第4話 問題
あらすじ
自殺を止める事に成功した僕達は、奈美からイジメの話を聞いている。
奈美とゆうは親友だったが…ある日来なくなってしまい、教室に向かった。
すると、そこで男の子からイジメを受けていると聞き、2人で乗り込む事にした。
「あなたのせいで、私の友達のユウと渚が学校に来なくなったのよ」
「よく言うわ。あっちが勝手に来なくなっただけじゃない」
「違う!」
奈美は感情に飲み込まれるように、前のめりになっている。
「なるほど。彼女というのは君のこと?名前は」
「私?私は未空よ。」
「奈美、未空がやったんだな」
「えぇ」
……よし。まずはWhoは満たした。
いまは問題をより簡略化し、現状を理解する。
「場所は」
「学校がほとんど。」
Where。
「それは今も続いているのか?」
「今は私にしか嫌がらせしてこない。小学3年のとき、2人が学校にいたときは嫌がらせした。」
When。
「じゃあ何を奈美達にしてきたんだ?」
「最初は、ユウをいじめたのよ。私がみたのはびしょ濡れになって未空達に蹴られる姿よ。そして、渚は私と一緒に先生に報告したの。……でも、先生は信じてくれなくて渚に罪を擦り付けた。」
考えるに、ユウという存在とは友達の関係。渚という存在は力を貸そうと奈美のために奮起した人なんだろう。
「なぜいじめたんだ」
俺は未空に問い詰めた。
「何をそんなに真剣になっているの?バカらしい。別にただなんでもできるっていうのがいらついただけよ。」
「へぇ、認めるんだ」
「昔のことを一々問い詰めてなにになるのよ」
未空はしょうもないと言いたそうにため息をついた。
先生にも問題はありそうだが、この人もこの人だろう。
「昔のことでも、傷ついた人がいる。その事実は変わらないし、いつ掘り返しても傷つけた側に文句を言う筋合いはない。お前は、ただ自分のやった事をずっと責任持って引きずらないといけない。」
「はあ。しょうもないわね。傷つかれる側に問題があるのよ」
「なんで……そんな事いうの」
まあ、これで材料は揃った。
5wは満たしたし、あとはもう一度認めさせて、この力で分からせる。
「ありがとう奈美。あとは任せて」
「うんお願い」
「で、改めて、今のは本当?未空」
僕は奈美を背中に隠して話す。
「えぇそうよ。まぁ今更話しても帰ってこないし、無駄だけどね。あはは」
「ほんとね。懐かしい」
「あったわねーーそんなこと」
「周りは黙っててよ。君たちも取り巻きでいじめしたんでしょ?本当に1人で頑張る奈美がえらいよ」
次は取り巻きを煽るか。
「関係ないのに外から声出して、卑怯だと思わない?そういう少し立場が強いやつと一緒になって何でも出来るって過信して、あとで1人になって何も出来ないなんて可哀想だよね。」
「うるさいな。一緒につるんで何が悪いんだ。お前は友達いないだけだろ?こっちは仲が良いから手伝っているんだ。」
その言葉に反論するように男は僕をみて嘲笑う。
「私には友達ってよりただの依存関係に見えるけど」
僕は言葉を続ける。
「あなた達も1人じゃ何も出来ない癖に、群れて弱い立場を叩く。それで優劣感を得て自分の地位保ってさ、汚いと思わない?」
「……色々と意味不明だわ!」
「簡単に言うと、お前らみたいに数でしか勝てないような卑怯な人間より、友のために1人でも必死にもがいて生きている、奈美の方が世間の目でみても立派だって事だよ。」
「うるせぇな!さっきからグダグダしょうもないことばっかり言いやがって」
「いいか?1匹になった蟻じゃ生きていけないから忠告してるんだ。ついて行く背中や匂いが無くなければ行先も分からなく………」
ガッ
僕がだらだらと話していると、急に男が殴りかかった。話が脱線してた事は謝る。まぁいいだろう。僕はすぐに奈美に、奈美は有彩に合図を出す
ガッ
僕がもう1発殴られると空は荒れ風が強くなっていく。
「うっ」
「れい!」
作戦通りだが痛い。小学生のくせに、次は蹴りをいれてくるつもりだ。
コイツっ!
