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地平線の仲介者 〜死んだはずの僕が現実で転生を止める役目を受けました〜  作者: 大井 芽茜
第三章 精霊界徘徊編!

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第3章 23話 想定外の結末

僕は女の人との戦いで意識を失ってしまった。

一方、クロクと姫(女)の使い魔の男は条件付きの争いをしている。

「ぁああああああああ!!!」

 男は叫びながら、マスクごと思いっきり口元を引っ掻いた。顔に血が流がれながらも、気にすることなくマスクをズサズサに無理やり破いていく。



「………」

 身体は黒く染まり、顔の形は鳥のようになっていく。右腕には羽毛が生え、もう左の肩下から黒い翼が生えていた。



「やはりこれは」

 クロクは多少の危機感を感じながらも興味深そうに眺めていた。まだ彼には余裕の風格がある。

 男の右眼は黄色く光り、片目は縦長に瞳孔が開いた。


「キィシャアアアアア!」

『これが私の全力です。』


「……」

 男は魔力に言葉をこめてクロクに流した。クロクには鳴き声を翻訳するかのように男の声が聞こている。



「本当に君みたいな存在に会えるとは。ははっ光栄だよ!」

『貴方が喜ぶような存在では無いです。さて、再開しましょう。 』

 男の声はクロクとは真逆の感情だった。使い魔の言葉と共に争いは再開する。


「キャアアア!」

 影に溶け込み消える男を見ても、クロクはびくとも動かなかった。すぐさま男の姿は遠くの木の上から現れ、クロクに飛びかかる。


「―ッ!」

「………そこ」

 途中、クロクは見透かしていたように振り向き男と目線を合わせた。しかし、クロクは動かず目をつぶる。



 ガグッ

「………なるほど。」



 クロクの肩からドクドクと血が流れていく。肩には噛みつかれた痕と引っ掻き傷があった。痛いという感情が無いかのように、クロクは傷口を見ること無く微笑みながら手を伸ばす。


「キシっ…ャシャ……」

「ねぇ、僕の肉って美味しいの?化け物さん?」


 クロクが掴む動作をすると、男が引き寄せられるように急に姿が現れ肩を掴まれてる。


『………っ』

「教えてよ。気になるんだけど。」

 男の目は明らかに動揺していた。


 さっきまで、3キロは離れた場所でこっそり食べていた。なのに、急にクロクが現れ面白そうに見ている事に驚きを隠せなあか。


「キシ…」

『正直…』

 男は困った顔で手に着いた血を舐めた。


『分かりません。私には味覚が無いので』

「そう?まぁそうだろうね。そんなにぐちゃぐちゃだと味覚に支障はあるか。」

 クロクは何か裏があるように呟いた。


「なぜそれを」


 グサッ

「――っ!」

「これ以上は収穫無いかな。」


 男が気づいた時には、胸にナイフが何本も突き刺さり、血が流れていた。ナイフ持ち手はクロクとは反対に背の方から刺されている。


「僕、「ナイフを使う」のは苦手なんだ。」

 クロクはこれまでに無いほどの笑みを見せ、手をグーパーさせながら嘲笑う。



「そうそう。君はあと1分で死ぬよ?後は僕の方で調べよっかな。」

「――ッ!」


 傷口を塞いでいた痕は、めくれていき出血はさらに勢いを増した。その時、彼は血がこんなに流れているのに痛みが無いことに気づく。



(痛みはずらしておいたから)

「っ……!!?…!」


 男はクロクの言葉を思い出し震え始めた。そう。これから痛みが襲ってくる。



 この少年は只者ではないと今気づいた所でもう手遅れだった。これまでの彼には無かった感覚が襲う。


「まだ時間あるよ?手紙でも書く?主に向けて…さ?」

 そういうと、クロクは「何もしないよ?」という顔で手を上げた。


 これまでの戦いの痛みが一気に来れば、間違いなく自分は死ぬのだと察した。姫とは二度と会えなくなると。



 それでも……男は立ち上がる。


「キシャアアアアアアアアア!!!」

『遺言?使い魔として最後まで姫の為に貴方を……お前を倒します!』

 男はより凶暴になり殺気を見せる。



「そ?……じゃあ、最後の1分間で「血の味」を教えてあげるよ。」

 クロクはそう微笑んだ。




 その頃、彩夢の首元には鎌がめり込み、女は嘲笑った。

「死になさい!!」

「……」


 血を吹きだす。途中に


 カチッ

「鎌がっ!!」


 なんの前触れもなく、何かに跳ね返るように鎌が飛んで行く。すると、彩夢の首元は縫われるように治っていった。


「何が!?――っ」

 彩夢につけた糸はくたびれるように消えていく。



 何かが、いや。急に彼の魔力が物凄い勢いで増えていく。女の視界には黒いオーラを纏う彩夢が笑いながらこっちに向かってくる姿があった。



「言っただろう?彩夢。お前が死ねば我が乗っ取ると。」

 さっきより明らかに低く彩夢は声を出す。


 異様な彼を見たのは彼女だけじゃない。

「彩夢っ」


 ウェディは彩夢のマスクを渡す為に来ていた。しかし、変わり果てた姿を見ていきをひそめた。


(僕が怖くないの?)

