表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地平線の仲介者 〜死んだはずの僕が現実で転生を止める役目を受けました〜  作者: 大井 芽茜
現実世界でまた

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/157

第4章 4話 忍び寄る異変

転生前者の佳奈(かな)を説得し、協力することになった。

「じゃあ明日改めてお邪魔するよ。今日は速く帰った方がいい。」


「……。分かりました!」

 佳奈は少し考えながらも頷いた。雨も酷いし時間も大分経っているはずだ。おそらく親も心配しているはずだろう。


「じゃあこれ貸すわ。」

 マリは少し大きい傘を渡してくれた。少し濡れているが十分だな。



「送ってあげなさい。濡れているのは許してよね」

「別に構わない。ありがとう」

 僕は傘を受け取り佳奈と使い魔の近くに行った。


「準備は出来ましたか?では地上に戻しますね」

「佳奈、気をつけて帰りなさい」

 マリは優しく佳奈に言うと、使い魔はかかとを地面にコンコンと叩きつけた。


「彩夢すぐに傘を開いて」

「え…?」




 ――!!!

 目を覚ますと、ザーーーと滝のような雨が一気に頭に被っていた。傘を急いで開き佳奈に寄り添う。


「帰ろうか。」

「うん。ありがとう…きゃ!」


 そう言った途端にまた足を踏み外した。僕の傘を持っている腕を必死に掴む。


「あ、あの!ごめんなさい!」

 佳奈は少し顔を赤らめながら顔を逸らした。


「別に。危ないから掴まってて。」

「…っうん。」


「明日は何時くらいに行けばいい?」

「引きこもってるからいつでも。」

 佳奈はボソボソと呟いた。制服なのは、きっと行きたいと何度も悩んでいたんだな。


「どこにあるんだ?」

「あともう少し。」

 結構歩いて30分くらいだろうか? 雨だし足場も悪いな。



「……ここ!」

 佳奈は、駅で足を止めると、お父さんらしき男の人が傘をさしていた。


「もう大丈夫です。ありがとうございました。」

「どういたしまして。って言っても何も出来てないけど。」


「いえ、そんな事無いです!」

 佳奈は手を振りお辞儀をすると男の人も礼をしていた。



「姫、行かなくて良かったんですか?」

 使い魔は暖炉の火を消しながらマリに問う。


「大丈夫よ。それに」

「ピーちゃんが心配なの。」

 マリは使い魔に泣きながら睨みをきかせる。



「あれを使わないで! お願いだから。」

「…………姫。」

 マリは赤い石を投げると、使い魔はその石を噛み砕いた。口から血を流しながら静かに俯く。


「あの、姫。1つご報告が。」




「計画は順調ですわね。」

「でも。あの奇妙な人間。危険。」

「大丈夫ですわ。ちゃんと隠してありますもの、見えるはずが」

 遠く離れたビルの屋上でまたあの2人が街を眺めていた。


「ピー! ピー!」

 その時、足元に血だらけのヒヨコが転がる。


「あらこの子、可哀想に」

「怪我?」


「ピ…」

「苦しいわよね? 大丈夫。さっさと死んで天空に行きま」



『ふざけるんじゃないわよ。』

「――っ!!」

 ガンッ

 投げられた鋭い刃物が、女の腕を切り裂いた。



「っ……!?」

「はぁーあ。このクソみたいな雨、アンタ達か。」

 2人の前にマリは微笑みながら姿を現した。鎌は宙を描き手元に戻っていく。


「誰なんですの!」

「敵?」


「んー? なんだと思う?」

 女の顔を伺うようにマリは首を傾げた。


「ピー!ピーー。ぴっ…ぴ!」

 ヒヨコはそれを怖がるように声を出し男の腕を冷たい頬で擦る。


「可哀想。」

「でしたら、この下品な輩は何とかしますから、そのヒヨコを助けてあげてくださいな。」


「うん。」

 男はヒヨコを掴み下へと逃げていった。



「誰が下品だって!?」

「――!!」

 バンッ

 マリは一瞬で距離を詰め顔面を蹴り飛ばす。



「アタシはしたくてしてるの。文句ある?」

