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地平線の仲介者 〜死んだはずの僕が現実で転生を止める役目を受けました〜  作者: 大井 芽茜
現実世界でまた

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第4章 16話 10へ

佳奈から、いじめを解決してほしいと頼まれ、僕は、女友達として学校に乗り込んだ。

証拠やクラスをつれ生徒指導室で話し合いが始まる。


「だから、全部スイがやったんだって」


「は? そんなわけないって言っているでしょ!?」

「そんなことより、私のスマホっ……」



「すいません、ここの場所分からなくて迷っちゃいました」

 ふむ。思った通り仲間通しで言い争いをしている。佳奈と打破はピリピリした空気のなかに震え、僕を見ると胸を撫で下ろしていた。


「仕方ないわ。転校生だし。」

 厳しそうな表情のポニーテールをしている女の先生は、そう言うと僕を座らした。


 佳奈に目線を送り首を傾げると、耳元に口を近づけた。

(教頭先生の中で一番偉い人……)

(なるほど)


「そうだな、私はここの運動部を取り締まっている立場の者だ。あと教頭」

 運動部の厳しい先生って大体耳がいいよな。


「よく分かりました。では、早速本題に入りましょうか」

 僕としては権力があるし、しっかりしているなら文句はない。


「あぁ、さっきから(らち)が明かなくてな。君は、先生達からの評判もいいし信頼出来そうだ」


「ちょっと、待ってよ。先生は俺の顧問なんだか」

「関係ない。君に頼みたい。」

 ここまで短時間で信用を得るは大変だったが、この世は先生が主権を握っているからな媚びを売るしかない。


 まぁ、こんな問題児しかいないクラスだし……簡単に注目と信頼を得られたが。信頼さえあれば、何か事件があった時に先生の主観が追い風になる。


 犯人探しも先入観で外してしまう。本当は、その子が犯人で~というのもよくある話。そのくらい、先生という立場を活かすのは鍵だ。



「今回の件についてですが、大事(おおごと)にしてしまった事は謝罪します。しかし、こういう事をするしか無かった事を分かってほしいんです。私達には、暴力や悪口をいわれても、助けてくれるような環境もなく……唯一の手段が後輩や先輩を巻き込む事でした」


「そんな事をしなくても、先生が…」

「その事なら、自分より前から被害にあっている佳奈の言葉を聞いてあげてください。」

 教頭の話を遮るように僕は言葉を続け、佳奈にバトンを渡す。僕は、とりあえず佳奈と打破に近づき様子を見る。


「わっ私の担任は……軽くあしらうだけでした。不登校になっても、電話で話す内容は、我慢しろ。こんなことで情けない。不登校になるとクラスや自分が困ると……」

「俺は、周りの先生に相談しようとしたけど、問題児のクラスだから仕方ないとかいわれました。」


 佳奈と打破はそう教頭に吐いた。数人で固まる事で安心して言いやすい。聞く側としては共通点を見つける事で自然に説明がまとまっていく。例えば、今回だと先生に相談しても聞く耳を持たないどころか、彼女達を苦しめる発言をするという事かな。


