第3章 14話 精霊界
問題解決の為、精霊界を知る事にした僕。
クロクが案内してくれるらしいがまずは準備をしないとな
「……」
目を覚ますと机の上に具材が並んでいた。おそらく夜行性の精霊がきたらしい。そして、獲物を狩りに行ったのかクロクの姿はなかった。
「動くか」
僕は眠気を振り落としながら起きて歯を磨く。
このブラシは骨や毛を使って作るらしく、クロク達から作り方を教えてもらった。
「彩夢ーーいる?」
「あぁ。すぐに行くよ。」
ウェディの声が聞こえ、急いでステッキと呼吸器を持って外に出る。
「おはようウェディ。昨日の怪我は大丈夫か?」
「うん。もう元気…!」
ウェディは元気そうに羽ばたきガッツポーズをする。昨日の怪我の跡が全く見えないし治ったようだな。
「えい」
ヒューパタッ
いつものように特訓を始めると、ステッキから出た星はある程度距離を保ち落ちていった。
「最初はすぐ落ちていたし大分伸びたはず」
「だね!」
ちなみにだが、前にクロクに振って貰った事がある。彼が使うと30メートルほどは飛び、木を5本くらい貫通させていた。星なんて一瞬も見える暇もない。
なにより……
「これ、力入れすぎたら壊れそうだね」
と笑っていた。あの人どうなってるんだ?
いや、人間が通常の魔力を持つとあのくらいが普通なのかもしれない。ともかく、あれと比べるとまだまだだが、多少の変化でも喜ぶべきだろう。
「……やったね!」
「あぁ!まだまだ頑張るよ」
アラストリアの力が使えないが今の所は何とかなっている。おそらくアイツの事だし、頼りきりは良くないとか考えているんだろう。
「疲れた」
「休もー」
少ない魔力を使い切った後、僕は倒れながらに呼吸器をつけゆっくりと呼吸を整えていく。
何となく魔力を吸う感覚は掴んできた。
また立上がり練習を続けていると小屋の方からドンと音が鳴り響く。
これはクロクだな。
「彩夢ー! あっ練習してたんだね」
クロクは僕を見つけると嬉しそうに手を振って走ってくる。僕の服の裾を掴むと、僕とウェディを玄関まで引っ張るように連れていった。
「今日は大物を捕まえたんだ!」
「「――!?」」
そこにあったのは葉っぱの上にある大きな肉の塊だった。象くらいはあるほどのサイズで小屋といい勝負だな。
「イートマンモロウスだよ。流石に捌けないから魔法で一気に捌くけど部屋に入り切るかな?」
クロクはパチッと指を鳴らすと、光が差し込むように切れ目が入り解体していく。
「魔法」という物は全く便利だな。ここで血しぶきをあげながらナイフを頑張って捌くのは色々と大変そうだし、魔法に感謝しよう。
解体が終わったがまだ家には入らない。あとは手動で小さく小分けに切るために解体用のナイフで切っていく。
「この量は処分が難しくないか?誰かあげる人とかいればいいんだが」
「あぁ、今日案内する時に何人かには会うかも。あとおっちゃん達もいるかな」
久しぶりに会える人がいるのに、クロクはあまり会いたくなさそうな表情をしていた。
「多少は凍らせればいいしさっさと料理しようよ。」
そう言われ、僕は昨日の醤油らしき物を使い、クロクにサポートを受けながら焼きあげていく。
料理はクロクや精霊に教わったおかげで大体慣れてきた。ご飯を持っていくと精霊達も美味しそうに食べてくれている。
ついでに、今日は彼女達の横で食べていた。
「ご馳走様でした」
僕達もご飯を食べ掃除を終わらしすぐに外に出た。
「じゃあ精霊界を案内するよ。いちよう、家はウェディがいてくれるから大丈夫かな」
「うん。クロクさん任せて。久しぶりに楽しんできてね」
ウェディは玄関で僕達を送り出してくれた。扉の隙間から他の精霊も手を振っている。
姿もあまり消えないようになったし、最初は部屋すら出なかったのに……クロクはその様子を見て嬉しそうだった。
クロクは歩きながら精霊界について教えてくれた。
「この世界は、天界、現実、地界が並んでいるのは分かる?」
「地界?」
「冥界、地獄、魔界。全部をまとめた言い方だね」
なるほど。実際には地獄だけじゃないんだな。考えてみれば天空や天国とかあるらしいし色々あるようだ。
「その世界が1列に並んでて、そこから少し離れた横の方にひし形のような形がある。 それがここ精霊界だよ」
クロクは歩きながら空間で指を動かしながら図を描いていた。縦に並んだ3つの横広い丸の東側に縦長いひし形を描いている。
「そうなっているのか。ちなみにここはどの辺だ?」
「現実と天空の間の方だね」
クロクはひし形の現実に近い角から上の角の辺をなぞった。
「ちなみにそれぞれの影響は少しあるよ。現実は噂好きだし色々だね。地界は血気盛んな子が多いし、天界よりは正義感強かったりのんびりしてる感じかな」
「影響か」
「君が行ったのはのは現実よりの場所。見えない物は怖いから見える物を攻撃する。そんな考え方が最近強くなってるね」
病気が見えないからその人を否定するという意味か。その他にも思い当たるし、なんか地味に刺さると僕は思いながら聞いていた。
「ここは精霊界の中心。色んな精霊達が共存している場所だよ。」
名前などは無いらしい。なら都市にでもしておこうか。見た事がある大きな木も見える。
もしかしてここ。
「僕が最初にいた場所か?」
「そういえばフェアエストに会ったんだったね。きっとそうだと思うよ。」
クロクは懐かしむように街に入っていった。葉っぱで包まれた建物を不思議そうに見つめている。
「気になるのか?」
「ずっとこもってて、町に出るなんて考えていなかったから色々面白くて」
中に入ればいいのに。もしかして、気にかけて我慢しているのだろうか?
