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地平線の仲介者 〜死んだはずの僕が現実で転生を止める役目を受けました〜  作者: 大井 芽茜
現実世界でまた

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第4章 19話 始まる余興

冥界に帰ってきたマリと使い魔。

使い魔は自分を作ったと言うハカセの元へ行き、治療を受ける。

「これは綺麗に入っている。こりゃ……仕組みを知っていないとこんな事は」

 ハカセはブツブツといいながら使い魔の身体に細長く赤い針を刺していく。赤い傷跡には一本、黒溜りの跡には三本を3角状に突き刺した。


「……っ」

「痛むだろうな。そのまま眠ってろ。」

(自動回復が停まっているし、血の流れが悪い。)


 そう判断すると、黒い爪状の道具を取り出し指をはめる。

「……手術(オペゲシング)


 指の動きと共にそれぞれの針が違う動きをし始めた。

 黒い血が体内から飛び出し、赤い傷口は治っていく。黒い血は抜け、へこんだ部分に仕事を終えた針を向かわせる。


「管が弱くなってるか…………これを使え。」

 飛び出した1本の針に小さい管を巻き付け体内に突き刺すと、針は弱くなった管を巻き付け戻ってくる。


 少しづつ黒だまりの傷も消えていき、後は大きなへこみだけが目立っていた。黒い傷跡だった部分に爪をねじ込んだ。

「潰れてるな…………再生(オペゲシング)


 そう唱えると、身体のへこみは消え、全身から血管が浮き出した。


「痛みはあるか?」

「……いえ。」

 使い魔は声を振り絞るように応答する。


「なら、これで終わりだ。ソルスが全壊手前とか……ったく、手間かけさせやがって。」

 パッと道具や針をすぐにバケツに放り込むと、耳に手を当てながらブツブツと言い口笛を吹いた。



「よし。頼むから永く生きてくれよ。それが姫さんやお前に出来る唯一の償いだからな。」

 ハカセは投げ捨てるように呟き、使い魔の銃を持ち出した。



「来ましたよ、主。なにか用ですか?」

「あぁ、こいつを直して疲れた。道具を洗っておいてくれ。」

「分かりました。」

 レフトバはハカセからバケツを受け取り、 出ていく主を見送った。見送ると、使い魔を見下すように見ながらため息をつく。


「全く貴方も懲りませんね。」

「……今回…ばかりは、仕方が…」

 使い魔は、息を荒らげながらに起き上がり訴える。


「姫を…守るのがっ……… 私の……」

「そうでしたね。わかったから寝ててください。」

 使い魔を無理やり寝かせ傍に座りこんだ。バケツに向かって手から水を注ぎ込む。



「こんな状態でマリさんが死ねば、私も主も……貴方もこの町すら消されるでしょうね。」

 彼女が道具をバケツにつけると、魔力か落ちるように色を失っていく。鋼色の道具を取り出すと、タオルで拭き取っていく。


「あの方が必要としているのは貴方なんです。代わりなんて居ませんから。」

「………勿論。まだ死ぬつもりはありませんよ。」

 レフトバは安心したように頷くと、道具を机に置いた。


「姫さんの為にも今は寝てください。」

「ありがとうございます。」

 使い魔が目をつぶると、レフトバは彼が眠るまで静かに見守っていた。



 ――数分後

 バンッ!

「ぴーちゃんは!? どこ!!!???」


「なんだよ。仮眠してたのに」

「知らないわよ!! ぴーちゃんがいるって本当!?……うやぁ、タバコくさっ」

「あいつは研究室だっていつも言ってんだろ。あとだな」

「そ。」

 バタン!

 嵐のように過ぎ去ったマリを、ハカセは困ったような顔をしながら固まっていた。



「お前ら、揃いも揃って俺の話を聞かないな。」

 ハカセは気を取り直すと、銃へと釘を突き刺しこみブンブンと振り回しながら外へ出ていった。



 バンッ!

