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地平線の仲介者 〜死んだはずの僕が現実で転生を止める役目を受けました〜  作者: 大井 芽茜
現実世界でまた

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第4章 22話 失いたくないもの

僕は、佳奈のいじめを解決するべく女として乗り込み、解決した。

前をむいた佳奈の前に現れたのは、死んだはずの母だった。

 佳奈の母? 確かもうこの世には居ないんじゃ。


「っっおかあさん…!!」

 佳奈の言葉に、女の人は嬉しそうに頷いた。


「佳奈……ごめんね、おかあさん居なくなって……寂しかったよね。おとうさん…あんまり話さないし…娘に対しても、恥ずかしがるような人だし」

「………」

 その瞬間、佳奈は女の人に泣きついた。ずっと耐えていた思いをぶつけるように。



「心配で、心配で……ある人に連れてきて貰ったの」


(それがクロクという訳か。)

 合わせたい人というのはこの人だったんだな。だが、僕にとっても大事というのは何なんだろう。



「本当に生きてくれて、元気で笑ってくれてありがとう。 おかあさん……嬉しいよ。 ありがとう」

「うんっ……私ね、おかあさんの大事なこの場所でもっと……頑張るから!!!」

 佳奈の言葉におかあさんも涙をこぼしていた。



「うん……ずっと見ているからね……見守っているから。佳奈の絵……もっと見せてね」

「――っうん! ……頑張って生きていくから!! いっぱい見せてあげるね!!!」

 ちゃんと佳奈のことを見ているんだな。



 それから、たわいのない会話を交わしていた。どうやら、父は母が死んでからというもの、抜け殻のように仕事に行くだけになってしまったらしい。


 だから、あの部屋は時間が止まったようになっていたんだろう。そして、今から父にも会いに行くらしい。まぁ、クロクがいいなら非現実的なことになっても大丈夫だろう。



「本当にありがとう。娘を助けてくれて……」

「いぇ、ただ少し手伝っただけです。僕も、佳奈の絵から元気を貰っていました。」


「でしょ? 私の自慢の娘なんですっ。」

 彼女には、力強く頷き、頭を撫でていた。心から娘を愛しているのだと……それだけは初対面の僕でも分かる。


 家族か。


「本当にありがとう! えーと零……」

「最後なんだし彩夢でいい。この姿だがな」


「うん! ありがとう彩夢!」

「また、呼んでくれ。……次はマリ達も一緒に来るから」


「うん!」

「本当にありがとうございました。」

 そして、2人は僕にお礼を言って帰っていった。どう、別れたのか? 家族でどんなことを話したのか。


 それは僕には分からない。けど、佳奈が前をむいてくれたからこそ見えた結末だろう。僕は守るべきものを少しの犠牲はあったが守れたのかもしれない。


 佳奈はもう大丈夫だな。後は、彼女の未来がいい方に傾くことを願っていよう。



「……と言うわけだよ。」

「クロクか。」

 後ろに立っているのに気づき、2人が帰っていくのをクロクと屋上から見守った。手を握りしめながら、佳奈が楽しそうになにかを話している。


「帰ったね」

「あぁ」

 僕は、眼鏡に頼んで姿を元に戻してもらった。



「やっぱり……そっちの方が落ち着くね。」

 これで終わったはずなのに、クロクはなにか重いものを抱えたような表情をしている。


「どうした? なんか暗そうだが」

「…………」



「いや、いい感じに終わったし。この事、言おうか迷ったんだけど」

「?」

 クロクの言葉は、急に空気を重くさせた。




「元々と言えば、彼女が自殺しようとしたのはあのおかあさんのせいだよ。」

「え?」


「…………」

「何を…っ………いや嘘だろ? そんな事する訳ないじゃないか。だって佳奈の事を」

 そんな訳がない、だってあの人は確かに佳奈を愛していた。大事にしていたはずだ。


「だからこそ……だよ。」

「……!」


「辛い現実を死という形で救済をする。それが彼女、いやアイツらの思想だよ。」

 救済?


