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地平線の仲介者 〜死んだはずの僕が現実で転生を止める役目を受けました〜  作者: 大井 芽茜
第三章 精霊界徘徊編!

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第3章 26話 度重なる問題

クロクは倒れた僕を治し倒れてしまった。

治療をして、眠らせたが、いつ起きるかは分からない。


そして、僕は姫の使い魔だという男に出会いご飯を食べている。

「いやよぉぉぉぉピーちゃん! 先にご飯作らないでよおおおお! また、死にかけたらどうするのお!?ねぇー!!」

「姫。私はご飯を作るくらいで死にませんよ」

 僕がご飯を食べていると女の人が男の人に泣きながら抱きつき引きずられてきた。


 全く僕に気づいていないようだ。

「ご飯は私に任せてください。あと、それ人様の前で辞めてください。」

「いやぁー! 私もやるぅぅ!…ん?人…?」


 「どうも」

 「いやぁああああああああ!」

 女の人は周りを見て僕と目が合うと、やっと気付いたらしく慌てていた。すると、顔を振り急に真顔の表情になる。


「……ごほん。今の無し!」

「あっはい」

 彼女は何も言わず向かい側に座った。立っている男の人と斜めの目線で何か会話をしている。


「あ、あのっ…えっーと前は色々と…ごめんなさい。」

 彼女は顔をかきながら申し訳無さそうにしていた。男の人もそれに合わせるように頭を下げる。


「別に大丈夫ですよ。それに全く気にしていないので。」

 僕は淡々と答えると、彼女は紙を机にバンッと置いた。


「お願いだから、少しは気にしなさいよ!? 少しだけでも付き合ってくれない?大丈夫、アタシが居れば花道になる、する!」

 彼女は絵を何度も叩く。その紙の裏には「ココニアリ」と赤く光る文字で書かれていた。これが彼女が探す運命のなんちゃらが僕という証拠か。


「胡散臭……」

「なんですって!?」


 「というか、なんだよ。花って、花道は自分で作るもんだろ。種を他人に植えてもらうか?」

 「なんか変なひねくれしてない?」

 しょうもない言い合いになっていく気がする。だが、僕にだって意思はあるんだ。無理矢理付き合わされるのは絶対に嫌だ。何が運命だよ。



 「君は……よく知らないウェイ系のイントラでアピールというリア充マウントする輩が、「え〜なんかいい男紹介しよっか?」と言われたら頷くか。」

 「嫌よそんなの!? 押し付けられる感じも、男扱ってるって思わせるの嫌!!」

 「だろ!?」


 「「……」」

((あれ、普通に気が合うんじゃね))


「姫、ウェイやらイントラはよく分かりませんが……これまで散々言いましたよね?」

 男の人は間に割って入り、僕達を心配そうに見つめていた。



「そうね。諦めるわ」

 「はやっ!?」

 女の人はしょぼくれながら精霊達にご飯を持っていった。



「少し前まで姫は焦っていて、最後のチャンスだと……」

 男の人は見届けた後、彼女が座っていた椅子に座った。


「彩夢くんは「死呪霊」というものを知っていますか?」

「あっはい。」

 確か、生物の負の感情が混ざりあった物。現実だけでなく様々な場所に現れている。とかだったな。


「その生物のある調査を頼まれ、私達は冥界を出ました。しかし、このままだと帰ることになるんです。これからも、外に出るには最低でも死獣霊の接触が必要で」


「冥界は、その……居ないんですか?」

 僕が聞くと男は苦虫を噛み潰したような顔をした。


「ちょっと色々とあるんですよね。姫は、興味が無くなる一方で」

「はぁ。あっでも、すぐに呼べますよ、僕でよければ」


 「え?」



 バァン!

 そんな話をしていると、急に女の人はドアを開け玄関へと走り出して行った。


「???」

「すみません。少しお待ちください。」

 僕が首を傾げていると、男も急に立ち上がりバク転をする。彼はヒヨコの姿になると姫の後をついて行くように飛び出した。何なんだあの人達?



