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地平線の仲介者 〜死んだはずの僕が現実で転生を止める役目を受けました〜  作者: 大井 芽茜
第5章 天空戦争編(準備)

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第5章 1話 未来を蝕むもの

「死は救済」そんな馬鹿げた集団がある事をクロク達から聞いた。


一緒に暮らす弥生とも関係がある事を知った時、弥生が苦しんでいると天空から呼び出される。

「弥生!!」

 僕は息を荒らげながら戻ってきていた。綺麗だった街は崩れ、売っていたものや食べ物の残骸が飛び散り炎があちこちで見られる。まるで別世界のようだ。


「死呪霊だあああああ、おやつ食べようと思ってたのに!」

「戦わないとっ、武器武器……まぁ木の枝があれば大丈夫ね!!」

 女神や天使が叫びながら走り回っている。



 煙があちこちに巻き上がり、周りからのうめき声が耳から離れない。直りかけた世界は一瞬で滅びを見せると僕らは思い知らされているようだ。


「こんなっ」

「さ、彩夢!! 来ましたね、聞こえますか?」


 ――っ?

 カクラジシの声が瓦礫の中から聞こえてくる。どうやら埋まっているようだ。僕はそこらへんにある椅子を傍に置いた。


「すぐに助けます」

 僕は瓦礫を無理やりにどかし、支え代わりに椅子を入れ空間を造ってカクラジシを引っ張りだした。


「怪我はないですか?」

「はい……大丈夫です。」

 大丈夫だとは言ってもボロボロだし引っ掻き傷が身体中にある。角も折れてしまい魔力が弱まっているのかぐったりしていた。



「こい」

 そう呟くと、僕の横に冷蔵庫が滑り込んできた。僕は女神から沢山貰った中に、ウィストリアを治したとされる天癒水(ちゆすい)(ラベルに書いてる)を取り出して手に流しながら飲ます。


「助かりました。……いえ、それどころではありません 」

 カクラジシは目を覚ませるかのように頭を振り、深呼吸する。



「落ち着いて聞いてください。弥生が急に様子がおかしくなったんです。貴方が出ていった後、急に頭を抑えて苦しみだして、その後どこかに行ってしまって」

 僕を狙うやつらに弥生に起こったといわれる異変。確かにあの人の言った通りだ。


「大体分かりました。で、どこにいますか?」

「行くのですか?」

「当たり前です」

 僕は、冷蔵庫から魔鉱石とナイフを取り出した。戦いたくはないが嫌な胸騒ぎがする。



「しかし貴方は人間なんです。魔力がないのに無闇に突っ込むのは危険すぎます。」

「僕にはアラストリアがいます。魔力は彼から貰えばいい、死呪霊がきても全部喰い潰します」

 カクラジシはとてつもなく不安そうな顔をしたが、下を向いて何かを決めていた。


「…………。分かりました。私は弥生と魔力を共有しているため、とても不安定な状況です。ですが、サポートくらいは出来ます」

「ありがとうございます。」

 僕は、カクラジシがおそらくこっちだと指さす方向へ足を踏み出した。


「ウィストリアさん達に連絡を。僕の部屋にありますから。」

「分かっています」


 どこに行ったんだ、なにをされている?そんな不安を抱えながらカクラジシが示す道筋を確認した。


「頼みますから、命を大事にしてください。貴方が死ねば色々と困るんです」

「…………善処します」

 ウィストリアさんに連絡をすれば、僕は時間稼ぎをするだけだ。


 ただ歩けば歩くほど街がどんどん壊れていく。

 悲鳴や崩れる音、被害がだんだん大きくなっていく。黒い影も周りから見えているような気がした。


「ぎしゃあああ!!」

「がアアアっ」

 不意に黒い影が飛び込んでくるが反射して避けて構える。何回か襲われてきたからなんとなく身体と目が慣れてきた。



「また死呪霊か」

 前から何体も何体も……まるで前にいるものを守っているように襲いかかる。使いたくないが僕は息を吸う。


「ギャフっ!」

「ガアアっ」


「……え?」

 アラストリアを使う前に後ろから鋭い槍が飛ぶ。その後に続くように魔法や木の枝が飛び出し死呪霊を倒していった。



「彩夢様! 我らが援護します!」

「前のお詫びにはなるからっ」

「良い人間には力を貸すわ」

 サウドに女神や天使達が束になり前方の敵に向かって魔法を放つ。



「彩夢様、あの方を助けるには貴方しかいません。」

「行って!」

 彼女たち、変わりきった弥生を知っているのかもしれない。倒れる死呪霊を見ると、どくどくと胸騒ぎが激しくなっていく。



「分かりました。ありがとうございます!!」

 僕は死骸を踏みつけながら前へ前へと進んでいく。


「弥生、待ってろ」

 走っていくと、見覚えのある影が姿を見せる。


「弥生っ!!!!!!」


 その影が僕を気づきこちらを向いた。


「っ!!」

 僕の表情は気づけば凍りついていた。変わりきった……いやこの感じ、最初の頃に近い。


「なぁに?? おにいちゃん」

「…………っ」

 彼の手は黒い影をまとい爪が伸びていた。目は獣のように縦に瞳孔が伸び、黒い影をまとった彼はあの時より凶暴そうに見える。


「どうしたのおにいちゃん? ぼくのことわからない?」

「分かっている。弥生だろう」

 雰囲気は違っても姿はしっかり弥生の原型があった。だが、この変わりきった性格だと認めたくない。



「うん、そーだよ!! さっすがおにいちゃんだね。やっぱり。こっちの方がおちつくよね」

「だまれ。今すぐ弥生から離れろ」

 こんなの弥生じゃないのは見てわかる。ただ、どうすればいつもの弥生に戻る?



