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地平線の仲介者 〜死んだはずの僕が現実で転生を止める役目を受けました〜  作者: 大井 芽茜
現実世界でまた

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第4章 18話 銀髪の少女

ついに、校長との決着をつけた彩夢。あとは、休むだけだ。


一方、冥界で使い魔はマリが会議の合間に銀髪の少女を保護した。使い魔と同様クラウシャドと言われる存在は居場所を失い追われるしかない。


そんな彼女に居場所を提供すると使い魔は約束する。

「じゃあな、佳奈。」

「うん!」

 僕は、佳奈に手を振り別れを告げた。次第にふらついた足を無理やりに立て直す。

(流石に今日は疲れ……)


 喧嘩に教頭に校長の話し合い。ついでに寝不足。



 やっと明日は土日だ。2日潰してでも身体を休めよう。僕は人のいない路地に行きブレスレットを空に掲げた。


「ウィストリアさん、帰ります。」

 ポケットに入った眼鏡が動き出すと、空からの光が身体を包み込んだ。



 一方その頃〈冥界〉

「にいちゃ……ここ暗い、長い。」

「我慢してください。ここを歩いた方が安全なんです、平地ですし。でも、電波は悪いのでその時は言っていただければ。」

 使い魔は、白い獣を肩に乗せながら影の世界を歩いていた。



「で…んぱ?」

「人間が使うものです。分からないなら構いません。」

 使い魔はじっと横目で獣を見つめていた。


(それにしても、その獣の姿で話せるとは。技術は思ったより速く進んでいるようですね。)



 そんな事を考えながらも、首都アンシェルを抜け山や街を影を通して乗り越えていく。


「つきました。ここが貴方の新しい住処です。」

「広ーーい! あれ……」

 少女はマジマジと町を見つめると、不安そうな目で使い魔を見つめた。


「冥界の端であり異界にとって最初の砦となる町。大丈夫です、ここにいるのは訳ありの人間や獣ばかりですから」

 山に遮られ、僅かな光さえあたらない。少女の視界には弱り果てた人間が細々と生きているように見えていた。


「な……か怖い。」

「最初はそうかもしれませんが、皆さん優しい人ばかりです。痛みを酷く知っている人間しかこの町にはいません。」

 白い獣は、銀髪の少女の姿になり使い魔の腕に張り付くようについて行く。



「「おおおおおーー!!! 姫さんの使い魔さんが帰って来たぞ!!」」

「「ピーにぃちゃん!!」」


「お久しぶりです。ただいま戻りました。」

「使い魔さま聞いてくれよ! 姫さんのおかげで野菜がこんなに出来たんだ!!」

「ネットも使えるし……」

 使い魔が門をくぐった途端、歓声が響き人や獣が辺り一面から群がってくる。少女はびっくりして背中に隠れ込んだ。


「姫はまだですか?」

「もう帰ってきてるぞ? 前みたいに、ハカセの助手達と呪霊退治をしてくれているよ。」

「本当に助かるわ〜。」

 少女は、不思議そうに獣の子を気配を消して不思議そうに眺めていた。

(ほとんどの子………欠けてる。ソルスの色…髪…)


「わかりました。色々とありがとうございます。」

 使い魔は、軽くお辞儀をしながら人混みを歩いていく。


「コッ…キュ」

(思ったより…いい所。)


「ピシャ、キシャアピィアル」

(良かったです。ほら、挨拶してください。)

 少女は気配を出すと、使い魔の横にしがみつきながらに会釈した。


「おっ君は新入りだね!」

「……っ?」



「ようこそ!! ここは寂れた町!」

「だけど、今いっちばん勢いのある町!!!!その名もサクリファートへ!」

「歓迎するよ!!」


「っよろ…しく…」

 少女は恥ずかしそうに使い魔の手を握りしめながら手を振った。



 ――


「全く!! なんでこんなにうじょうじょといるのよ!!??」

「毎日、実践がてらにはっ退治をしているんです。ですが、減らなくて!」

 マリは、住民の言った通りに森林が生い茂る場所で必死に鎌を振るっていた。


「あー!!! もう! めんどい!! アニマ、アニムス!」

「主ありての我が力……月を散らし空高き蒼となれ、我がソルスを解放せよ!」

「「みんな、つづけーー!!!」」

 マリに続くように無数の魔法が森全体に大きく飛び散った。黒いモヤを固めたような存在は甲高い悲鳴を出しながら一瞬にして弾け飛んでいく。


『キキキャアアアアアア!!』

「ありがとう、2人共。ちびっ子達大丈夫?」

「うん!」


 マリの鎌に宿った炎は消え、隣の女性も元の姿に戻るとマリや子ども達をみて微笑んだ。


「やっと、終わったーー。相変わらず強いわねレフトバ。それに皆もありがとう。」

「うん!!」



 ――その時


 ガサッ

「次は誰よ!? 」

 マリは黒い塊を踏み散らしながら音の方へ鎌を向けた。


「――っ!?」

「あっ…の……にぃちゃ…ここって……」




「子獣型での会話。魔法をある程度は本能的に使えるねぇ。」

「ハカセはどう考えますか?」

 埃が巻う中で使い魔は立っていた。使い魔と向き合うハカセと呼ばれる男はタバコをふかして唸りながら、本棚から1冊の本を取る。


「前に保護した奴に比べれば、確実に成功は近づいてきている。このままいけばぁ、成功作が生まれるのも時間の問題ってところか。」

「…………そうですね。」


「後で姫さんと話せばいい。それより、先に見るのはお前さんだ。どうせ時間が無いんだろう? 速く横になれ。」

 使い魔はすぐに服を脱ぎ錆び付いたベッドに倒れ込んだ。身体は、クロクにやられた跡が赤く滲み、1箇所には黒く身体を蝕んでいた。



「その様子を見るに酷くやられたみたいだな。誰にやられた?」

「言うなれば……頭がおかしい変な人。天界で関わってはいけなさそうな方です。あの人は、話して探ろうにも、狙いも組織も何も全く分かりませんでした。」

 使い魔はこれ以上思い出したくもないと首を振るのを、ハカセは苦笑いしながらタバコを吸殻に押し付ける。


「ただ、彼は私の事を見抜いていました。この身体の事を一目で当てるなんて」

「そりゃ大変だったな。ま……できる限りはしてやる。お前さんを作っちまったのは俺だしな。」

「お願いします。」

「最近、アタシの出番ないじゃない!!?? どうしてくれるのよこれ!!」

「仕方ないだろ……変に区切ると展開がおかしくなるんだし。入る隙間無かっただろ。」


「ふざけないで! アタシはヒロイッ」

「言ってない。」



「…………」

「…………」


ということで、次回も冥界編をお届けします。

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