僕は蹴りを入れられたギリギリで足首を掴む。
「…!はなせ!」
「………」
足首を引っ張り自分に引き寄せた瞬間、思いっきり右足を腹にやり返した
「ぅぐっ…!」
高跳び選手の脚力みたか。年が違うんだ年が。
なんだか、小学生相手にしょうもないマウントをとる自分が恥ずかしくなってきた。
「ぁあぁアああっあ゛」
男子は床に張り付いて唸っている
流石にやりすぎた。全く大人げないな。僕は自分を叱りながら、リュックから湿布を取り出してた。
「これ使って」
「あっ…ありがとうございます。」
そして、僕は未空達に視線を向けると、逃げ出そうとしている。
(そうか、圧が切れて動けるのか)
ま、予想はついている。最初から逃げられてもいいように。
「おい、待てよ」
僕は有彩に合図し、さっきの落とし穴を見せ足を止めさせる。魔法での解決のようになるが力は使ってないしセーフだ。
「きゃあ!?」
眉間をしかめながら迫る僕と共に風は荒ぶり、雷が鳴り響いている。少しでも、風に足を取られれば即終わりだ。
「奈美達にした事と同じだ。自分がどうしようもないものに押し負ける。それがどういう痛みか分かる?」
「…………。……っ分かった!! 分かったから、私が卑怯だった! だから助けて!」
適当だなと思ったが生死の境目だし仕方ない。
「奈美にいうことは?」
「ごめんなさい! あなただけでなく2人にしたことも全部謝るわ。」
さっきの威勢は無くなり怯えていた。まぁ、ここまできたし、あとは奈美に任せよう。
「いいよ、ちゃんと2人に謝ってくれるなら」
未空は快くうなづいた
「れい?」
もういいんだな。僕は納得すると奈美の背中に右手添え合図した。
「あと、奈美に手を出さないで」
「はい」
全員が声を揃えてそういった
「あぁ。後ろ見てみなよ」
「…!」
風がやみ落とし穴が塞がっている。
「風がたまたま横の土でも運んだみたいだね」
その瞬間、蹴られた子を含めて一目散に逃げていった。
なんとかなったか。
ただただ疲れた。頭痛も怪我も酷くなっていく。
「本当にっ……助かったのね! ありがとう、れい!」
奈美は僕に抱きつきながら泣いていた。
「生きてて良かった! 本当にいい日が来たよゆう!」
有彩は慌てながら僕達の元へ走ってくる。
「大丈夫か?2人とも!」
「ありがとう、有彩!魔法がいい雰囲気だったよ!」
「そうか、良かった。合図完璧だった。」
最終手段として、逃走した場合、雷と嵐を吹かせ逃げ場を奪い恐怖を煽ぐ。細かい作業を人間に見せるのは良くないので影でして貰っていた 。
もう1つこれには意味があるがな。
「これで終わりだな。帰るか」
有彩は呟いた。満足そうに。
「いや、まだこれからです」
「えぇ!そうよ!」
問題はまだ残っている。今はその場しのぎに過ぎない。すぐにケロッとした顔でやり返す可能性もある。
「まだまだここからです。」
僕達は曇った夕暮れを見つめていた。そう。ここからが本番だ。
「零って格闘技とか習ってたの?」
「いや、ただの感覚だ。ドラマとかのアクションで俳優さんが力を入れている所とかが何となく分かるんだ。だからそれを生かしてる。」
「なんか凄いわね。」
「オリンピックに出た陸上の選手にも同じような人はいたしそこまでではないと思うが」
「私は、凄いと思うわよ…?」