 彩夢が持っている化物は意思を持ち、持ち主さえも乗っ取る。あの時の言葉の意味をウェディは思い知った。



「怖い……でも伝えなきゃ! あんなの彩夢じゃない!!」




「どう?痛い?」

「キャアアア…アア………ヒ………メ…」

 ナイフを男の頭に刺しこみ、悲鳴を上げる男と血を被りながらも笑うクロク。


 そんな中、彩夢の魔力の異常さは2人の争いさえも止めてしまった。

「……!惜しいけど、これまでの話は無しだ。君の耐え勝ちでいいよ。」

「はっ……はっ、ひめ」

 男は姿を戻し地面に倒れ込み血を吐いた。フラフラになりながらも立ち上がり姫と繰り返す。



破棄(デモクイト)。じゃあね」

 力が入り切らない手についた鎖がバラバラ……と落ちていく。その様子を見守る男は、小指の赤い糸が点滅をし始めた事に気づいた。


「待ってください! っお…がい…します。ひっ…めが」

「………」


 男は必死で、クロクを止め倒れた状態で頭を下げた。

「ひめがおそらく……彼の、ちか…くに…」



 必死に叫ぶ男にクロクは呆れたような顔をして男の元に戻った。


「分かった。でも君が守ってね?連れてはいけるけど、そこまで僕の手は回らない。」

 男は「勿論。」と頷いた。クロクは男に触ると、男の血は止まり傷が治っていった。


「時間が無い。早く」

「はい」

 男はヒヨコの姿になりクロクの肩に乗ると、大急ぎで森を抜け彩夢に向かう。


『クロクさん彩夢が!!』

「魔素が乱れてる、細かい場所を教えてくれ。」




 彩夢は落ちたナイフを拾った。

「これはあいつのか」


 ナイフを持った彼はただ困惑する女をみていた。

「ちょ…ちょっと!これっ……どういう事よ!?」



「お前に彩夢は救えぬ。」

 彩夢は、離れた場所からナイフを振ると、彼女は心臓を抑え座り込む。


「……くっ! 痛い!!」

「今すぐ帰って彩夢に関わらないと誓え。そうするなら許すが?」


「なら、死んで……ちょうだい!! アンタが! 死な…ない限り運命は……変わらないの!!!!」

 女は怯えながら怒りを叫び、紙を握りしめる。


「なら我は彩夢を守るだけだ。」



  彩夢がまたナイフを振りかざした途端、

「そこまでだよ。化物。」


 風が荒れた地にクロクは姿を出した。鋭い風がナイフを弾く。風の勢いは彩夢だけでなく風の勢いは止まり切らず彼女を吹き飛ばした。

「――っ!!」

「姫っ!!!!!」


 男は女を抱えたまま、勢いが止まらず木に身体を打ち付けた。


「ピーちゃん!!もう、どこいってたのよ!」

「姫!お怪我は」

 姫を見た途端、不意に涙が溢れてくる。


 もう会えないと思っていたのに、会えた事は奇跡に等しいと彼は感じた。震えた手で自分を支える男を抱きしめる。


「アレ使ったでしょ?何となくだけど。」

「はい。申し訳……ありません。」



「ねぇ、邪魔なんだ。早く逃げてくれない?」

 クロクは疲れた声で2人に促した。


「はい。今すぐに本当にありがとうございます。」

 男は姫を抱え走り出した。




「君にだけは会いたくなかったよ。」

「久しぶりの再開だ、喜ぼうじゃないか。時の子よ。しかし、お前の手に2回も引っかかるとは」


「………」

 クロクは黙っていると彩夢は続けた。


「我が眠っている間に彩夢を通して、時を止めるとはな。おそらく手でも握ったんだろう。」



「君は彩夢を通した魔力の使いすぎでねむった。だから、タイミングを見てやっただけだよ。 結構大変だし、僕の中で1番強い魔法なんだ。その力が解ける条件はただ1つ。彩夢の死だ。」

 彩夢は頷いた。


「運良く解けたという訳だ。お前との力比べはいいが、今回は戦う気は無い。ただ1つ取引をしてほしい」

「……?」

 クロクは小さく首をかしけだた。


「お前の困り事を我が解決する。我の願いは彩夢を」



「救ってほしい」

「……!そうくるとはビックリだよ。きみが彼を庇うなんて、まあ僕には悪い話じゃないね。うん分かった。」

 クロクは静かに頷いた。

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