表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/146

第4章 21話 別れと再会

 自分と向き合う。その感覚は間違っている。


「……」

 先生が消えてからも、頭がずっとその言葉が回っていた。

 自分なんて分からない。僕は、ただ生きることしか考えられなかった。毎日必死だった。全てが上手くいかない世界で、自分をコントロールするのが精一杯で。



 押し殺さないと、好き勝手に生きればいつか本当に

(「救急車に運ばれたって! 坂から落ちて……」)


 奪うことさえいとわないだろう。あまり自分に詮索をかけたくなかったが、考えてみるべきだろうか。


「おーい、彩夢?」

「ん……クロク!?」

 ふと顔をあげると、なぜか僕の目の前にクロクがいた。彼は金髪の髪をなびかせながら笑っている。


「やぁ、久しぶり! なんか、女の子っぽくなってるけど元気そうだね」

 そう言うと、クロクは学校の教室が見えるところまで歩いていく。



「ここが学校か。僕が知っているものよりゆったりしてるね」

「周りから見たらそうかもな」

 実際、外から良いように見えても、僕に取ってはカゴみたいなものだ。居心地悪いし。ゆったりなんてない。



「君の事は色々あって見ていたよ。思ったけど今の人間って結構物騒だよね?無意味な争いばかりしているし」

「まあ、平和が気に食わないとか、つまらないとか、そんな思考を持ったやつはいるだろうな。」


「そうだね。積み重ねた平和さえ、人間の欲で消えていく。人間は更地をみた後、後悔した……って詩もあるし。」

 クロクは聞いたこともない詩を言葉にしていた。


「で、どうしたんだ? わざわざこんな所に来て」

「あぁそうだ。それ言わないと駄目だよね。」

 クロクはしまったという顔をした後、すぐに口を開く。


「えーと、君と一緒にいた子、助けた子いるよね?その子に用があるんだ」

「何する気だ?」

 クロクが良い人なのは分かっているが、その分不安もあるのも本音だ。戦う時の容赦ない表情を見る限り、目をつけられたら不味い気がする。


「いや、物騒なことはしないよ。僕はね、その子に合わせたい人がいるんだ。」

「なるほど」

「だから、今日の帰りにでもここに連れてきてほしい。君にとっても大事な話だよ」




 ――数分後

「はい、ということで今日も頑張りましょう」

 先生は、さっきの事を全く思わせない雰囲気だった。流石だな。


「大丈夫? 零ちゃん、先生に何か」

「おい、大丈夫かよ?」

 そして、休み時間になると、佳奈と打破が心配そうに駆け寄ってきた。


「大丈夫。先生と話し合っただけだよ」

「なにを?」

「僕と学校についてこれからどうするかについて。先生も改善考えてくれているし、これからはなんとかなると思う。」


「本当?」

「あの先生、あんまり信用出来ないんだけどなー」

 まあ、確かに何かあった時にどう動くかは分からないな。人はそう簡単に変わらないし行動もできない。


「信用して損はないと思う。あの表情だったし」

 そういうと、二人も僕が言うならと承諾した。


「あと、聞いたんだけどお前転校するの?」

 打破は囁きながら聞いてきた。


「うん。皆には言わないでね。出て行ったら安心しきって、また事が起こるかもしれないから。曖昧にする予定。」

 しばらくは先生にも曖昧にするように頼んでいる。まあ、こんなクラスだし曖昧でも何も言われないだろう。


 あとは、記憶を消して何故いじめをやめたか?とか、誰にやられたか?を分からなくする。そう記憶を消してしまえば、佳奈にも刃は向かないし、考えるのを辞めて自然に消えるだろう。


 高校生だし何かをすれば必ず痛い目を合う。それだけを覚えさせればいい。


「そうか寂しくなるな。……本当にありがとうな零。」

「うん。これからは皆で頑張ってね。応援してるから」


「あぁ!」

 打破は力強く頷いた。



 雑音が完全には無くなってはいないが、前よりは静かに授業をこなした。怯える生徒、馬鹿らしいとシラをきる生徒。高校生まで育ってしまえば、具体的な損害が来ない限り改心する奴は少なく、時間はあっという間に過ぎていく。

「最後なのに変なこと言って悪かったな」

「いえ……自分を見つめ直す良い機会になりました。では、また」


 僕は、先生に挨拶を済ませると打破を見送りに行った。そういえば、先生達が話し合った結果、僕が言った提案に近い罰が下されるらしい。これで抑止にはなるだろう。



「俺、パソコンとか出来るから……! なんか力になれることがあったら行ってくれよ。 とりあえず、なんか力になりたい」

「わかったよ。 じゃあ、また頼みに返ってくるかも。」


「もちろんだ、じゃあな! バイバイ!」

「元気でね、バイバイ」

 僕は笑顔で去る彼を見送った。これで大体は終わったはずだ。



「佳奈、少し屋上にきてほしい。」

「――っ! うん……」

 彼女は顔を赤くしながら頷いた。屋上……なるほど。


「合わせたい人がいるんだ」

「……あ、あ、あ! そ、そっか」

 佳奈は恥ずかしさのあまりさらに顔が赤くなって顔を仰いでいた。


「で、どこにいるの?」

「いやその」

 屋上についたが誰もいない。とりあえず呼んでみるか。



「おーい、クロクー」

「くろく?なに言ってるの?」



 ――そのときだった

「本当にありがとうございました」

 急にしらない人が屋上の奥に急に現れ頭を下げた。


「え?」

 この人を見た瞬間違和感を抱いた。生気を感じないというか、なんというか。


「――!!!!」

 そんな僕とは違い佳奈は前のめりになって声を失っていた。



「お……かあさん……?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