第5章 12話 異常な現実
ヒロル達を探すため、僕はクロクから現実に行くように頼まれた。
――現実
「来ましたね」
「そうだな。」
クロクと別れた後、僕達はすぐに向かっていた。いつもの街並みだが1つ違和感があるとすれば
ザワザワ…ゴソゴソ……
「もう嫌よ、あんなの!」
「速くしろ!!」
「やってられんか!!」
スマホを片手にイライラしていたり、喧嘩してたり。なんだかいつもより治安が悪い気がする。
というより、目を凝らさなくても視界に写る人の背後から、黒い影が見えてしまう。
この力、学校ではその人の性格をみれる感じだったから、関わり方を考えられるし使おうと思えば好意とかも見えるから便利だったんだが、ずっと見える今はただただ気持ちが悪い。
オンオフみたいな機能があればなぁ。人間観察してただけでこんなものが手に入った僕も僕だが。
「どうした?」
「いえ、大丈夫です」
『なぁアラストリア、これどうにかしてくれないか?』
『原因としてはお前の魔力自身が荒れているのと、この世界の異常現象だろう。我の力ではコントロール出きない』
『なるほど。僕の事は仕方ないとして、この世界の異常っていうのはそのままの意味で死呪霊のことか?』
『あぁ』
これは、ヒロル達の仕業なのだろうか?現実を目の敵にしているようだし。恨む視野には入っているだろう。
『そういえば、お前に1つ伝え忘れた事がある』
『ん』
『あの子どもだが……お前と別れる時に言っていたが、次は天空ごと壊すらしい』
『そうか』
ん……? 天空を……壊す!?
「っはあああああああ!?」
「どうしたんだ、彩夢?」
『いや、速く言えよ!!』
『我は覚えているから、お前も思い出したかなと』
そんなわけないだろう。こっちは記憶が曖昧なんだし。
僕はつい大声を上げてしまっていたが、周りは僕に気にすることなく余裕がなさそうに歩いて行く。
「彩夢……?」
「すみません。えーっと改めて伝えるので今は気にしないでください。それより、ウィストリアさん、なにか違和感とかありませんか?」
そういうと、ウィストリアは少し眉をひそめながらあたりを見渡していた。
「魔素は、この世界にも少しはあるのだが、魔素を吸うとなにか不快な気持ちになる」
「体調とかは大丈夫ですか?」
「あぁ大丈夫だ、ありがとう彩夢。だが、あまり魔法は使わない方がいいと思うな」
「分かりました。なら無理しないでくださいね」
おそらく死呪霊、いや彼らが関わっている。
この異常現象、治安の悪化。もし、今も僕が死ぬ前にみた、あの記事が流れてしまったら自殺者は増えてしまうかもしれない。
それにこんな状況、僕達だけでは防げない。
「今、僅かに探知をしているのだが、反応が魔素?か何かに妨害されて分からないな。……っ」
ウィストリアは少し苦しそうに考えこんでいた。魔素というよりはこの黒ずんだ雰囲気だろう。
「無理はしないでください。この世界は死呪霊だらけになっているようです。彼らからは、もう僕達の事を認識されているかもしれませんし、変に動くと危ないです。」
「なら……この状況をどうするのが正解だと思うか?」
今は探知のためにも死呪霊をどうにかする必要がある。だが、僕とアラストリアだけでは間に合わない。なにか良い方法を考えないと。
いや一瞬なら穴は開けられる。
「一時的に周囲の荒れを何とかします。その間は感知できると思います。」
「よし分かった」
僕は軽く息を吸い目を開いた。
「我が身アラストリア、この周辺の害を貪りつくせ」
『グルウアアアア!!』
アラストリアの雄叫びが周囲に鳴り響く。人には聞こえないだろうが、黒い影は反応するように人の身体に隠れた。
アラストリアは歩く人達を目掛けて襲いかかり黒ずんだ空気を壊す。
「……!彩夢」
僕が周りを見ていると、ウィストリアが突然声をだした。
「どうしました!??」
「それが転生前者が今二人現れたんだ」
「二人!? 一気にですか!?」
「あぁ。分からないが」
「じゃあ二手に分かれませんか?ウィストリアさん、一人は任せても大丈夫ですか?」
そう言うと、ウィストリアは不安そうな表情を見せていた。が、スッとなにかを決め込んだように僕を見た。
「よしっ! 私も、彩夢と一緒にいて色々と学んだんだ。私も頑張ってみるよ。」
「分かりました。なにかあれば言ってください。」
僕は、ウィストリアさんを信用しながら頷いた。眼鏡を受け取りそれぞれの方向へ向かっていく。
もしかしたらこれが最後になるかもしれない。その前に密かに計画していたものを作らなければならないと。
あの記事に匹敵する仕組みを。永久的に消えることがない……僕の最期の遺作を。
一方、冥界
「そんなに心配かユキ?こいつは失敗作だが、俺の最高傑作でな?そう簡単には死なないから安心しろ。本能を使えば、主の命なら身体がバラバラでも動き続ける……面白いだろう?」
「……」
「面白くないですから。それに純粋な子どもにそんな物騒な事を教えないでくださいよ。」
「駄目か。だが、こいつの体調はもう大丈夫だろう」
「……っ」
「にいちゃ!!」
「すみません。また、お世話になってしまいましたね」
「構わん。俺は好きなだけ酷使してくれていい。」
「仕事がないですしね。」
「では、姫のもとに行ってきます」
「あぁ、それだが、1つ連絡がきていたぞ。」
「??」