 僕は、怒りを押さえつけるように息を吸った。アラストリアの力を使う事ができれば、中身が本人か死呪霊かは割れる。



「うるさいなあ。ぼくはずっとこれだよ。ただ、ときがくるまでおにいちゃんが、きにいるよーにえんじてただけだよ?もう、かぞくごっこはおわり!」


 違う。あの時、弥生は苦しんでいた。僕に助けを求めていた。コイツは弥生を無理やり押し付けて成っているだけと考えたい。


「しんだ さいむをつかまえろ。これがぼくにきためいれい。ちからももどったし!」

 黒い影はどんどん色を増しオーラのようにまとっていく。


「さぁおにいちゃん! こんどは、おいぬさんごっこしよ? あっ、おにいちゃんがいぬね!」

「ふざけるのもいい加減にしろっ。弥生を返せ!!!」

 僕は、ぐちゃぐちゃな感情にこらえながらナイフを向けた。こいつの思考を読もうとしても読み切れない。なら、実力行使だ。



「ひどいなぁ。じゃあ、さっさとおわらせよ?ほんとうのおにいちゃんに、よろこんでほしいし、いけどりかな?」

「出来るもんならやってみろ。」


 僕は、戦うしか選択肢が無いと察した。弥生も同じ考えをしたのか、すぐに飛び出し容赦なく爪を向ける。反応が前より速く引き裂かれた。


「ね、おにいさん!! まっかなほうがだーいすきだよ!! 」

 甘く見ていたが、かすり傷だけでも手足に力が入らなくなっている。攻撃を避けながら魔鉱石を手に取った。


概念付与(エクチェプション)っ」

(僕の合図と共に光を放つ)


「起動!」

 僕の声に反応するように投げ出された石から光が溢れだす。


「っう!」

 ウィストリアからもらった眼鏡は光を遮ぎり次に備えて先を見据えナイフを向けて走っていく。


「概念付与」

(痺れろ……動きをとめるものとなれ)

「―――っ!!!」

 その瞬間をねらい、僕は距離を詰め、目が見えないながらに爪を振り払している弥生の胸に突き刺した。



「いい加減にしろ、弥生」

「……っ…あはは、さすが! まえよりつよいね? にんげんいじょうになったね? さっすがおにいちゃん!! みんながほしがるのもわかるかも」

 動きは止めたはずだ。なのになんで動いている?



(「あまり魔力はないけど」)

 クロクはあぁ言っていたが、このナイフには確かに魔力が流れているはずだ。僕の力不足ではなく、何かしらの対策がされているのだろうか。


「……っ」

「ねぇもうおわり? まだまだ、きぼうをみせてよ! で、いたぶらさせて?」


(どうすれば弥生を)

 何か考えろ。できる限り傷つけない最前の方法を。彼を救う手を元に戻すために。



 ……ざっ

「―!」

 突然耳にざらついた音が入る


『だから、人間を信用するなって。あれは本当に偽物か?はっ本物だったら?』

 急に僕の動きは鈍り、聞き馴染みのある声が響いた。


「……」

 誰だ。


『どうせ皆裏切るんだから。もうそいつも壊せばいい。いっそ人ごと。お前だけが生きる世界になれば、お前が望む居場所というものを必要としない世界になる』

(黙れ、その考え方……)


『報復が1番気持ちいい。弥生も皆みたいに裏切るだろう。また自分を使われて』

「だまっっ」

 ガッ



「――!!」

 油断していた。既に胸には鋭い爪が入っている。



「よそみしないでよ。お に い ち ゃ ん?」

 あの声はなんなんだ!? 僕は、うなりながら耳を片手で抑え頭を振った。


「…」

 待て、これは前の弥生と戦った時と同じような感覚に似ている。ただ、今回は回想というよりは僕の中にある心の隙を連れてきたという感じだ。


 飛んだ腕はすぐに元の場所にくっつき再生を始める。死の概念がない僕にはまだ戦える時間がある。この僅かな魔力が尽きるまでに、次に情にでも訴えてみるか。



「弥生っ!! しっかりしろ。お前を助けにきた! 起きてくれっ弥生!!」

「どうしたの? ぼくはちゃーんと、きいてるよ?」


 本当に届いていないのか?まだ外部にしか干渉出来ないのかもしれない。もし、乗っ取っているとしても本心に少しも近づけてない。


 彼の状態は分からない。もし、彼が本心でやっているならアラストリアの力で死呪霊の魔力を削ぐとどうなるのか。身体が変形しているし身体と魔力は混じっているだろう。



「…………っ」

 弥生には使いたくなかったが。

 こんなに黒い影が染み付いているならきっと前みたいに綺麗に剥ぎ取る事は出来ない。


 これは弥生じゃないと、そう信じるしかない。



「――我が身アラストリア」

 弥生を助けるぞ。


『あぁ。』




「…………願いを叶えろ、弥生のために力を借せ!!」

『ウルルルゥゥキャアアアア!!!』

 獣は僕の影から無理やり顔を出す。上半身しか出ていない黒い獣は目を光らせ睨みつけた。


「やっときたね? まってたんだよ! ほんとーに、きみがわるいね。それ。」



(「怖くないのか……?」)

(「うん! かっこよかったよ!」)

 こんな力を弥生は受け入れてくれた。なら、こいつの反応を見るに弥生じゃない。



「アラストリア!!」

「ウルルルッ」

 確かに、わかっていても、どんだけ慣れていても、裏切られているのかという不安だけは心にきている。



 でも、まだ取り戻せる。全てをかけてでも救ってみせる。

「冷蔵庫の名前なんかないですかね…機械」

「まぁ、なしでいいかと」

「じゃあ、レイレイ」

「却下」


「えぇっ……」

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