 「不思議な人達だったな」

 僕がそう呟くと、グサッと僕の足元にナイフが突き刺さった。


『お前もついていけ』

 話はあまり分からないが僕はナイフを取り玄関を開けた。



「――っ!?」

 黒い獣と共に黒いモヤを纏う人が見える。この影は恐らく死呪霊だろう。前より牙も爪も凶暴そうだな。



 集団の中である人影は一際邪悪なオーラを纏い、ニヤッと笑い僕を見ながら手を挙げた。

「ねぇお兄さーん。この子欲しい?」


「いや! 離してー」

「怖い!」

「彩夢!」

 木には精霊達が網に捕まっていた。その男はその様子を見ながらウェディを握りしめ笑っている。


「皆! ウェディ!!」



「コイツっ!」

 女の人は鎌をブルブルと震わせながら怒りを見せていた。これでは自由に動けないな。


「条件はなんだ。」

「簡単だよ、俺は仇を取りにきたんだぁ! なぁ、あの偉そうな男を連れてこい。」

 ヘラヘラした男は急に睨みをきかせる。仇……色々と心当たりはあるが、偉そうな男は恐らくクロクの事だろう。


「アンタっ、ちょっとアレ何とかしなさいよ!」

 何とかしろと言われても。言うこともやる事も1つだろう。僕は軽く息を吸った。



「俺が友を売ると?」

「売らないと……分かってるだ」

 ヒュンッ


 男はウェディを見た瞬間に俺は思いっきりナイフを投げ飛ばした。まあ、予想していた相手の腕を外れ腹に刺さったがこのくらい想定内だ。



「おまっ……っ!」

 俺は距離を一瞬で縮め頭を蹴り飛ばした。ナイフを手に戻し、フラッと体勢を崩した腕を狙いナイフを突き刺す。



「ウェディ!」

「――っ!」

 ウェディはその瞬間を見計らい。緩んだ腕から離れていく。


「コイツっ!」

「おい、何をしている!」


「アンタらの相手はアタシよ!!」

 それを見計らった女は、飛びあがり鎌を網に向かって振りかざし、精霊達が逃げていった。



「ピーちゃん、頼むわよ!」

 女な空に向かって叫び、その勢いのままに死呪霊を次々に倒していく。


「アンタはそいつを殴りなさい!」

 そう彼女は叫びながら鎌を振り回す。目線を戻すと精霊を逃がしたにも関わらず、男は腕に刺さったナイフを見ながら笑い始めた。



「ははっハハハハハハハハハハっ! バカじゃないか!?そんなんで勝った気になるなよ?人間!」

 男はそういうと腕に刺さったナイフを喰らいついた。そして背後から黒い影が大きくなる。



「っ!?」

 この雰囲気を何回か見たことがある。高校の時、僕を集団で責めさせたやつと同じだ。次第に、黒い影は男と一体すると赤い眼光が開く。


 ガッ!!!

「――っ!」

 声が二重に耳に響きながら感覚を研ぎ澄ましていたが、素早い勢いの拳に身体が負けた。受け身が取れないまま吹き飛び木に叩きつけられる。



「うァ!!」

 流石にこれ以上、あれを使っていても持たない。頭痛と吐き気、打ち付けた腰の痛みが響いていく。それでも立てらないと……っ


「――!」

 右足が捻っていることに気づいた。武器であるナイフもクロクに使って持っていない。



「精霊?ハハハハッ! あれはただの囮だ、お前もアイツらも全部殺してしまえばいい!!」

 ナイフが無ければ僕も化け物に対して上手くは立ち回れない。何か……


「死ねっ!!!」

 僕が考える暇も無く男は飛びかかる。コイツ、何となくだが僕に手が無いのがバレている気がする。


「っ……」

 あまり、力に頼るのは好きじゃないが勝つためにはこれしか無いだろう。勝つ為に使うんだ。


『いけるか』

『あぁ』


「――我が身を守り向かい撃て! アラストリア!!!!」

 背後からアラストリアが現れると、雄叫びと共に相手が吹き飛んでいく。



「何!? あれ」

 彼女はとてつもなく驚いていた。鎌を落とすくらいに。雄叫びに負けるように、黒い影は消滅し問題の男は力を失ったまま転がっていく。この数秒で他の皆もバタバタと倒れていった。


「すごっ」

 彼女の倒した獣も静かに消えていく。


 男は黒い影を吐きながらも、ぐにゃぐにゃと気味の悪い姿をしながら立ち上がる。

「テヲクレ…テヲ………イツ…サエ…ヤラレナケ…レバアアアアアアあああああぁぁぁ!!」

 そう叫びきると黒い影は完全に消えバタリと倒れた。



「っ……」

 アラストリアは消え、僕の身体は限界を迎えた。痛みはアドレナリンを貫通し脳に痛みを知らせる。



「彩夢!?」

 女の人がこっちに気づき走ってくる。


 しかし…間に合わ……

『キューーー!!』

「――っ」

 何かが僕に鳴きながら、背後に入り込んできた。何か体の中でがモゾモゾと動いている。


「っ!? ゴホッ……ぅえ」

 気持ち悪いが、消えかけた意識は少しずつ回復していく。これは一体何なんだ?


