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地平線の仲介者 〜死んだはずの僕が現実で転生を止める役目を受けました〜  作者: 大井 芽茜
第三章 精霊界徘徊編!

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第3章 22話 望まぬ未来

クロクと姫の使い魔の男との条件付きの戦闘が始まった。


一方、僕の方には姫…女が現れ僕のを運命の相手だ。結婚しろだと言われた。


嫌だと断ると、女は怒りながら僕を殺しにきた。

「――っ!!」

 キンッ

 とナイフと銃が激しくぶつかった。男に向かうナイフの軌道を逸らしたが、その途端に衝撃波が起き、お互い吹き飛ぶ身体をすぐに立て直す。



 バンバンッ

 男は距離を取りながら、銃弾を撃ち込むがクロクの身に掠ることは無く銃弾をかわしながら距離を近づけていく。



「――っ」

 銃を斜めに守備に入った男に、クロクは瞬時に回りこみ刃を振りかざす。その選択に彼は反応出来ず背中にナイフが突き刺さった。



「見当違いでした。貴方はとんでもない人みたいですね。」

 男の傷口は次第に紫の膜が張り始めるが、傷口を防ごうとするが血の勢いは止まる事なく流れていく。



「今更後悔したかい?もう遅いと思うけどね。」

 その後も、クロクの猛攻は止まりきらずに牙を剥く。何箇所もナイフで男の身体を切った。一瞬のうちに男の顔を踏みつけ左足で男を蹴り薙ぎ払う。


 だが、まだ足掻く。コロコロと転がりながら形勢を整え、向かってきたクロクを確認し


「ピヨッ」

「――!」

 ヒヨコの姿に身を変えナイフをかわし、勢いづいたクロクは形勢を崩した。


 その隙に、離れた所に行き着いた男は姿を戻し草むらに身を潜める。

「やはり近距離戦は苦手ですね。」


 男は銃を地面に2回叩きつけ髪の毛を落とした。

「ダグルト……ガラッチェル」



 詠唱を唱えると銃は浮き上がり男の手から爪が伸びた。黒いマスクが口につき、周りからは黒い丸い物が浮遊する。


 髪はフサッと浮き上がり目は瞳孔が開く。

「やっぱり君、面白いね」


 クロクは場所を知っていたように草むらを刈り取り姿を見せた。

「……姫が悲しむのであまり使いたくないんですがね。」



 男の姿は溶けていき影になる。

「これが君の戦い方かい?」

『さてどうでしょうか。』


 森は光を遮り暗闇の中で影が駆けながら声を出す。それを見たクロクは指を鳴らし、風を強く吹き荒らしながら視界を得る。

(どこにいる?)


追跡(プロッキング)弱力(ノパーク)。主ありての我が力、影となりて弾き飛べ」

 男は銃を地面に撃ち込んだ。その音に反応したクロクは男の後ろにまた回り込む。


 ナイフは男を切りつけたが男は影となり消えていった。クロクが地面に向かいナイフを刺そうとすると


 バンッ

 地面から爆発音が聞こえ黒い光がクロクに迫る。


「っ……!」

 その銃弾は胸を撃ち、そして足を影に引きずり込む。形勢を崩したクロク地面に倒れ込んだ。



「しまっ」

 クロクの状態は万全の状態とは乏しい。ふらついた足を黒く丸い影は次々と餌のように食らいつき重りとなり影へと引きずっていく。


 必死に抜け出そうにしても足を影が逃がさない。クロクが顔を上げると上には男が銃口を向けていた。


「……」

「終わりです。」


 バンッ

 クロクの頭を弾丸が貫き、倒れ込んだ身体を影が全て飲み込む。



「終わりました。話を聞き次第、すぐに戻ります。」

 男はクロクに約束を果たさせる為に影に向かった。歩く度に痛みが走るのを耐えながら男はゆっくりとしゃがむ。


「……あれ」

 自分の身体を視界に入れると驚いた。いつの間にか服は血だらけになり心臓部分には傷痕が何箇所もある。



「これは」

「残念だったね。あっはは!」

 影にはナイフだけが浮かんでいた。振り向くとクロクが素手の状態で嘲笑っている。



「ごめんね?僕ナイフは苦手なんだ。あっ、痛くないのは痛みを数分ずらしてあげたから。だから、今は安心したらいいよ。」

「――っ!」

 クロクは男の髪を掴む。



「悪いけど君に殺される気は無いし出来ない。それが運命だからね。」

 男の姿は掴まれた手から灰になっていく。クロクはため息をつきながら全身が灰になるのを見守った。


「心配してそうだし、もう帰らないと。もう動けないだろうし後で処理すればいいよね」

 帰ろうとした足を影が掴む。クロクが振り向くと足元の白い灰は急に黒く光り始めた。

「まだやる?」


 灰はフワッと巻き上がり黒い魔力が溢れだすと、魔力は人の形を作り元に戻る。

「……勿論です。」


 彼に勝つのは不可能ではないかと考えが浮かんだ。それでも、この勝負に負ける訳にはいかなかった。


(アタシがアンタを必要としてるのよ。これからはアタシの為に生きる。それでどうかしら)

「全ては姫のために」


 傷だらけの男は決意を決めたように目をつぶる。

「……我が姫。どうか血に飢える事をお許しください。」


 男は爪でマスクを引っ掻いた。






「待てっ! 話を聞け!」

 女は両手に鎌を持ち容赦なく振り下ろしてくる。流石に怒らせてしまったようで、女は殺す殺すと呟き話を聞かない。



 とりあえず、場所を移す為に後方を確認しながら走った。短距離用に作られた足を生かし物凄い勢いで駆け抜ける。


 女は鎌を持っているし追いついてはこられないだろう。



 そう思ったが、まだ人の気配が離れないことに気づいた。

「嘘だろ?」


 女は何食わぬ顔で追いついてくる。

 僕は目を疑うしか無かった。陸上部でずっと鍛え上げたんだぞ?


