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地平線の仲介者 〜死んだはずの僕が現実で転生を止める役目を受けました〜  作者: 大井 芽茜
現実世界でまた

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第4章 8話 問題だらけの教室

佳奈の頼みがあり、いじめの問題と共に普通に通えるようになりたいと願いを聞いた。

「えーマジ!?」

「なんかさーーめっちゃ懐かしいやついね? 」

「えー覚えてないや! 誰あいつ!!」

 キャキャキャと教室に不協和音が流れ、チャイムが鳴った。


「始まっから席につけ」

 先生はドアを開けて、静かにするように呼びかけている。


「あれ、センコーいんじゃん!?」

「ずっといなかったのにー」

 先生の呼びかけを聞くことなく次第に声はまた大きくなっていく。全く賑やかだな。この教室は。猿かよ。



「今日は、転校生が来たからな。」

「えーこんな教室に? ちょっと何してるんですかぁ」

「いっつも外してるのにーー。あれ、もしかして、訳ありっすか?」

 先生は、首を振りため息をつきながら僕に目線を送っている。さっきから、注目されていた佳奈は話題が逸れたことに胸を撫で下ろし、ずっと窓を見つめていた。



「なんか、知り合いがいるらしくてな。どうしてもって事だ。入れ。」


「はい! えーと、信田 零と申します。よろしくおねがいしまーす!」

 僕は挨拶をした後に、真っ白な黒板にチョークで殴り書く。



「ちょっー私が消す係なんですけど」


「私が消すから!気にしないで。」

 僕は軽くあしらいながら話を続ける。


「親の転勤で暫く住むことになりました。工芸方面の学校でいたのでわからない事もありますが、仲良くしてください。 」

「君の席はあそこ。佳奈さんと仲良いみたいだし。」


「はーい。」

(なんだ工芸って?)

(あれじゃない? ほらーボンドとかでーぺたぺたって、するやつ)

(子供じゃん)



 勝手に解釈され馬鹿にされているがまぁいいか。ちなみに、コラージュという貼り付けて作品を作る技があるが難しいんだぞ?

 僕は少し、眉をひそめながらに佳奈の前に座った。


「あっ……」

「ん。」

 佳奈にひっそり手をあげ挨拶をして前を向く。



「はい。転校生来たからなー? いつもサボっているが、授業を見せないと立場ってもんだなー。」

 それを転校生の前で言うな。僕は突っ込みながら慣れないスカートを伸ばしていた。


「えーだる!」

「まーーこんくなるっしょ。」

「あ、そうだ。お前さー、こーげいの授業してくれよー」



「また今度ね」

(やる訳ないだろ。)