 マリは胸元のチャックを上下に動かし見せつけた。



「胸を出すなんて女として終わってますわ! 卑猥で仕方ない!」

 女は姿勢を戻しながら氷の弓を作り、攻撃の姿勢をとるが、弓はすぐに水になる。


「なっ!」



「私はぁ、胸があるから仕方なーく出してるだけなんだけど。だって暑いじゃん?あっ貴方貧乳?」

 マリは女の元に駆け込むと、すぐに女の髪を掴み、鎌を首元に向ける。


「……この女っ!」

「あんまり人の趣味に首突っ込まない方でくれるかな。そんな事より自分を磨いた方がいいわよ?周りばっかケチつけてるとすーぐ歳が重なるもの」




「大丈夫。ここは安心。」

「ピー?」

「少し待って。あとで。楽にする。」

 男はヒヨコを路地裏に置くと背を向け上へ飛び上がろうとした。


「あれ?」

 足には黒い影がまとわりつき地面に引き寄せる。



「くっ!」


「そうですか。別に「殺してくれ」なんて頼んだ覚えは無いですけどね。」

「――!」


 男が振り向くとヒヨコは男の姿になり銃を向けていた。


「本当に人間の考え方は気味が悪いです。」

「 水、助けて。」

 雨は1箇所に集まると水の塊から龍が回転する水流のように姿をだした。


「殺せ!」

 ギャアアアア……バンッ


「流石に弱すぎませんか?」

 1発の銃弾は勢いづいた龍を一瞬で地面にひれ伏させる。


「嘘…」

 ガンッ

 使い魔は飛びかかりながら、銃で男を殴り付け気絶させた。その途端雨はすぐに止んでいく。



「やはりですか。……姫、捕らえました。」

「アンタの言う通り魔力を使うまでも無いわね。」

 使い魔は背中に乗せた男を女の元へ置いた。



「さっきコイツらが言ってた事の意味は何だろうね」

「殺して天空に連れていく。でしたね。」

 使い魔はつま先を地面に叩きつけると、2人は地面から黒い影が伸び埋まっていく。


「ひとまず天空に聞いてみましょ」

「はい。……では彩夢くんを迎えに行きましょう」




 ――天空

「適当に捕まえたんだけど、いらないなら冥界に送ってあげるかピーちゃんが食べるけど?」

 マリと使い魔は下から人間を出てきた。それも2人。なんか、それを食べるとか言ってるんだが。



「これは!?」

 ウィストリアは気絶した2人をまじまじと見つめている。


「どうかしたんですか?」

「あぁ」


「おにいさーん!!たいへんだよ!!」

 弥生は僕の袖を引っ張った。


「どうしたんだ?」

「かわにおぼれてるひとがいたの!さんにんも!」


 3人!?

「助けたのか?」

「うん!カクラジシが!」


 弥生が指さす方でカクラジシが日向ぼっこをしていた。


「溺れた原因は?」

「なんか足を取られたみたい。」

 足を取られた。


「とりあえず、1人は問題が少しあるのでそれを解決しようかと。」

 カクラジシは毛並みを整えながら答えてくれた。



「分かりました、お願いします。」

 ウィストリアは唸りながら皆の中心に立った。


「これを持ってくれ。」

 ウィストリアはレンズのような物を皆に手渡す。


「すまない。時間が無くてレンズのみだ。魔法式反射用で護身、連絡も取れるようにしている。これを持っておいてくたら何かあっても対処しやすい」


「で何なの? あのサイコ2人組は」

「実は天空で預かっていたはずの死んだ人間だ」


「―!!」

「―!!!」


「ずっと行方不明だったんだ。」

 ウィストリアが手を上げると分厚い本が飛んできた。


「確か、天空と言ったんだな?」

「はい。」

 使い魔は首を縦に振る。




「分かった。色々と調べてみるとしよう。」

「知ってますか? 川で溺れた場合、女性の方が蘇生の確率が高いんですよ。」

雨で送り届ける途中


「そうなのか?」

「うーん。これは一説ですが、男はすぐに諦めてしまうとか」


「なるほど…」

「なので、心配したんですよ。すぐ諦めそうな顔だし。」

(酷くない?)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