「残念だったわね! 小指を見てみなさい!!??」

 女はドヤ顔でそういうので、僕は視線をずらし小指を見てみると赤い糸が巻かれている。


「はっはっ……何だこれ?」

「はぁっあーもう!流石に疲れたわ。止まりなさい!」


「なんでだよ!まずはこれについて応えろよ」

 僕も疲れたので止まって話をする事にした。女の人も疲れたらしく息を整えている。


 今逃げれば大丈夫か。隙を見ながら僕は浅く呼吸を整えた。


「それ?血の糸よ?」

「いやっそういうんじゃなくて……なんで僕の速さに付いてきてるんだって聞いてるんだけど」


 血の糸って。それはそれで怖いが僕が聞いているのは能力についてだ。

「あっそっち?じゃあアタシと結婚してくれる?」

「なんでそうなるんだよ!?てかさ、初対面で何言ってるんだ。」


「そ。じゃあ殺す」

「はああああ?」

 もう無茶苦茶すぎる。なんだこの女は。血の糸と言い両手に鎌といい変な人に絡まれたな。帰りたい。幸せスローライフなんてないのか。


 とりあえず僕は後ずさりをしながら向きを変え走り出した。さっきのは偶然だろ。偶然。僕はこれでも速いほうだぞ。


 100m大体11秒後半。女子の平均は大体13秒。距離を取れば取るほど差は開けるはずだ。


 全速力で僕は先へ先へと進んでいき小屋が見えなくなっていく。すぐにでも身をひそめなければ。


「っ!」

 小屋に目を向けていて気づかなかったが、小屋が見えなくなると焼け跡が辺り一面に残っていた場所についた。


 なるほど。人間に焼かれた所か。こんなタイミングでここに来るとはな。運が悪くここでは隠れられない。


「まてぇーーい!!」

 女がそう叫びながら追いついてきた。


 何故か血の糸は痛み小指に痛みが走る。何か関係が?女の素振りを見てもヒントも何も掴めない。


「もぉー許さないだから!」

 女は鎌を地面に刺し拳を握りしめる。すると、地面に靴をコンコンと当て髪の毛を入れた。


「来なさい! アニマ! アニムス!」

 女がそう叫ぶと派手な服装は真っ黒な短いドレスになると、後ろに一瞬美しい女性が現れる。


 女性が消えると彼女の両目は赤く光った。

「さぁっ! 一瞬で殺してあげるわ。」


 彼女の右の鎌は炎を巻き上げる。続くように左手を胸に当て、青い光を放つ手を空へ向けると、左眼は青く光り鎌に水を巻き上げる。


 これは逃げきれない。僕はかわす事だけを考え女の方へ向くと既に自分の所へ追いついてきている。


「死ね!!」

 女はさっきより比べ物にならない速さで鎌を振り下ろす。


「――っ!」

 身体を横に捻りながら必死にかわし受け身をとるが炎は足を焦がし水は視界を遮る。



「ア゛ア゛アア!」

 足は地面に転がり火を擦りつけ、腕で目を擦る。


「アンタも魔法の1つでも使いなさいよ!?選択は承諾か死ぬ以外無いのよ?分かってる!?」

 使えと言われても無いんだよ。どうするか?アラストリアは呼べないし。



 考えろ。僕は一瞬だけなら身体能力をあげる事が出来る。でも、それで勝てるのか?



「何黙ってるのよ!?」

 僕は攻撃をかわしながら起点軸を活かし予測出来ないような動きを取りながら時間を稼ぐ。


 あの女、鎌を振り下ろす時に軸がズレていた。身体能力を上げているみたいだが体幹はそこまでだは。


 なら。


 僕はゆっくり息を吸い吐いていく。目的と理想を兼ね合わせながら目をつぶり呼吸する。


「死ぬ気になったかしらああ?」

 女が向かってくる足音。ここだ。


 キンっとナイフと鎌が競り合った。ナイフの先を変え鎌の向きを逸らす。

「なっ急に!?」


 地面を思いっきり蹴り出し、女との間合いを詰める。咄嗟に右手から振り下ろされた鎌は僕の何も持っていない左の腕に振り下ろされた。


「……」

 ザクッと音がし腕に鎌が入る感覚がある。でも、痛みは薄れてよく分からない。



 女が鎌を振り下ろした時に重心が右に傾いた。僕はすかさず左の肘に向かって足を蹴りあげる。

「なっ!」


 油断した彼女の左手から鎌が離れていく。僕はその鎌を取り距離を取った。瞬時に服を破り左腕に巻き付け圧迫する。


「やるじゃない?あれっ」

 女が上を見た時には、1つの鎌を両手に持って振り下ろそうとしている僕がいた。



 これで勝った。そう思った。予想が上手くいくと思った矢先その一撃を彼女は鎌で薙ぎ払う。


「――!」

「使い方が素人ね?それじゃあアタシには勝てないわよっ」


 体勢を崩した僕の首元を狙い鎌を横に振る。

「しまっ」


 気づいた時には首に鎌が当たっていた。



「ーーー!!!!!」

 これは終わった。




 痛みが分からないのに血が視界に見えた。そこから僕は何も覚えていない。

そこからというもの、何も知らないんだ。

でも…一瞬だけ、あの声が聞こえ気がする。



弥生編は暫くお休みです!そして、次も彩夢達になります。

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