「いちおう証拠もあります。あと、忘れてはいけないのが先生だけでなく、生徒達も問題だという事です。彼ら「全員」対象です」

「は? 俺ちげーし!」

「じゃあ服を見てみればいいんじゃないかな? あぁ、他の人も」

 僕は、彼らの濡れているシャツを指さした。


「私は暴力を振るわれそうになったので自己防衛を行いました。先にしてきたのは彼です。見ていた人にでも聞いてみてください。」

 僕は、そいつの方へ行きシャツを引っ張った。


「おぃやめっ!!」

「なんだその血は!? そこの女子も見せてみろ!」

「私の靴っ……!」


 シャツ、制服や靴……よく見てみると赤いシミがあった。


「それは全部、私の血です。ほら」

 僕は、カッターの切り傷を圧迫していた包帯を外してみせる。まだ血は固まりきらず、握りしめると血が流れていた。


「くそっ……」

 ぬれている所を見ると、消そうとしていたらしいが残念だったな。家庭科の授業で言たんだし、ちゃんと「勉強」していれば消し方も分かったのにな。


「それが1つめです」

 僕は周りに気にする事なく話を続けた。


「2つめは、クラスについて」

 僕は廊下で待っているクラスのみんなを呼び中にいれた。もし、逃げたら彼らと同じグルにすると言ってるしにげないだろう。逃げたら追いかけるし。


 あいにく、まだ7時間目だから部活で抜けるとかの言い訳も出来ないだろう。

「わざわざ、全員もいらないのでは?」

「いえ、こういうのは皆で考えるべきだと思うので。」


 それがクラスというものだ。全体が意識しない限り前へは進めない。


 あぁ少し脱線するが、皆で話合うのは賛成だけど、皆でなぜこの子がいじめられたか考えましょう! とか皆で協力してこの子と仲良くしてあげましょうとか……ああいう頭がおかしいのは絶対に相容れない。


 被害者の話合い? 違う。やるべきは加害者、および自分達についての話し合いだ。



「先生は逃げたみたいなんで、あとで強く言っておいてください」

 僕は、スマホを渡し保健室で担任の声が入った録音を聞かせた。


「なっ…」

 あの先生は、問題や問題児をほっとけば事が小さくなると思っているんだろう。あまりにも先生とかけ離れているな。



「で、次の写真です。」

 僕は、教室に行った際の落書きされた机の写真を見せた。


「彼らがいない時もこのような事が起こりました。撮った時刻と黒板の日付を見ていただければ。」

「確かにこれはひどいな……」

 この先生は良い先生らしく同情をこめて頷いている。まあ、運動部のまとめ役を30代くらいの先生が請け負うほどだし、元アスリートか何かの優秀なスポーツ経験者だろう。


 人間力は、競技力……と教えられてきたし、この人は信頼して良いような気がする。



「これらを踏まえて私の提案は1つ。加害者達の退学です。」

「「!!!!!?????」」


「流石にそれはやりすぎじゃないか?」

 その先生も少し引き気味で止めてくる。


「そうだ!! こんなこと間違っている!!」

「そうだよ、ふざけんな!」

 僕はワーワーと響く教室の音が次第に小さくなるまで待った。次にくるべきは


「こんなことで一々騒ぎすぎだろ……」

 ……あたりだな。


「こんな事?」

「ただの遊びじゃないか!」


「遊びなら何したか言ってみろよ。本当に遊びだったら言えるだろ?」

「それは…」

 いじめっ子って「遊び」っていうよな、都合悪くなったら。



「私の大事な人から貰った道具を壊したり、学校から貰った机を汚したり、不登校にさせるまで追い込んだ事が遊び……んな訳ねぇだろ。物壊して、好き勝手して周りに迷惑かけて、許されるのはガキくらいだぞ」

 僕はそう言うと、立ち上がりため息をついた。



「クラスの人間だって、皆で笑っていればいいって話じゃない。周りに流されずに、1人で冷静に考えてみろ。おかしいと思ったら止めるべきだろ。」

 周りに合わせてバカにした人間も加害者になる。イジメの定義が身体的苦痛ならクラスも空間もそうだ。


 普通の人間が見たらおかしいと思うのが当たり前だ。だが、こんな環境になってしまったから当たり前が歪んでいる。


 一人一人のよそ見から始まって今の状況になっている。なら、僕という存在がクラスを通常に戻れるように仕向けるまで。


「教頭。」

「なっ、なんだろうか…」

 色々と尖り口調の僕を、教頭は困惑したような顔をして聞き返す。


「校長を出してください。ここでとどめて良い話ではないかと。」

「あぁ、それは…」


 その時、ガラッと奥の扉が開く音がした。

「聞いているよ全部。」

 そこには、40歳くらいの女の人がいた。

「ちなみに、血液はたんぱく質が酸化する事にシミになりやすく、洗濯でも落ちないから素早く洗う事が大事だ。そのときは、ぬるま湯ではなく、三十度以下が必須だと言われている。彼らはぬるま湯で洗ったんだろう」


「なるほど。じゃあ師匠。最近、とある人気アニメにいる人殺しが服についた血を水で洗っているシーン……あれは正解なんですね。」

「そういう事だ。」

(どんなアニメがだろう?)

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