 マリは全速力で駆け込み、ドアを蹴りでこじ開ける。


「――マリさん!?」

「ぴーちゃん!! 大丈夫?どうしたの!?ねぇねぇ!」

「マリさん、落ち着いてください……大丈夫ですから。」


 マリは正気を失っている。と悟ったレフトバは落ち着かせようと身体を押さえつける。マリはバタバタと足を動かした。


「何すんのよ!?ん?レフトバはここに居たのね。」

「マリさん。これで何回ドアを破壊したんですか? 30は軽く超えてますよ。」

 この後、レフトバの説教をマリは聞き正気を取り戻した。



「……っ…」

「ピーちゃん!」

 使い魔が目をさめると、マリが心配そうに見つめていた。



「姫……すみません。」

「すみませんじゃないわよ! 聞いたわよ、ボロボロになってるってね。ちゃんと言ってよ。」

 マリは涙を浮かべながら起き上がった使い魔に抱きついた。


「あまり心配をかけたく無かったので」

「そのくらいっ分かっているわよ! 何年一緒だと思ってるの。」

 使い魔は強く抱きしめるマリを抵抗する事なく受け入れた。潰れそうになっているのを我慢しながら。


「あの銀髪の方……会いましたか?」

「あぁ、ユキの事ね。しっかり保護しているわ。」

 ユキ。その名前を使い魔は満足そうに聞いていた。



「速く挨拶して会いに行くわよ。会いたがっていたし。」

「そうですか、分かりました。」



 マリはふらつく使い魔をカバーするように腕を掴む。研究室を出ると、すぐにハカセ達がのんびりと休んでいた。

「おう。もう大丈夫そうだな。」


「ありがとうございました。」

「気にすんな。痛みがあったらいつでも言え。」

「だそうです。では……これを。主からです。」

 レフトバから赤黒い石が入った箱を受け取ると、すぐに影に保存した。



「話はマリから聞いた。暫く帰って来ないならそのくらいあればいいだろう。あと銃は治しておいた。」

「それは助かるわ。もちろん、ちゃんと呪霊について調べてくるし情報は渡すから。」

 ハカセから銃を受け取ると、使い魔はマリは2人に別れを済ました。


「さ、ユキや皆に会ってから天空に行きましょ。」

「はい、姫。」

 少し歩くと、寂れた大きな小屋があった。扉の前には沢山の子供が待っていた。



「ピィにいちゃん!」

 ガフッ

「元気がいいですね、問題とかありませんでしたか?」

「「うん!!」」

「ピィ兄さん! 遊ぼーよ!」

「僕ね新しい魔法を習ったよ!」


「今日は泊まらないの?」

「えぇ、今日は忙しいので。また帰ってきます。」


 子供とじゃれ合う使い魔をマリは嬉しそうに見ていた。


「なんか昔を思い出すわね。」

 マリは涙ぐみながら昔を思い出す。


「ねぇ…!! マリねぇ……」

「……っ!? ユキどうしたの!?」

 白銀の少女の目には動揺が現れている。



「たすけて……あの子達、可哀想。」

「――この感じ。ピーちゃん!!」

 使い魔がマリの方を振り向くと、状況を察したように頷いた。

「皆さん、避難を。レフトバが来るまで待機」

「「はい!」」



「姫さま!使い魔さま!」

「分かっています!! 皆さんは速く避難を!!」

(「ソルス、普通の子、化け物じゃない。なのに……っ」)


『ガアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!』

『サラィィィィィィィ!!』

 響き渡る雄叫び、狂う魔素。

(「帰りたいって苦しんでる」)


 ユキの言葉に当てはまる物。使い魔とマリはその正体を知っていた。町に現れるは、黒い瘴気を纏う獣、目は焦点を失い無造作に手足を動かした。

 不規則な形態、翼は頭から生え尻尾は手に巻きつくような不気味さを持つ。牙は横腹から鋭く光り悲鳴が鳴り響く。


「姫、やはり」

「――狂獣(ミタモルト)

「…………。」


 町の門から見えたのは群れの集団だった。どれも一筋縄ではいきそうにもない化け物。そんなものがこの町を目掛けて走ってくる。


「これまで1匹はいましたがまさか数で来るとは。」

「こんな数をどうやって狂獣化させるの。そんな実験……」


「まだしていないはずです。狂獣化というものは体内の魔力暴走、大体は形を成せないまま潰れてしまうのですが。意識がないのに、どうしてここに向かっているのか。」


(使い魔として成り立つ場合、冥界の人間は意志を尊重し害を与える事を禁じる。行えば罰を受けるし、そんな事をする人間なんているわけがない。そして、失敗作ではないなら暴走をする可能性は極端に少ないはずだ。)

 使い魔は疑問、違和感を覚えながらも銃を構えた。


「とりあえず、今は闘うしか無いわ。」

「はい。姫。」

 マリも鎌を構え、体制を前に傾ける。


 2人の脳内にはユキの言葉が染み付いていた。主の元に帰りたい。助けてくれと。


 それでも助ける手段もなく、闘うしかない。この町を失う訳にはいかなかった。ここを居場所にする存在がいる。ここでしか、生きていけない存在がいる。

「援護は任せたわ。」

「……はい、姫の命令通りに」


「「連携(リンク)」」




「これで準備は整いましたわ。邪魔者も来ないようにルシフェル様に協力して頂きました。」

「全て ヒロル様 の ために」

「おにいさん、おかえり!」

「ただいま。今日は、ゼリーを買ってきたんだ。食べるか?」

「うん!!」

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