第3章 弥生編 12話 海辺の少女
僕とカクラジシは次なる転生者を探しに行く
――現実
「まだー?」
僕はカクラジシに従いながら歩いてた。でも、一方人つく気配がないから疲れてくる
ガラスを見ると天空の時と同じで顔は変わっていなかたった。なんでだろう?
「ここの大通りを越えた先から予感がします。」
じゃあ、もう少しかな?僕は元気を振り絞るようについていく。
「みてー! レイ様よ!!」
「本当だ本当だ!」
大きな広場を通っていると、女の人達が叫びながら指を上にあげていた。
レイ……?なんか聞いた事あるような。
人の集団は建物に張り付いた映像を騒ぎながらみていた。
「なにあれ?」
僕が訪ねるとカクラジシもその方向に顔を向ける。
「皆〜!ありがとう!!」
「キャー! レイ様ー!」
レイと呼ばれている人は映像の中で元気に手を振っている。
「あれは……アイドルという物でしょうか?ある女神から聞いた事があります。」
「あいどる?」
「アイドルってのは歌って踊って皆に希望を届けるレイくんみたいな人よ!」
「――うわっ!」
ぼーっとしていると、お姉さんが前かがみになってこちらをみていた。ついびっくりしちゃった。
「あっごめんなさい! じゃあ、お詫びにこれ!」
女の人は頭をペコペコしながら1枚の写真を僕にくれた。そこにはレイという人が楽しそうに写っている。
「今ね布教してるの! 沢山あるからあげるわ!」
「ふ、ふきょう?よくわかんないけど、ありがとうおねえさん」
お礼を言って写真をポシェットに入れた。僕は人混みを抜けながらまた歩いていく。
レイ。何処かで?
(「零!」)
「あっ!おにいさんがつかってるなまえ!」
「そういえばそうですね。きっと彼が由来でしょう。」
モヤモヤが晴れスッキリしながら歩いていると大きなマンションの裏に海辺を見つけた。
「ここですね。」
僕はキョロキョロと周りを見まわすとひとりの少女がベンチに座って海を見ていた。
ん、何かブツブツと言ってる。
「話しかけにくいオーラが漂ってますね」
「あのひとなの?」
「おそらく」
僕はこっそりとその人の後ろにある木に隠れてみた。
「なんでなんで。なんでこうなっちゃったの?もう嫌よ、死のうかしら。生まれ変わったらもっといい出会いがあるはず……でも死ぬって怖いわよね。全て失っちゃう訳だし。家族は居ないけど死んで解決なんて頭おかしいわよね。そもそも…天国に転生なん…。あ」
ずっと下を向いて何かを言っていて、耳をすませばギリギリ聞こえる。
しばらく聞いていると急にカクラジシが僕の肩から飛び降りた。
「聞いていたらキリがありません。」
「そこの貴方、顔をあげなさい」
カクラジシは彼女の前にちょこんと座って声をあげる。
「えっ… ?」
彼女はゆっくりと顔を傾げながら目をぱちぱちとしていた。
「ぬいぐるみ…がしゃ…しゃ」
「私の話を」
「喋ったああああああああああぁぁぁ!」
彼女は魂が口からでたように倒れた。えっどうしよう
「どうするの?これ」
「どうしましょうか。少し様子を………」
とりあえず様子を見る事にした。周りからしたら眠っているように見えるし騒ぎにはならないはず。
僕は頑張って彼女をベンチに置き、カクラジシを持ち上げて座らせた。
――数分後
僕は起きるまでの間、砂でお山を作っていた。
「できたよ!シカさん!」
「よく出来ましたね。その呼び方は変えて頂きたいですが」
「あれ、私は……」
気づくとゆっくりと起き上がっていた。
急いで傍により覗きこんでいると彼女は目を大きく見開いて飛び上がった。
「誰!?」
あー名前言わなきゃ。でも、この顔だし名前どうしよう。
「この子は光希です。で、私はカクラジシと申します。」
彼女の顔は強ばりながらガクガクと横をみる。
「あれ夢だと思ったはずなのに……ははっおかしいな」
「ぬいぐるみじゃありません。私は生きてます!」
カクラジシはしびれを切らしたように、ぬいぐるみの姿を辞め姿を元に戻る。
「変形!? まさか最新の鹿の人形!?」
「鹿でも、ぬいぐるみでも……ありません」
カクラジシはブルブルと震えていた。これはなんか嫌な予感がする。
「ぼっ…ぼくがせつめいする!」
――数分後
「あぁー! 天空から鹿の神様がきたって訳ね!」
「鹿…もういいです」
カクラジシは諦めたような顔をしていた。
といわれても、見た目鹿だし………説明しやすかったし。
「それより、速く終わらしましょう。弥生頼みます」
「うん! ねぇねぇ、なやみとかない?」
僕が聞くと女の人は少し考えて口を開いた。
「うーん、じゃあ私の愚痴聞いてくれない?それだけでいいの」
「それだけ?」
「私。話聞いてくれる人いなくて」
その言葉を聞いた瞬間に僕とカクラジシは頷きあった。
「もちろん!何でも聞くよ!」
「はい。そのくらいなら。あぁ、何でもとは言いましたけど弥生はまだ小さいのでそれを忘れずに」
それを聞くとパッと顔が明るくなった。多分、1人でずっと考えていたのかもしれないね。
「ありがとう。じゃあベンチに座って」
僕は隣に座りカクラジシを膝の上に置いた。
「じゃあ話してみてください。」
「あのね、私、好きな人いたのに取られたの! あのクソ野郎っ!!!」
急に声が張り上がり僕とカクラジシは飛び上がった。
「あんな猫かぶりー!何がいいのよ!!!」
彼女が感情を爆発させると周りが僕達を見始める。僕はカクラジシを軽く撫でながら聞いていると急に肩まで登り声を出してきた。
「うるさいですが少し聞いてあげましょう。あれは随分溜め込んでますよ」
「そうなの?」
僕はその後もずっと聞いていた。まだまだ終わりそうにない。もう1時間は過ぎたかも。
「ああぁんもう! 運命の馬鹿!」
足をバタバタしながら泣き始めている。
「どうして!私の方が…うう好きだったのに!」
彼女は急に立ち上がって海へ駆け出し、ドカッと僕の山を蹴り飛ばす。
……え?
