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地平線の仲介者 〜死んだはずの僕が現実で転生を止める役目を受けました〜  作者: 大井 芽茜
現実世界でまた

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第4章 6話 罪悪感と決意

「大丈夫ですか〜?」

 暫くの間、酷い料理の件といちよう死にかけていたので体調も見てもらった方がいいと感じ、パナヒルに見てもらっていた。


「はい。もう大丈夫です。」

 僕は頷いて立ち上がる。少し肺に異常があったようだが、光る水をもらい治療をしてくれたようだ。


「胃の方は〜? うん〜。もう大丈夫ですね。」

 パナヒルはそう言うとウィストリア達の様子も見にいった。マリと使い魔以外はベッドで倒れ込んでいたが、もう調子が良さそうだ。



 ――少し前

「ごめん! 「今回は」変に作りすぎたみたい! あー佳奈は私が見るから安心して!」

「……あ、ああ。」

(もう食べたくない。)


「使い魔さん、大丈夫ですか?あんなに食べてましたけど?」

「あーあれですかー。おいしいあまいさいこー、ははは。」


 小声で聞くと、目の光が無い振り子のように何度も首を振った。

(この人も軽く狂ってるな。)


 まあ、それから数日経ち皆も元気になっている。もうバレンタインデーは天空にとっては悪魔の日になるのかもしれないが。



「すまない。また世話になったな。」

「いえ〜全然大丈夫ですよ。これが私の役目ですから。また来てください。」

 僕達がお礼を言っていると、マリと使い魔が表情を暗ませながら扉を開けた。



「大変よ!!!!」


「確かに大変だった。」

 僕がそう言うと皆が一斉に頷いた。



「違うわよ!! 前に捕まえた人間が居ないの!」

「――!?」

 確かあの捕まえた二人組だ。時間はそんなに経っていないはずなのに。


「見てきましょう!」

 すぐにスプラウトは走りだし後を着いていく。鍵はしっかり閉めていたはずだ。なら誰かが助けたとか?

(今は壊し方を見て考えるしかないか。)


 きっと派手にぶっ壊れて

「あれ?」


 傷1つない檻が綺麗に開いている。


「鍵穴が開いているみたいですね。」

 使い魔は暗い鍵穴を覗きながら呟いた。


「色々調べたけど、破損部分は無いし魔力の痕跡も無いわ。」

「鍵は私が持っている。倒れている間に取った訳では……無いようだな。」

 ウィストリアはマリ達を少し疑いかけたが、鍵を見て首を横に振る。



「じゃあ、どうやって開けたんですかね?」

 そう考えこんでいると弥生の足元に小さい影が転がった。角に鹿のような見た目。うんカクラジシだな。


 何故かボロボロの姿になりながら弥生の肩に登る。

「しくじりました。ウィストリアあれを貸してください」


 カクラジシはウィストリアから人間の情報が載った魔法書を借り開く。個人情報の扱いが悪い気がするが、そこは気にしないでおこう。


「やはり」

「どうしたんですか? そんな!?」

 いつの間にか魔法書の最初の方のページが黒く蝕まれていた。


「う、嘘です。こんなの!!」

 スプラウトはウィストリアに寄り添い、怯えながらに泣いていた。


「………」

 ウィストリアは手を震わせながらページを閉じる。


「檻を開けた者の匂いを追っていましたが、生憎死呪霊にやられました。数は少しづつふえています。」

 弥生からカクラジシの事は聞いたが、神獣がこんなボロボロにやられるとは。


「……彩夢」

「はい。」

 ウィストリアは決心したように僕を見た。


「彩夢はいつも通り現実に行ってくれ。何かあればいつも通りに対処する。」

「しかし」

 今はそれどころではない。


 僕の気を察したようにウィストリアは小さく口を開く。

「1つ仮説が出来たんだ。ちゃんと分かってから知らせようとしたんだが、死んだ人間は死呪霊として利用されている。」

「……」

 死呪霊が人間?


 「想いの塊じゃ」

 「昔は1年に1回見るくらいだった。しかし、最近は明らかにおかしいんだ。それに、人の声を出すものを見たという報告もある。


「じ、じゃあ!僕がこれまで倒したのは」

「中には人間がいたかもしれない。」

 ウィストリアは淡々と答えた。


「僕は」

 人だと思わなかった。まるでゲームのような感覚に浸って。想いの塊で感情がないのだと。しかし、実際は人で……


「彩夢は利用された人間を解放した。それだけだ。気に悔やむ気持ちは分かる。私も何人も倒していたし気にするなと言える立場は無い」

 スプラウトを壁側に寝かせ僕を見る。他の人も静かに聞いていた。



「責任も悔やみも全て私が受ける。彩夢、死呪霊を見つけた時はこれまでと同じように倒して欲しい。」

「……っ」

 きっと次に会った時に何も出来なくなるとウィストリアは考えて隠していたんだろう。



「人間は誰かを殺す為に利用される為に生まれた訳では無い。」

 ウィストリアはそっとクロクから貰った手紙を渡してくれた。


「これは昨日受け取った手紙だ。彩夢にとな。」


『きっとウィストリアに仮説は聞いたかな?』

 これは間違えなくクロクの文字だ。


『ざっくり言おう。君に僕達、天界がしたことは悪い事じゃない。無理やりねじ曲げられて人間に取り付く。取り付かれた人間は相手を追い込んだり自らを殺す。まさに負の連鎖だ。』

 僕がこれまで対応した人は確かにほとんどが死呪霊によるものだ。



 ならやっぱり弥生は、死呪霊と関係が?

「どうしたの?」

「いや」

『死呪霊を解放し楽にする。あくまで主観的にはなるけど今はそれしかない。アラストリアも君の元に向かってるから、どうかこれまで通りにしてほしい。後は僕がやるから。』



 クロクの文はここで終わっている。

「今、神界の方で解放された人間の居場所を作っている。私達はそれに協力しないといけないんだ。今頼めるのは彩夢しか。」

 ウィストリアは申し訳無さそうに俯いた。このまま放って置く訳にはいかない。人を殺す訳じゃない。


「彩夢くん達がやった事が正解だったと絶対に証明しますから!」

 スプラウトは起き上がり僕に訴える。


「あと、檻の場所を変えた方がいいから新しく作ろうか」

「確かにそうですね。中心である城の中にあると町にも被害がいくかもしれません。少し離れたところに置きましょう。」

 2人はまだまだやる事が多そうだ。



「……どうすんの?」

 マリ達は僕の言葉を待っていた。佳奈の元に行けば、また戦う事になるかもしれない。皆が庇ってくれても結局は誰かがやることだ。自分自身の意志で失った人の罪を背負いながらやらなければならない。


「分かりました。責任を持って向き合います。」

 「ありがとう彩夢。」

 僕は忙しそうに話す2人と別れた。


「アンタも大変ね。」

「まぁ仕方ない。」

 マリや弥生達とウィストリアの家に向かっていく。緊急時に呼ばれたら行くと変なスイッチを持たされたので机に置いた。



「なんかおしたくなる」

「今は我慢してください」

 使い魔は弥生を抑えていた。あっそういえば……



「なぁマリ。変なことを聞いていいか?」

「何かしら?」

 マリはパッチリと目を開き首を捻る。


 佳奈との約束があるし、こういうのはマリに頼んだ方がいい気がする。


「僕を可愛くしてほしい。と言ったらやってくれるか?」

「は?」

「ちなみに…あの方はめっちゃえらーい人なんですよ?」

「誰のことですか?」


「クロク様です。」

「そんなにですか?」


「はい、すごーーーーくえらいです!」

(知らなかったな…)

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