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地平線の仲介者 〜死んだはずの僕が現実で転生を止める役目を受けました〜  作者: 大井 芽茜
第三章 精霊界徘徊編!

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第3章 29話 桜

精霊達を助けて仲間を2人連れて帰ってきた。


ケーキも食べ終わりそうだし…ずっと眠っているウィストリアさんに会いに行こう。

「ケーキなんていつぶりかしら!」

「懐かしいですね。甘くて美味しいのが分かります」

 マリと使い魔も皆に混じりながらケーキを美味しそうに頬張った。


「そうそう、アナタ達の名前を聞いていないわ。」

「そういえば挨拶して無かったですね! 私はスプラウトと申します!」

「ぼくは…」

 僕達は自己紹介も兼ねながら精霊界の思い出話をした。



「で2人に会ったんです。」

「へぇ。それは大変だったわ、私もその問題はよく聞くし」

「セイちゃんから相談された事もありましたが……解決するなんて凄いですね!」


「…?」

 皆和気あいあいとしている中、カクラジシの視線に何故か違和感があった。



「ご馳走様。美味しかったよ。」

 上も下の段もペロリと食べきれる程のいい甘さだな。


「がんばってつくったんだよ!」

「よく伝わってきた」

 弥生は僕の声を聞いて嬉しそうに微笑んだ。お礼を言いながら頭を撫でる。



「彩夢くん、そろそろ行きますか?」

 スプラウトは僕が食べ終わるのを待っていたかのように声をかけてきた。きっとさっきの事だろう。僕は頷き立ち上がった。


「どうしたの?」

「ウィストリアさんにも挨拶をしないとな。」

 弥生は不思議そうな顔を一瞬していたが、「うん!」と頷いた。


「了解ー。アタシ達は疲れたから暫く休ませてもらうわ。」

「あぁ分かった。」

 マリは使い魔にもたれかかりながら眠そうにしていた。



「姫の事は任せてください」

「お願いします」

 セイファとカクラジシにあとを任せ、スプラウトとウィストリアのもとへ向かった。


「先に服を着替えますか?」

「はい、そうします。」

 久しぶりに会うんだし、身だしなみはちゃんとしておかないとな。欲を言うなら皆に会う前に着替えとけば良かった。


 僕は多少の罪悪感を抱えながら、ウィストリアの家についていく。


 スプラウトはウィストリアさんに借りていた部屋。では無くその隣のドアを開けた。

「ここは?」

「牙陪蘭くん家に泊まっている間に、使っていない部屋を片付けたんです! なので自由に使ってくださいね。」


「ありがとうございます。」

 スプラウトは笑みを見せながら僕にドアを開けてくれた。


 おそらく、僕が帰らないという選択を取ってもいいように、ウィストリアさんが色々と工夫して部屋を作ってくれたんだな。


「……っ」

 部屋の中は綺麗に整えられていて、机にベッド、クローゼットまである。


「綺麗!」

「頑張りましたから! 私はここで待っているので着替えてきてくださいね」

 僕は自分の部屋に喜びを隠せないまま、クローゼットを開けた。動きやすそうな無地のTシャツと上着が入っている。


 僕が好きそうなやつを沢山集めている。きっと考えて選んでくれたんだな。


「ありがとうございます」

 そう呟き、服を脱いで新しいシャツに腕を通した。脱いだ服を畳み部屋を出る。



「着替えました。」

「似合ってますね! 私が選んできた甲斐があります!」

「スプラウトさんだったんですね」

 スプラウトは頷き、苦笑いをしていた。


「ウィストリアさん、豹柄とか水玉とか……変な柄を買おうとしたので止めたんですよ!」



 僕はスプラウトと話しながらついて行った。

「そうなんですか?」

「あの人、服装のセンスが酷いんですよ。なので、いっつも私が選んでるんです」


「いやースプラウトがいて助かってるよ。」

「――!!!!」


「ですよねーウィストリアさん! 私が服装みないとどんだけ酷いか!」

「全くだ。お前に出会う前は本を体に巻き付けて」


「あのー」

「本当ですよ!人前に出ないだけ良かったです。私がベルトを持って来るまで鎖で巻き付け……」

 スプラウトは流暢に喋っていたが、ある事に気づくとピタッと止まった。


「ウィ、ウ、スウ……ウィストリアさん!?!?!?」

 僕達の前には倒れていたはずのウィストリアが立っていた。


 腹部を軽く包帯で巻いているようだが、ウィストリアは元気そうに僕に笑いかけた。

「すまない。迷惑をかけたようだな。」

「うっ……ウィッストリアさあああん!!!」


 スプラウトは動揺を隠せないまま、ウィストリアに泣きついた。

「私の代わりに色々としてくれたようだな。ありがとうスプラウト。」

「うっ…う………」

 スプラウトを抱きしめながら僕の方に視線を向けた。


「彩夢も無事で良かった。彩夢も色々とあったようだが」

「僕は大丈夫です! あの……僕を庇ったせいで、ごめんなさい。」


「別に気にしないでいい。」

 ウィストリアはただそれだけを言って僕の頬を触った。


「泣かないでくれ、彩夢」

「――っ」

 いつの間にか僕から涙が流れていた。ウィストリアも少し泣きそうになりながらも僕の涙をふきとった。



「会いたかったです。……ずっと…心配で。いや、大丈夫だと…は思っていたけど…不安で不安でっ。」

 喋り出すと想いが込み上げてくる。


「ありがとう彩夢。私は元気だ。これからもな。」

「っ……はい。」


 ウィストリアは僕の頭を撫でてくれた。少し恥ずかしいがそんな事はどうでも良かった。今はただこの時間を大事にしたかった。




 精霊界

「これで僕の仕事は暫くお休みかな。」

「ほうほう。それはお疲れ様じゃ。」

 そう言うとゆっくりとクロクは腰を下ろした。



「それにしても急に来たね。」

「すまないのう。速く伝えようとはしたんじゃが」

「別にいいよ。気にしてないから。」

 机の上の手紙を眺めながらため息をつく。



「ここに残る子、ある場所に帰る子達。本当に幸せそうになった。僕はもう帰らないと。」

「そうかのう。少し寂しいが元気でな。」

「うん。」

 手紙を空間の中に消しドアに手をかけた。


「ね、僕の友達、知らない?角が生えて光る子なんだけど」

「うーむ。見てないのう」

 頭を捻りながら、フェアエストはそう答える。



「そっか。また探してみるよ。じゃあまたね。」

「ありがとうの、クロク」


 クロクは笑みを見せて草むらに足を踏み出した。暗闇の中、1人で歩いていく。


(病気の精霊達。死呪霊……本当は皆、助けられず死ぬはずだった。)

 クロクは頭を少し抑えながらも、目を見開き笑った。

「面白いね。やっぱり君は」

「暫く探していたんだが…どこに居たんだ?」

「あっ案内しますよ!パナヒルさんも御一緒に!」


「そうだな。呼んでこよう。」


(パナヒル…?)


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