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地平線の仲介者 〜死んだはずの僕が現実で転生を止める役目を受けました〜  作者: 大井 芽茜
第三章 精霊界徘徊編!

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第3章 年の代わり

精霊界から天空に、新しい仲間をつれて帰ってきた。


帰ってくると、スプラウトは桜を作ったらしく、そこでケーキを食べて倒れていたはずのウィストリアに会いに行く。


すると…ウィストリアは元気になっていた。


(少し時期がずれます…!)

「じゃあ皆の所に行くが、その前に少し付き合ってくれ。」

「はい!」

 ウィストリアはスプラウトを引きずりながら歩いていくので、僕もついて行った。



「うわあああん! ウィストリアさあああん!」

「分かったから離れてくれ。痛いんだが」

 スプラウトは腹部に当たらないように首に手を回していたが、腰が腹部に当たっているようだ。


「ああああああああすみません!」

 すると、スプラウトはパッと手を離し僕の後ろまで下がりペコペコする。


「怪我は大丈夫ですか?」

「まぁ…少し痛むくらいだ。なに、暫く安静にさえいればいい。」

 ウィストリアは腹部を軽く撫でると元気そうに笑っていた。

 少し、顔をひきつっているが安心させようとしているように感じる。



「どうした?」

「いえ、なんでもないです。」

 ウィストはニコニコしているが、何というか怒りというか殺気を感じる。色々と心当たりはあるけど。足を止めると、前にきた小屋があった。スプラウトについて行った時は気づかなかったが、そこら辺より立派で大きい建物だ。



「そういえば、案内していませんでしたね!」

「そうか。 ここはホスキュタルだ。治療だけでなく世話とか道具の完備もしている。何かあったら気軽に使ってくれ。」

「へぇ」

 簡単に言うと病院みたいなものだろうか。



「他にも役割はあるが彩夢にはこのくらいで大丈夫かな。」

「そうですね。」

 ウィストリアは扉を開けて「パナヒルはいるか?」と声をあげていた。


「はぁ〜い、どうしましたか?」

 僕の後ろから、緑の三つ編みをした女の人がニョキっと顔を出した。


「――っ?」

「あぁ。そこにいたのか。」

 僕の驚いた声にウィストリアは反応する。彼女の手にはカゴを持っており、見た事の無い実が沢山入っていた。


「あっ〜、君は前に会いましたね。 私はパナヒルと申します〜。」

 ほんわかした顔に声。ずっと聞いていたら眠くなりそうだ。


「僕は彩夢です。よろしくお願いします。」

「はい〜、あっこれどうぞ〜。」

 カゴから1つ木の実を取り出し僕に渡してくれた。オレンジ色で小さいぶどうみたいな感じだな。


「これは粒の実ですね! プチプチしてて美味しいんですよ。」

「食べてみてくれ。」

 そう言われ、1粒ちぎって食べてみる。



「ん美味しい!」

 少し酸っぱく甘い。そして、つぶつぶした食感がある。

 羨ましそうに見ていたので……ウィストリア達にもおすそ分けした。


「そういえば綺麗な花を作ったんです。是非来ませんか?」

「まぁ〜! 是非見に行きたいです〜。」

 という事で、僕達はスプラウトについて行った。



「彩夢、これまでの事を教えてくれないか? どんな事をしたか興味がある。」

「勿論!簡単にはなりますけど」

 僕は、精霊界に連れていかれた事。クロクに会った事。あとは、精霊、純霊達に死呪霊について色々語っていた。


 途中、「クロク」と言葉を出した瞬間、3人は顔を見合わせて凍りついていたが

「あっこれ。精霊達からです。」

 僕は手に持っていた漆芸品をスプラウトに渡した。



「とっても綺麗ですね!」

「スプラウトさんに、感謝してましたよ。あと、申し訳無かったと」

 精霊達の気持ちをスプラウトに話すと、涙ぐみながら頷いていた。

「あっ…あの時の! 皆元気なんですねぇ…うっう」

 スプラウトは漆芸品を手に取りながら堪えきれず、泣いていた。


「あの時は大変だったな。何日寝てなかったか。」

 ウィストリアも大変だったと頭を抱えていた。



「ちょっと待ってください〜、これ」

 パナヒルは漆芸品に紛れ込んだ紙を指さした。


 おそらく、クロクが入れていたやつだな。『天空へ』と書かれていた。

 ウィストリアは恐る恐る紙を開くと、動きが止まり固まっている。

「どうしましたか?」


「いやっこっ、これは後にしよう。」

「そっそそそそそうですね!…はい!」

「……」

 パナヒルは魂が抜けたようにショックを受けていた。僕が見ようとすると、ウィストリアはスっとポケットにいれる。

 


