、通じるらしい。犬耳のメイドさんは、小さなお皿を差し出しながら、メイドさんを演じた。


「いえ、ご遠慮なく――サイフは、領主だから」


 演じきるには、遠い道のりのようだ。

 先生であろうか、ロングヘアーのメイドさんが、微笑んだ。


「まぁ、客が来ないと意味ないし~………練習、みたいな?」


 あっけらかんとして、お気楽そうだ。

 ねずみを見つめる瞳は、お気楽ではない。


「とにかく、フレデリカちゃん?」


 お話の相手は、ツインテールちゃんに変更されたようだ。

 イスの上で、犬すわりをしていたツインテールちゃんの前で、メイドさんは腰に手を当てていた。


 子供向けの、怒っていますアピールである。


 気が弱い子供なら、すでに泣き出すシーンであろうか。あいにくと、ツインテールちゃんには無縁のことだ、愛想笑いがあるだけ、反省しているということかもしれない。


 ねずみと駄犬は、見守った。

 そう、自分達には、何も言う資格がないのだという、自覚があった。昨日の失態だけではない、若気の至りで暴走の挙句、アニマル軍団となっているのだ。


 いや、だからこそ、新たなる魔法少女ちゃんには、無茶をしないように言い含めたいのだが………


 クッキーが、浮かび上がった。


「「「「「?」」」」」


 お茶菓子の一つが、浮かび上がったのだ。ツインテールちゃんの仕業ではないのか、皆さんの視線が集中だ。

 お叱りの最中と言うのを忘れ、つい、手が伸びてしまったのか。


 犬すわりのまま、ツインテールを左右にふった。


「………私じゃ、ないよ?」


 さて、本当だろうか。

 いたずらっ子代表となりつつある、ツインテールちゃんの言葉は、とても軽い。お約束をしても、バレなければ――と、抜け駆けは、昨日のことだ。


 ねずみは、クッキーの行方を追っていた。

 皆さんも、ツインテールちゃんとクッキーの行方を見守っていた。お菓子を前にしたいたずらっ子が、ちょっと一枚――と、手にする瞬間を、見守っていた。


 ツインテールちゃんの前ではない、ポニーテールちゃんでもなく、残るお子様の前に、到着した。


「あら、どうかしまして?」


 オーゼルお嬢様は、微笑んでいた。




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