「彩夢が、彼女を助けた時。何か見えなかった?」

(「でも、そんな時に彩夢くんに出会った時……スっとそんな考えが消えたの。」)

 あんな暗い場所であまり見えなかったが。もしかしたら、黒い影が見えていたのかもしれない。



「なんとなく心あたりは」

「あの時、彩夢が止めたというわけだよ。君のあかげで正気を取り戻してくれたし、話し合うことも出来た。」

 僕が?



「ずっと気になっていたが……なんで僕はそんな力を持っているんだ?」

 そう言うと、クロクは考えこみながら口を開いた。



「そうだね、君のもつ化け物は他人の憎しみを喰らい、力にする………いや、引き取っているのかな。彩夢のことを僕はあまりしらないけど」

「なるほどな。」

 憎しみには悲しみも入っている。手を握る事で引き抜いたという訳か。


「死呪霊の類いだし、君の思いを喰らって生まれたはずなんだ。死呪霊を喰らうあれは……彩夢の力は、唯一死呪霊にとらわれた彼らを解放する事が出来る。」

 死呪霊には死呪霊を。昔から、アラストリアがいた時だけは気分がよかった。何も怖くなかったし好き勝手に出来ていた。


 そう、あいつに願ったからかもしれない。楽になりたい、重みを外したいと。


「大体掴めた気がする。」

「そっか。多分、君はどんな人の話でも自分のように考えて感情を共有しようとしている。だから、誰かに寄り添う事で想い出させ、対象を奪い晴らす力も……その化け物に備わってる。」


 言われてみれば、感情移入は勝手に出来ているのかもしれない。会う度に人の話を聞き共感していた。まあ、被害者側だけだけど。



「でも、君が引き受けているって事を忘れないで。思いが重いほど共有すれば君に負担があるし、彩夢自身に影響だってあるかもしれない。君がおかしくなったら……あんな相手、僕でも倒せるか分からない」

 クロクは、僕を心配しているようだ。


「……分かっている」

「そう。ならいいんだ」


「本来、死呪霊を体内におけば少しづつ壊れていく。あの弥生くんみたいに。理性も何もかもが狂ってね。そして、身を無理矢理、壊すことも簡単にできてしまう。」

 弥生に合う時と、今は別人のようになっている。やはり死呪霊は人格さえもねじ曲げるらしい。



「……で、話を戻そうか。その死を救済とする集団だけど、その中心人物が死呪霊を人工的に作っている」

「あんなものを?」

 クロクは頷いた。


「僕もよく分からない。けど……あのおかあさんが言っていたし間違いはない。意図とかは見つけ次第に聞くしかないね」

 そう言いながら、僕のブレスレットに手をかざした。


「……?」

「と、言うわけで僕と連絡を取れるようにしたよ。何かあったら呼んでほしい。ここからは協力していこう」 

 彼の力を借りれるなら、すごく頼りになるだろう。


「あぁ」

「じゃあ、帰ろうか」


 ――その時だった。

「っ……クロクさんっ」

「なに?」

 急に佳奈の母が息を荒げて帰ってきていた。


「ごめんなさい。これ、彩夢くんに言えてなかったので。」

「……?…………。……!?」




「弥生!! しっかりしてください!!」

「おにっ……さんったす……あっ、ごほっ……」


 ――あの方は彩夢くんの力を狙っています。もしかしたら、弥生という方を犠牲にしてっ貴方を



 その途端、ブレスレットから急に声がでてきた。

「彩夢!!やっと繋がりました!至急、帰ってきてください!!」

「……?」



「ああああっ! …いやっ…あああ!! っおにっさ……た……」

 弥生の声?


 その声が聞こえた瞬間、僕は無意識に天空に戻ろうと走り出していた。



「仕方ない。さぁ僕も跡を追わないとね。君はもう少しいればいいよ。特別に許可してあげる」


これは佳奈と出会って間もない頃。クロクはため息を着きながら、佳奈の母に向かい合っていた。

「僕の話を聞いてくれないかな。逃がす気はないから」


「それじゃあ!! 娘はっ」

「大丈夫、彼に任せてみなよ。きっと彼なら……死以外の方法で助けられるから」

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