 僕の中で動く何かは急に動かなくなり、代わりに女の人が僕に肩を回した。

「しっかりしなさい!歩けるわよね?」

「っあぁ。すまない。」


 僕は肩を借りながら捻った右足を庇いながら歩いた。


「ねえねぇ1つ聞いてもいい?」

「別にいいけど?」

 僕は色々と混乱しながらも応答する。頭がズキズキする。



「アンタってさ。急に雰囲気変わらない?」

「……今それか。」

「だって気になったもん。」

 女の人は少し顔を赤らめてそっぽを向いた。何が恥ずかしいんだろう。



集中(ゾーン)。それを使っているだけ。はあはあ……僕は使う時は切り替えるタイプだ。さっきみたいに……あ……やばい……」

「へぇ、そんな能力があるの?」

 能力なんかじゃないし、誰でも感覚を掴めば出来る。しかし、それを言う程、僕の舌は回らない。



「えーと……うーん。」

 女の人は話題を振るか、さっきの話を繋げようとしているのか、頭に片手を当て唸っていた。



「話さなく……も」

「そうしないとアンタの意識持たないでしょ!?ほらっ歩く!」

 確かに黙っていると意識は少しマシになったが、少しづつ落ちていくような。足を動かす事にフワフワとした感覚が僕を襲った。


「あっあれっ何なの!?」

「あれ?」


「あの化物よ!?」

「アラストリア?」


「そうじゃなくて、なんでアイツが出た途端、死呪霊が消えたのって事!!」

 女の人は早口になりながら声を押し付け、声が頭に響きまた意識を取り戻す。


「僕も分からん」

「何よ……それ。」

 やっと小屋につくと彼女は玄関の扉を押した。


「あれっ!?」

「それ……引き戸。」

「あぁ、引き戸ね!」

 そう言って扉を引く。さっき押しながら外に出ていただろ。


「冥界は逆なの。」

 そう呟くと、部屋に無理矢理押し込み床に僕を寝かした。そして、床をコンコンと叩き下から包帯を取りだす。

「手当てするから、大人しくしてなさい。」


 彼女は僕の手当てをしようとしている。僕はまだ何か


「あっ」

 さっきの人間、どうするんだろう。獣は消えたけど、人はまだ消えていないはずだ。


「先に人間を捕まえるべきじゃないか?」

 アイツらは何か死呪霊や精霊について知っているはずだ。とっ捕まえて色々聞きだした方がいい。僕の怪我くらい何とかなる。



 そう言うと彼女はドヤ顔をしていた。


「だいじょーぶ! ピーちゃん、忘れてない?」

「あぁ……」

 忘れていた。確かにあのヒヨコは何をしているんだろうか?


「さっピーちゃんと私に任せて! アンタは眠ってていいから。」

 少し怖い。が、今の苦痛を和らげるには寝るしかない。不安になりながらも目を閉じた。



「アンタさ、なんで最初から化物使わないの?こんな事にならないで済んだのに。」

 眠ろうとしているのにも関わらず彼女はまた疑問をぶつけてくる。


「昔。しょうもないことにアラストリアを使った。そして、人を殺しかけたことがある。」

「……っ」

 そう言うと、女の人は言葉を失っていた。普通、そんな話聞いたら引くに決まっている。


「たがらできる限り使わないと決めている。自分だけで何とか出来るように色々…頑張っては…いる。」


 僕は体術、遭難術とか心理学。要らないとは思っていたが色々と見て学んだ。自分として成長する為に。


 陸上を初めてから、何となくだがその人が力を入れている所が分かるようになり実際に自分も似た動きができるようになった。



 あの事件後……僕はさらに感覚を磨き、見た通りの真似が出来る程の観察力と推理力は手に入れた。けど、ここに来て魔力持ちには敵わないと感じたな。


 この女の人にも。

 こんな話を誰かにする事になるとはな。まぁ、二度と会わないだろうし大丈夫か。きっと、嫌われたはずだし。



 僕はそう思いながら彼女を見ると何故か笑っていた。


「ふふっ」

「?」

「私の名前はキャウ・ンットル・マリ。マリで構わないわ。」

「なんで……今、自己紹介?」

「そんなの、アタシがアンタを気に入ったからよ」

 僕がそう聞いた途端、目に手を被せてくる。隙間から彼女はスッキリしたように笑っている。


「さぁね。じゃおやすみ!」

「ちょ……」

 僕の意識は限界を迎えていたのか急に消えていった。

「えーと、睡眠の向上ってどうしたらいいのかしら?コウモリの羽とか…骨とか…あと、塩?」

「姫、何の儀式をしているんですか?」


「あー!レモンかけたらスッキリするわね!似てるのが確か」

「待ってください! 姫っ!!」

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