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再会、丸太小屋メンバーと、ねずみ 2


 小川がさらさらと、真夏の輝きを反射する。

 まぶしく、そして涼しいせせらぎは、巨大なワニさんが泳げるほど、それなりの広さである。

 丸太舟に乗って、ねずみが現れた。


 雛鳥ひなどりドラゴンちゃんに吹っ飛ばされ、そして、戻ってきたのだ。


「ちゅうう~、ちゅう、ちゅ~」


 青空へのお散歩から、お早いご帰還である。ちょうど、ねずみサイズの丸太ボートが浮かんでいたため、便乗させてもらったのだ。

 夏も本番は、まだまだ続く、水浴びには最適だ。


 ドラゴンちゃんも、水浴びだ。


「つめたぁ~いっ」


 5歳児が、足と尻尾をバタバタとさせて、はしゃいでいた。

 ねずみを吹っ飛ばしていたことなど、すっかり忘れて、無邪気なものだ。ドラゴンの姿で、とっさの羽ばたきだけで、災害だった。


 今は、幼子の姿に戻っていた。ドラゴンモードのままでは迷惑になると、お子様モードへと変身させられたのだろう。

 レーゲルお姉さんが、お世話をしていた。


「ほらほら、暴れないの――」


 おひざの上に載せられるサイズであるため、ドラゴンモードよりお世話がしやすいかもしれない。何かあれば、抱きしめてしまえばいいのだ。

 仲間たちのリーダーであるレーゲルお姉さんは、世話好きなのだ。本人が自覚しているか不明だが、かわいいものほど、かまうのだ。


 幼児モードのフレーデルちゃんは、捕まえられていた。


 そんな姿を横目に、ねずみは上陸した。


「ちゅぅ~………」


 水しぶきが、岸辺に飛び散る。

 お子様フレーデルが巻き起こすしぶきが巨大すぎて、誰の目にも見えないだろう。仲間に、誰ひとり気づいてもらえないねずみは、すこし寂しそうだ。

 慰めるためか、後ろで宝石がピカピカと光っていた。


 お子様は、元気だった。


「ねぇ~、お姉ちゃん。なんでこの姿なのぉ~?」


 赤毛の幼子ちゃんが、ご不満だった。

 そういえばと、ねずみも思った。フレーデルと仲間として過ごしていた頃は、小柄な14歳というか、12際の女の子の姿であったのだ。

 12歳のまま変化がなかったのも、12歳の子供に変身していたのだから、当然だ。精神に似合った姿が幼児なのは、納得だ。


 赤毛のロングヘアーのお姉さんは、笑いながら川辺でしゃがんだ


「いやぁ、似合ってるし?」


 尻尾もおそろいであれば、姉妹とすぐに分かる。フレーデルちゃんの尻尾だけは、チャームポイントとして残されている。

 もちろん、幼子サイズだ。


「くまぁ、くま、くまぁ~」

「ワンワン、ねずみが来たんだワン」


 クマさんと駄犬も、川辺でお座りをしていた。

 ねずみを放置したままだ。そういうツッコミを入れているようだ。しかし、心配している様子はない、いい性格をしている。あるいは、ねずみなら問題ないという、信頼のためかもしれない。


 そこへ、ねずみがトコトコと、近づいてきた。草の中に姿が隠れてしまうが、背中に浮かぶ宝石が、目印だ。


 ねずみは、川辺にて両手を広げていた。


「ちゅちゅう、ちゅうう~、ちゅう、ちゅう~」


 草陰に隠れそうな小さなねずみが、なにかを訴えていた。

 残念ながら、ねずみの言葉を理解できる人物は、ドラゴンを含めて、この川辺には存在しない。

 背中の宝石さんもピカピカと光って、なにかを訴えているようにも見える。


 宝石さんの訴えも、もちろんわからない。


「ねずみさん、何言ってるのかわかんないよ~」

「宝石も光ってるけどねぇ~………」

「くま、くまぁ~、くまぁ」

「まぁ、オットルも鳴いているだけだワン」


 魔法のローブを肩にかけたクマさんが、腕を組んでいる。

 首には、執事さんを真似たのか蝶ネクタイをしている。ただのクマではないと、しぐさで、見た目で分かるクマさんである。


 丸太小屋メンバーとは、ある程度コミュニケーションが取れているようだ。駄犬ホーネックの言葉通りである。

 なら、ねずみの言葉も通じそうなのだが………


「ちゅちゅ、ちゅ~、ちゅ~、ちゅううう、ちゅぅ~っ」


 手をバタバタさせて、訴えていた。


 気持ちが高ぶってきたのか、魔法で空中に浮かび上がった。岸辺に座るレーゲルお姉さんと同じ目線で、改めて訴え始めた。


「ちゅ~、ちゅううう、ちゅうっ、ちゅ~っ」


 胸に手を置いたり、その手を上に掲げたりと、なにかを訴えている。


「ねぇ~、ネズリーなんだよねぇ~?」

「………こんなねずみ、他にいたら、怖いよ」

「くまぁ~、くま、くまくま、くまぁ~」

「まぁ、オットルもそういえば、そうだワン」


 ――通じなかったようだ。

 クマさんのオットルお兄さんの言葉は通じているように見えるのに、ねずみが哀れである。ちょっと、落ち込んできたようだ。


「ちゅぅ~、ちゅう、ちゅ~………」


 落ち込んでいる様子は、しぐさで通じる。両手をだらりと、空中でうなだれていた。

 頭上の宝石さんは、慰めるようにねずみの隣に浮かんでいた。ぴか、ぴか――と、ゆっくりと光っている。


 ドラゴン姉さんが、ツッコミを入れた。


「ねぇ~、書いてもらったら?買い物メモって、いつもクマさんが書いてるし」


 赤毛のロングヘアーをなびかせて、スタイルの良いお姉さんが、何気ない風に、ツッコミを入れた。


 当人達でないため、冷静であるおかげだろうか。丸太小屋メンバーは、いっせいに指を刺した。


「ちゅ~っ」

「そっか~」

「あぁ~、ネズリーとの待ち合わせも、メモが最初だったぁ~」

「くま、くまぁ~、くまぁ~」

「忘れてたワン」


 筆談が、始まった。



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