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禁じられた世界に続きがあることを確認する

 その日、部活が終わって制服に着替えている時に邪な解を得た。

 教室に戻れば、おそらくあのノートは存在する。あの日も置いていっていたのだ。今日も机の中にあるはずだ。

 いやいやいや、とその解が正解でないことを確認する。解ではあるかもしれないが、それは点数をもらえる解ではない。

 だが、点数をもらえなくてもそこに解があると知ってしまうと、その世界を覗いてみたくなってしまう。名前は忘れたが、すべての数は有理数で表せるとされていた古代ギリシャで、無理数の存在を確認した学者がいた。彼はそれが当時の常識で正しくないとされていることは知っていたが、新たに見つけた世界の研究を止めることはできず、ついには禁忌の世界に触れたことで処刑された。

 人間とはそういうものだ。正解でなくとも、解を得れば、もはや抗えない。

 武道場からすっかり暗くなった校舎へ戻る。教師がいる部屋と吹奏楽部のいる音楽室は明かりがついているが、教室はどこも暗い。自分の教室もやはり暗い。

 昇降口でサンダルに履き替えて階段を上り、廊下を通って教室へ入ってしまえば、僅かな外からの明りだけで苦もなく自分の席へと足は体を運んでくれる。そしてそこから数メートル黒板側へ移動すれば、椎葉くんの席だ。

 改めて周囲に気配がないことを確認する。常識から反することをしているのを自覚しつつ、机の中の教科書やノートを一つずつ確認し、数学のノートを見つける。

 元の場所を忘れないようにして机から引っ張り出す。裏表紙の側からページを捲れば、今日のページへはすぐに辿り着いた。

 やはり、今日の日付の上に「ありがとう」の文字が書かれていた。禁じられた世界に続きがあることを確認する。

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