これまで誰かと街を歩くなんてした事はあまり無いから楽しみたい。いや、色んなものを見て精霊界を知ろう!
都会の高校に行って近くに有名な商店街があると知っていても行く人が居なくてすぐに帰っていた。一緒に行く人が居ればなんて考えてたが、今はクロクがいてくれる。
少しゆっくりするのも悪くないだろう。
「じゃあ色々見てみないか?僕も気になるし」
「いいの?」
「あぁ。僕も街を歩く事あんまりしないから、一緒に探検でもしながら行かないか?」
「いいね! 勿論だよ」
ということで、僕とクロクは町を色々と探索していた。
木の彫り物に花の栞、どれを見ても独特で見たことがない。彫り物の技術もすごいな。
翼が全身に生えた丸い物体がある。なんだこれ?
「これは魔精というイメージだ。人間の子よ。」
店にいた銀髪の精霊がニヤッと笑いながら話しかけた。耳はエルフのようになっていて、羽や立派な筋肉がついている。
「魔精?」
「魔力に宿るとされる精だ。あくまでイメージだが、まさかこれに目をつけるとは」
「とてもいい作品ですね。感慨深い!」
僕と店員は腕を組みうんうんと頷きあう。
「そうだろそうだろ!はっ! まさか……人間、君も芸術を極める者か!?」
精霊は嬉しそうに僕に期待の目を向け手を握る。
「僕も軽くしてまして。彫刻ではないですけど! 漆っていうんです。」
精霊は一瞬キョトンという顔をした。
「漆?」
「触るとかぶれる樹木の液体ですね。まぁー塗ったり、形が作れるものです。」
「おっ?そのような液体なら似たものなら知っているぞ。地図を書いてやるから見てくればいい」
立派な筋肉を動かし木の板がゴリゴリ言っている。
「本当ですか!?ありがとうございます!」
「彩夢どうしたの?ん、なんかここ暑くない?」
この世界にもあるなんて。確かにここは自然豊かだしあるかもしれない。
クロクは貰った木の板を?を浮かべるように見つめていた
「さぁ行ってこい。我が同士よ! はっはは!」
「ありがとう、我が同士!」
「……」
僕は戸惑うようなクロクに道案内を頼み再び歩き始めた。
「漆?よくわかんないけど気になるな」
「是非みてくれ!」
そう言うと、クロクはクスッと笑う。
「彩夢も楽しそうだね!」
ずっとクロクの事を気にしていたが、僕もいつの間にか笑顔になっていたようだった。
「はい彩夢!」
歩いている途中に、クロクは建物に入り小さな実を持ってきてくれた。
「フェアの実っていう精霊界の特産品だよ!」
「ん、美味しい!!!」
「でしょ!やっぱり外は気持ちがいいね。」
「あぁ、この問題が終わったら今度は精霊達と一緒に行きたいな」
「いいね!」
「現実の町ってどんな感じ?」
「色々ありすぎて簡単に言いきれないな…
まぁ、1日は軽く潰れるかな」
「へぇ…見てみたいな」
「機会があれば今度は僕が案内するよ」
「…覚えておくよ。彩夢!」
次回、
弥生編へ
彩夢編の次回はスプラウトの話が出てきます
お楽しみに!