「あっああー!そういえば、ウィストリアさん。彩夢くんが仲間を連れてきたんですよ! 」


「そっそうか」

「マリって女の子と使い魔の可愛いヒヨコさんですよ!」

 スプラウトは話題を大きく変えて誤魔化した。そういえば、まだ言ってなかったな。


「そうか!」

 桜が近ずいていき、パナヒルは感動しながら歩を速める。ウィストリアは関心していたが、不意に眉をしかめた。



「ちょっとまて、なんて言ったか?」

「だーから、マリさんとヒヨコさんが来たんですよ!」

「いや違う、最初の言葉をもう一度そのまま繰り返してみろ。」

 スプラウトは疑問を浮かべながらも言葉を繰り返した。


「マリさんと…使い魔のヒヨコさんですよ!ヒヨコさん!」

 スプラウトはヒヨコに夢中のようだ。


「1回ヒヨコから離れろ。えーと、マリと?」

「使い魔のヒヨコさん?」


「使い…?」

「魔…………ま……ま!?…あああああああああぁぁぁ!?!?」


 スプラウトは頭を抱えながら地面に顔をぶつけた。

「じぃかああああああい???じゃないですかあああ!?!?」

「なんで気づかないんだ!?」

 凍りついたり、動揺したり。今日は忙しいな。


「どどっどどどどうしましょ!?!?」

 スプラウトは大きな声をだしながら騒いでいた。


「やっと、気づいたんですか?」

「まぁスプラウトですし」

 カクラジシとセイファがスプラウトの元に来て呆れていた。様子がおかしかったのは、これが原因か。やはり、よく見る話のように地界と天空は仲が悪いのか?



「別に何もしないわよ。ねぇ、ぴーちゃん?」

「私達はあくまで彩夢くんの力になる事と、死呪霊の調査に来ただけです。心配しなくても、天空に敵意などありません。」

 いつの間にかマリは目を覚まし、こっちに顔を来ていた。前に出ようとする使い魔を止め、ウィストリアと対面する。



「にわかには信じられないが?」

「……もう…やめて下さァァァい! これ以上、街がなくなったら本当に終わりますううう!!」

 スプラウトはまだ地面に顔をぶつけている。ウィストリアの顔を見たマリは、ため息をつきながら使い魔に合図を送る。



 その間にウィストリアとマリに沈黙が流れた。


「何故、現実の言葉を使っているんだ?」

「彩夢がいるからよ。別に地界の言葉で喋ってもいいけど?」

 元から、僕に合わせていたんだな。そういえば、当たり前のように僕と喋っていたが……環境が環境だから分からなくても仕方ない。



「姫に悪意はありません。これが目に見えませんか?」

 使い魔は紙を取り出しウィストリア達に見せる。


「これはっ!!!」

 ウィストリア達、全員がその紙を見た途端に固まった。凍りつくというより今にも崩れ落ちそうな石像のようだ。



 口をパクパクさせながら僕と紙を見比べている。

「…?」


 僕が紙をみると、前に見せられた馬鹿みたいな紙だった。なんでこんなに動揺しているんだ?



「に…ぃて…ますね」

 スプラウトは小さく呟き、それに答えるようにウィストリアやパナヒルも頷く。嘘だろ?こんな5歳児みたいな絵と僕が?


「これでいいかしら?」

「……」



「……コホン。」

 暫くしてウィストリアは咳払いをして、頭をさげた。


「申し訳なかった。天空一同、君達を歓迎する。」

 たった1枚の紙切れで事態は大きくひっくり返ったようだ。



「ありがとう、私はマリ。冥界風に言うなら、マリ・キャウ・ンットル。聞いたことない?

 ウィストリアは少し考えていると何か思い出したように頭をあげる。


「何となくだが女性初の冥界上位ランクとか。」

 カクラジシもその名を聞いた途端……口を開く。


「あぁ、神獣の方でも話題になってましたね。使い魔といい彼女といい、とんでもない2人組だと」



「そうなの?」

「んー?分からん」

 弥生が目を輝かせているが分からない。偶然出会って協力関係を結んだだけだし。


「私達は「死呪霊の調査」の件で天空にいます。 今、こちらでも死呪霊で大変なので邪魔をする暇はありません。 それに、姫は冥界でかなりの支持がありますので、姫を巻き込んで戦争もないでしょう。」

「そういう事!つまり、アタシがいる限り大丈夫!」

 マリはドヤ顔をして相槌を打った。



「……今はその言葉に賭けるしかないな。」

 ウィストリアは静かに考えながら呟いた。


「さっ、重い話は終わり! お花見の続きをしましょうよ !」

 マリはそう微笑みかけると皆も納得したように頷く。


「あの…」

「どうしたんですか?」

 僕が使い魔に尋ねると申し訳なさそうに口を開いた。


「先程、軽く天空について調べました。それで今、現実では何月何日ですか?」

 すると、ウィストリアは人間の情報が書かれた魔法書を取りだした。


「1月1日だな。」

「なるほど基準が分かりにくいので助かります。ここは時間の感覚が正反対なのでまた教えてください」


 使い魔はメモ帳に何かを書き込んでいた。

 1月1日。もう日は登り始めている。25日から6日。そして夜が終わった。つまり……


「年が変わっているじゃないか?」

「あっー! 確かにそうだわ。」

「ほんとだ!」

 人間の僕達は驚き、それ以外は首を捻っている。



「じゃあ…初日の出ね!」

「はつひので?」

 マリは使い魔の手を取り走り出した。


「さっ、続きよ続き!」

「ちょっ…姫っ!」

 それにつられて僕達も桜の花びらの上で座った。


「よく分かりませんけど〜、これ皆で食べましょう?」

 パナヒルはカゴのフルーツを差し出した。



「あっケーキ、1人分しか」

「残してくれていたのか。大丈夫だ、2人で分けるから。」

 スプラウトが残したケーキをパナヒルとウィストリアが受けとっていた。


「これ美味しいわ!」

「粒の実と言うらしいな。」


「へぇ…!」

 マリの笑顔と共に、日が頭を出し始めた。


 丁度天空に来たタイミングで、年が変わるとはな

「今年もよろしく!」

「あぁこちらこそ。」

「あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします。がセットです。」


「それが新年の挨拶か?」

「難しいですねー。」


「そうですかね?」

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