第3章 15話 弥生編 悩み事
弥生とカクラジシは凜々(りり)という女の人の悩みを聞いてくれたお礼にご飯に誘われた。
あとは…悩みを解決するだけ
次の日
「今日も頑張ってくださいね! カクラジシさんお願いします。」
スプラウトの家でゴロゴロした後、すぐにカクラジシが迎えに来た。時間が速いからあっという間に次の日が来る。
「うん!」
「任せてください。」
「そういえば。カクラジシさん、帰ってきたら1つ頼みがあるんです。」
「分かりました。では、行きましょう弥生。」
僕はカクラジシにまたがると雲に頭を打ち付け無理やり雲を破って現実に降りていく。
「行ってらっしゃいませ!!」
スプラウトは雲の間から顔をだし手を振った。
「ぃうああああ!」
本当は怖いから魔法で移動する方がいいのに。
「着きました」
「はぁ、はぁ……ん?」
着いた先は前の海だった。人影は無く薄暗い。という事はちょっと速かったのかな?
ヒュー
風が服の隙間に入り体が冷える。
「さむい」
「ちょっと早すぎたようですね。そういえば、あれがありますね。」
カクラジシはブルブルと顔を振るとフワッと毛が伸びた。
「私の上で寝ていてください。疲れたと思いますし」
「いいの?でも、なんでのびるの?」
カクラジシは目が隠れるほどに毛が伸び、毛布のような手触りでふかふかしていた
「冬毛です」
「そんなのあるんだ!」
僕は疲れていたからか、カクラジシにかぶさるようにしてすぐに眠ってしまった。
「弥生。弥生起きてください。」
「弥生くーん?」
「…!」
僕が目を覚ますと凜々がこちらをじーっと覗いていた。カクラジシは僕を起き上がらす。
「ん……」
「弥生くんーよく寝てたね」
いつの間にか3時間くらいは眠っていたみたい。僕は寝ぼけながらに数歩歩く。
「にしても、鹿に冬毛なんてある?」
「私は鹿じゃなくて神獣なので。というより鹿というものを知りません。」
「あーそっか。それは大変だね。」
凜々とカクラジシは話をずっとしていたみたい。でも、時間が過ぎちゃうから起こしてくれたって。
「よし、じゃあ今から美味しい物をご馳走様するね!」
「わーい!」
「ありがとうございます。」
いっぱい食べたいと思ったけど、4足のカクラジシに目がいった。
「でもカクラジシは?」
「それは事前に対策済みなので大丈夫ですよ。」
「そうそう。さっき話してたんだけど周りからは人間に見えるんだって! 凄いよね」
へー!と関心しながら凜々についていくと綺麗な建物がたくさん並んでいる所に着いた。
「えーっとどこだっけ?」
凜々はスマホを見ながらその場所をフラフラと探している。
「だいじょうぶかな?」
「少し危ないですね」
そのまま少し進むと何度もスマホと建物を見て声を出した。
「ここ!さ、行きましょ行きましょ」
入口に置かれた看板にはビュッフェと書かれていた。
「…びゅ…ふぇ?」
「ビュッフェと書いていますね。何があるのかは分かりませんけど」
「食べ放題よ。何が好きか分からないからこっちの方がいいかなって?」
「うん! ありがとうお姉さん!」
店に入るとたくさんの食べ物があって僕の目は輝いた。匂いだけでお腹がいっぱいになりそうになる。
「すごい!」
「好きな物取っていいからね」
僕は見た事無いものに目を輝かせながら色々な物を取っていく。カクラジシは手が使えないからその分もお皿に入れた。
「はい!」
「ありがとうございます。」
皿を渡すとカクラジシは箸を操りながら器用に口にご飯を運んでいく。そんな事できるんだ。
「ん、これは美味しい!!!」
「じゃあ、ぼくも……おいしい!!」
「ふふっ良かった、良かった。やっぱりここは美味しいわね!」
1時間後
「デザートもこんなに美味しいとは」
「もうおなかいっぱーい」
「満足してくれたようで何よりね。」
凜々も食べ終わり口を拭いていた。
「で。これから貴方はどうするんですか?」
あっ忘れてた。悩みを解決するんだよね?
でも、何を解決したらいいんだろう。
「それがねー、なーんにも無くて…」
「すきなこととか?」
おにいさんが好きな事をしていれば大体悩みは何とかなるって言ってたけど。
「私、好きな人に色々合わせちゃうタイプで、あの人が居なくなってからしたい事も好きな事も何も無くて未来がないというか」
「これは重症ですね」
「だって!10年間一緒にいたのよ。もう体が慣れちゃって…水族館とか今みたらつまんない感じでさ。私依存しちゃってたんだね。」
10年?そんなにいたのに付き合わなかったの?好きってよく分からない。
「ねぇ。なんでこんなにいてもダメだったんだろう?」
「ダメというかですね。これは友達パターンでしょう」
小さい声で話すとカクラジシはすぐに答えてくれた。
友達パターン?
「他に…友達は?」
「いないわ。ずっとその子とだけ一緒でもう連絡も思い出したくないし取りたくないわ。あの百合狩め…!」
取った人はゆりかというらしい。あの表情を見る限り相当恨みがありそうだった。
「そうですか」
そういえば僕が生きてた時
いじめを僕にしてた人が、告って付き合えた今凄く俺幸せだわー!言ってたような。
付き合うには告ればいいのかな?
「なんで、こくらなかったの?」
僕が軽く聞くと彼女はびっくりして立ち上がった
「だっ、だだだだって恥ずかしいじゃない! そんなっかかか簡単じゃないの!」
凄い勢いで話した後、ハッと我に帰って顔を赤くしたまま座りこんだ。周りに人がいなくて良かった。
「いい!?この世は告ったら負けなのよ!!」
「そ…そうなの!?」
つまり、あのいじめっ子は負けたって訳か。幸せとか言ってたけど、かっこわるーい!
「違いますからね。真に受けないでください」
え…?
「よし、次は頑張るわ!」
彼女は吐き出すに吐き出した後、何故かテンションが高くなっている。
「そこまで恋愛にこだわりますか?別に今の世の中。あ」
「こだわるわ!好きな人と結ばれて1つ屋根の中で幸せに過ごす。それこそ人生のロマンだわ!」
「なるほど」
「昔から1つの事しか集中出来なくてずっとこんな事考えていたから、無くした時には空っぽで」
うーん、どうしたらいいかな?おにいさんならなんて言うだろう。
僕自身。おにいさんのおかげで変わろうと思ったんだ。
そう…そう!何きっかけがあれば、少しは前に進めるかも
「私にはなんの魅力も…」
「じゃあ、おねえさん!すきなことをみつけようよ!」
「そうですね。まずは探しながら自分が心躍るものを探す事にしましょう。それが魅力に変わりますから。」
カクラジシは僕の言葉に付け足した。
「うーん。そうかしら?」
「まずいっかい、やってみようよ」
「私達も手伝いますよ。」
僕とカクラジシは首を縦に振った。
「じゃあ探してみようかしら私自身を。本当に力になってくれるの?」
「うん!もちろんだよ!」
「……っ」
凜々の目にはキラキラと光があった
「いい?弥生くん。将来好きな子を見つたら攻めて攻める!きっと気持ちは伝わるわ」
「ぼく、しんでるんだけど…」
「恋愛に死も生も関係ないわ。とりあえず攻めるのが大事なのよ!」
「弥生。攻めすぎると嫌われるので機会を狙って少しづつが大事です。」
「そんなの取られるわ!」
「攻めるだけではいけませんよ!」
「うーん。「恋愛」ってわかんないや」