 話をするのが遅くなったが、これまでの経緯を簡単に説明しよう。奈美の件と同じように先生を洗脳した。本や色々はウィストリアに頼み遠くから送ってもらった。以上だ。



 時間的な問題ですぐに乗り込んでみたが、考えるよりは慣れた方がいいだろう。さて、どこから手をつけようか。


 金髪なんて当たり前。お菓子は散らかってるし、煙の匂いもして居心地が悪すぎる。が、今は佳奈の為だ。我慢するしかない。


 陽キャっぽいのが多いし害があるのと無いのを見極める。害があれば対策するし。無いなら無いで居場所の空気を作る。で佳奈が1人でも大丈夫なように仕向けたい。



 しかし、今という空気が荒れる中に佳奈を1人には出来ない。


「あのさっ、零ちゃん! いっ、一緒に移動教室行こ!」

「うん、行こ。」

 前とは違いウィストリアがいない。だから、二手に別れられないし交流にもいけない。


『やっぱり暫くは一緒にいてほしい。』

『僕が何かすれば飛び火するかもしれないぞ?』


『覚悟は出来てます! でも……心細いから。』

 と、なったがこのままにしていると、先にあるのは依存だけになりそうだな。佳奈は僕しか見ないようにしているし。


 せめて、あと一人。佳奈が言っていた子を取り込むしかない。この教室が異質すぎるし常に周りをみていないと。


「えー、あの2人。移動教室行ってんじゃん?」

「真面目だねーー。」

「あの地味なやつにくっつかれて、可哀想ーーだね。 っていうか、あの子もあんま好きじゃない。」


 前髪をたらした女とピアスをつけてヘラヘラした男。そして、さっきの黒板の子。静かな廊下に声が響く。


「……どうしたの?」

 佳奈には、聞こえてないみたいだ。



「いや、考え事だ。」

 1時間目は家庭科だ。チャイムが着く前に机に荷物を置き周りを観察する。刺繍なら出来るんだが。


 「……来ないな。行くか」

 チャイムが鳴っても、ずーっと来ないから呼びに言ったら優雅に茶を飲んでいた。


 「あれ、この時間に来るってことはまさかあのクラス?」

 もはや学級崩壊のレベルじゃないだろ。これ。

 教育のシステムがもう無茶苦茶に崩壊している。


「駄目ですか?」

「いえ、じゃあ始めましょう。」


「で、石鹸を使えば応急処置になります。……で」

 僕達は静かにペンを滑らせるが、先生はそれがありえないという顔を隠せきれなかった。


「じゃあ佳奈さん。ちなみに」

 おばあさんは佳奈を流し目で見下ろす。


「今言った事以外に、のかない汚れとか分かる? まぁ分からないと思うけど。」

「えーと」

 佳奈は困った顔で視線を僕に向ける。凄く引っかかる言い回しだな。

 ここは逆に……



「漆とかですか?」

「うる…し?」

 おばあさんは意味が分からないような顔をする。


「伝統工芸にある漆って石鹸でのかないんですよね。放っておくとのかないですし、ウルシオールの成分もあってそこからかぶれへの原因になるので厄介なんです。えーと、石鹸はローヤルを使うんですけど知ってますか?」


「っわ、分かりました。もう充分です。」

 おばあさんは目をグルグルさせながら僕を止めた。つい、喋りすぎたな。その後、もう懲り懲りだ。という顔と謎の関心を持たれこの授業は終わった。



「失礼します。」

 これで、変に突っかかる事は無いだろう。次来たら返り討ちにするだけだ。専門教科書以外の事は分からんからごり押す。


「凄いね!」

「本当は血液が正解だったみたいだし、専門の知識があっただけだ。」

 そういうと、佳奈は、「助かった。」という顔で軽く頭を下げた。


「経験は武器になる。というより、武器にしていかないとな」

 まぁ今みたいに変な使い方はしたくないがな。すると、佳奈は、考え込むように自分のノートを確認し始めた。



「零ちゃんはアニメ画とか描ける?」

「無理かな。人の絵はあまり描けないから。」

「じゃあ、これが私の武器かな?」

 佳奈は恥ずかしそうにノートを見せてくれた。細身の少女が裸足で自然を歩いている。このタッチはアニメ画よりだな。


「凄い。流石に敵わないな。」

「ツイトラにあげてるんだよ! 見る?」

 そして、携帯を借りツイトラを覗きながら教室に戻ってきた。


 ガチャ

「あれ? ……っ。」

 佳奈はドアが閉まっている事に気づいた。窓からはニヤニヤとしている生徒がいる。



「零っ…あれ?」

 カチ


「はい。鍵開けたから。」

 僕は窓からどこが空いているのかを見て、隣の教室から入りベランダ側から入り鍵を開ける。


「……ありがとう。」

 僕が辺りを見回すと、つまらなそうな顔をしてダランとしていた。本当に油断も隙もない。色々と手は打っておかないとな。



「ありがとうございました。」

「……いえ、良かったです。」

 もし何か重なってきてもいいように、隣の部屋から合鍵を借りていたが使わなかったな。


 誰がやったかは何となく分かるが知らないふりをしておこう。僕は、したであろう人を見つめると、顔をそらされてしまった。もう笑ってるやつ全員主犯でもいいんだが。



 休み時間

 佳奈は僕に話す代わりに紙切れを渡してくれた。どうやら例の子は保健室にいるらしい。


「本当、あの零ってやつ何なの? 邪魔しないで欲しいんだけどなんかバレてるし……」

「あいつから潰そうぜ。アイツの苦い顔みたら楽しいだろーな。」

「こそこそとしてやろーよ。あっちだと思わせてーってやつ。」



 ポチポチ…カチ、ポチポチ。

 残念だが、ぜーんぶ聞こえているんだよな。

「あのー零ちゃん、その眼鏡どうしたの?」

「いや、ちょっと借り物だから調整しててな。」

 これで標的は僕に向いた。受けて立ってやろうじゃないか。

「ウィストリアと話して声がかわるのと色々と機能つけたから。」

「ありがとうマリ。助かるよ。」

「眼鏡が割れたら地声で頑張ってね。あと……もう少し女っぽく!」

「わかった。地声は無理やりでも高くするから大丈夫だ。」


「あれでしょ?喉抑えるやつ!」

「無理無理無理、病気になるぞ……?」




この何日かローヤルという洗剤の名前を確認していました。簡単に言うとピンクのジェルみたいなやつですね。歯ブラシで叩くとある程度のきます。のくというのは方言かもしれませんが、汚れが落ちるという意味です

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