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地平線の仲介者 〜死んだはずの僕が現実で転生を止める役目を受けました〜  作者: 大井 芽茜
第5章 天空戦争編(準備)

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第5章 11話 調査と過去 

ヒロルと名乗る男と戦って数日が経っていた。

しかしながら……彼が残した爪痕は大きく、仲間の弥生は死にかけている。


手がかりを探すため、僕はウィストリアと調査を始めた。

「やぁ、彩夢」

 クロクはスっと本を読みながら立ち上がった。


「……! 貴方はまさか」

「久しいね。ポーペ・スライド・サムッサ・ウィストリア。僕の事はクロクって言えば分かるかな?」



 クロクは、固まったウィストリアに、ニコッと笑みを見せていた。

「あっ……クロク…っ様!! お久しぶりです! 気づかなくて申し訳ありません……服装も雰囲気も変わられていたので」


 ウィストリアはハッとするとすぐに膝をつき頭を下げる。やはりクロクは天空にからみて立場が高い存在にいるのだろう。



「んっ? 別に気にしてないよ。あっ周りには他言無用で頼むね」

「えーと内密にしとく。……で、クロク。」



「っ彩夢!?」

 ウィストリアは普通に話す僕を恐れるような目でみていた。


「あー大丈夫。友達だよ。で、なんだい?」

「いや、何をしているのかと」

 ウィストリアは凍り付いているが、とりあえず話しを進めると、クロクはそうだったね。と僕に本を渡してくれた。



 児童書、ラノベ……小説。

 歳にバラツキはあるが年齢層が大体分かってしまう。それにしても明るい本しかないな。暗い話も面白いのに。


 僕は関係のない事で落ち込んでいた。


「ウィストリアにはこれ。」

「これは……」

 ウィストリアは、クロクから黒い魔法書を受け取っていた。



「あくまで時間を戻してここに存在させている。けど中身は詳しくは見えないしもう消えるね」

「待ってください! これって……」



「そう、地界のもの。魔法式は雑だけど威力は天界といい勝負になる。簡単に使えるけど、変わりに代償とか呪いとかがある分類だったはず。」

 クロクは難しいそうな話を分かりやすく言っているような感じだった。おかげで僕もなんとなく分かった気になれる。



「なら……やはりフォルナは」

「あぁ、あの子か。なにか見覚えがあると思ったら僕の担当だったね」

 クロクとウィストリアはなにか話していた。僕は気にすることなく他の本を漁ってみる。



 んっ?これって

「……っ」


 スプラウトの家に行った時に、弥生が読んでいたシリーズのものだ。年季が入っているように、紙を何度もめくったあとがあったり汚れている。


 僕に出会うまで、ここで弥生は暮らしていたのかもしれない。中身は冒険ものだが……残虐なシーンはないし、ただただ主人公が楽しそうに冒険している。

 羨ましい限りだな。


「ウィストリアさん、これ」

「ん、これは弥生のものか?」

 僕の顔を察したかのような問いに静かに頷いた。



「やっぱりここは長い間、生活に使われていたようだね。それも、神達がいなくなって人間が増え始めていた大変な時期あたりかな。」

「おそらく。あの時にフォルナは急に姿を消しましたので、そこから活動していたのかと」



 ウィストリアは心苦しそうな顔で話を続ける。

「実は1つ……心当たりがあります」

「えっ」

 いきなりの発言に驚いていた。そんな様子を全く見せなかったし。いや、でもずっと調べていたなら大体固まったということか?



「黙っていてすまない。ずっと考えてはいたんだが、やはり原因はこれだと結論づいたからな。それに、彩夢の話にでていた少年はおそらく」

 そう言うと、クロクはピンと来たように納得していた。



「あぁ、フォルナが対応していた子どもか。いやぁ大きくなったねー」

「えっと……」

 つまり、ウィストリアと僕みたいな関係なのか?


「待ってください。ここに来た人は他の世界に行くんじゃないんですか?」



「まぁ1部滞在している者はいるが、あの子はフォルナが反対したんだ」

「僕も同じくされたね。」

 ウィストリアとクロクは頷きあった。



「彼は生まれて2歳で死んだんだ。いや、殺されたと言う方が正しいかな。」

「それは……」


「フォルナの報告を聞く限り、まともな家庭ではなかったらしい。」

 虐待?あのヒロルが?

 だが、だとしても、どんな目に合ったとしても、弥生をあんな事にしたあいつを許す事は出来ない。



「私達の役目は、恵まれなかった現実から新しい世界で幸せな人生を送ってもらうこと。しかし、フォルナは彼に出会った事で……天空に不信感を抱いてしまった。」



 クロクもウィストリアに続いて口を開く。

「記憶を塗り替えて、他の世界に送る事が本当の幸せなのか。なにも知らないまま愛も受けずに死んだ子を、投げやりのように送りたくないと言われたね。」


「そのまま考えはどんどん歪んで、いつかは人間に、もはや現実だけでなく天空さえも憎むような心情を私に話していた。私の話も聞かず気がつけば消えていた。」


 ウィストリアとクロクは思い出すように色々と教えてくれた。そして、彼女の憎悪は終わる事なく今にいたるという事か。


 だが、天空は崩壊を迎え、現実世界では自殺者が耐えない。それがあの人達が望んだ世界なのか?


「僕が担当の女神としても、流石にもうほっとくわけにはいかないかな。ここまできたら庇いようがないしね。死に場所くらいは用意しようか」


 クロクはそう言いながら立ち上がった。

「おそらく、今は現実世界にいるだろうね。どこかで隠れているか……なにをしているのかは僕にもわからない。」



「あの、クロク様」


「なんだい?」

「今から行って探してきます。元から現実にも行くつもりでしたから。それで、もしフォルナに会ったら話し合う時間を頂きたいです。」


 話し合う?

 フォルナに殺されそうになったのにそんな事をしたって。いや、ウィストリアには心残りがあるのだろう。


「でも……」

「分かっているよ、彩夢。しかし、あんな事をしていても私と共に事務をしていた仲間だ。根は優しいんだ。相談もされたのに私は役目だけにとらわれていた。ちゃんと話し合えなかった私の責任だ。だから……」



「いいよ。まぁ、神界には内緒にしてね」

「はい!」

 ウィストリアはクロクに深く頭を下げていた。クロクは気にすることなく、また本に視線を向ける。



「僕はまだ調べがあるから。分かり次第知らせるし、なにかあったら呼んでほしい」

「分かった」

 こうして、僕はすぐに現実に向かう事にした。


「無事を祈るよ。あ、そういえばこれっ」

 僕は反射的に受け取った。ナイフ?僕持っていたはずだが……あれ無い。


「ありがとう、クロク。あったはずなのに」

 僕はナイフをい、クロクを背を向け天空の町へ歩いて行く。





「ねぇ……アラストリア。僕は今の彩夢君がいいな」

「ぇ?」

 小さな声に振り向くと、クロクは僕を悲しそうな目で見ていた気がした。



「なんでもないよ。いっておいで」

「あぁ」

「で、クロク」

「どうしたんだい?」


「後書きで聞くのもなんかあれだが……担当ってなんだ?」

「それか。僕は半神なのは知っているよね?精霊界にいた前は、神の役割をしていたんだ。で、僕が世界を作ってフォルナに死んだ人間とコミュニケーションをとらせたり、サポートをすると」


「あぁそういえば……言っていたな。じゃあ、今はなにをしているんだ?」

「んー、秘密かな」



(よくぶらぶらしているし……あまり聞かないでおこう)

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