「がんばって…つくったのに……」
「なっ泣かないでください。もっと大きな山を後で作りますから! ね?」
「うん。」
僕は色んな感情を抱えながら彼女の後ろ姿を見ていると、海まで走っていく。
「あああああ!もうこんな人生嫌だああああ!」
彼女は海に足をつけながら涙をこぼしていた。
「れんあい?って大変なんだね」
「そうなんでしょうね」
「あんな奴!ネットでヤバい人に捕まって、ホテル連れられ……」
「これはまずい」
その瞬間カクラジシは僕の耳に小さな手をあてた。
「なにするの! 聞こえない」
「聞かなくてもいい事があるのです!」
その後も僕はどうすればいいのか分からないまま見ていた。
大体2時間後、やっと彼女は泣き止んだ。
「ぐすっ…うう………」
「どうですか?落ち着きましたか」
「うぅ…あっ、なんかごめんなさい。色々聞いてもらって………」
彼女の見る空には日が沈みかけている。少しずつ空のオレンジは青に染まっていた。
「だいじょうぶだよ。スッキリしたならよかった!」
「ありがとう。弥生くんと鹿さん?」
「鹿……カクラジシです。」
「あっごめんなさい!私は凜々(りり)。覚えといて」
「うん!」
彼女はスッキリしたような顔をして体を伸ばす。
「また明日来てほしいな。今日は暗いから明日で良ければ軽く美味しい物奢るよ」
「いいのですか?」
「うん。お金はあるからさ」
なにか少し引っかるような表情を彼女はしてい。
「では弥生。今回はご好意に甘えましょうか」
「うん、ありがとう! おねえさん。」
その後、凜々は手を振りながら帰って行った。
「彼女は寂しそうですね。」
「わかるの?」
「なんとなくですがね。なので、少しだけでも近くにいてあげましょう。」
「それでなんとかなる?」
カクラジシは下を向いて少し考えていた。
「どちらにしろ。あのままでは何も出来そうにありませんでしたし。前を向いてもらうにはこれが正解ですよ。」
「そうだね!ありがとう、カクラジシさん」
「鹿…あ。ちゃんと呼んでくれましたね。」
「うん、おぼえた」
「ちなみにカクラジシで大丈夫ですよ。」
「うん、わかったよ。カクラジシ!」
――天空――
「サウドじゃないですか」
「久しぶりですね」
サウドはウィストリアの顔を伺いにスプラウトの元に来ていた。
「……大丈夫ですよ。だって、ウィストリアさんですから!」
「そうですね」
サウドはスプラウトの横に腰掛けた。
「あの、スプラウト様」
「スプラウトでいいですよ!同い年ですし」
「そう……だったな」
スプラウトはお茶をくみサウドに手渡すと、ウィストリアの書物を大切そうに膝にのせた。
「でどうでしたか?転生者は」
「それが」
「来ないんだ、1人も。」
「そうですか。やはりフォルナさ…、フォルナが」
「行方不明数名。そして行方不明の1人は…あの…」
「桜弥生くんですね。ウィストリアさんが何年もこもってずっと探していた人間の1人です。」
スプラウトは泣きそうになりながら書を閉じ、ウィストリアの隣に置いた。
「ウィストリアさんはずっとずっと、責任を追わされて………全部失っても影で必死に頑張っていたんです!」
「なら、やる事は決まっている。私達天界の軍は例の件を進めよう。争わなくて良くなった今なら出来るだろう」
サウドが扉を開けると風が吹き荒れていた。
「まずはそこからですね。私も手伝います。」
「絶対に許しませんから! ルシフ・フォルナ!!」
「ねぇ、おにいさん! 「れんあい」でおちこんでいるときは、どうしたらいい?」
「……恋愛?…………ははっ、嫌な事があったら走るだけだ!」
「さっすがおにいさん!」
「よし! 走るぞ海の彼方まで!」
「……彩夢。馬鹿な事を教えないでください。そういえば…貴方は恋愛になると、急に脳筋になって逃げようとすると紙に書いていましたね」
「なんだその情報……まぁ、趣味を見つけるとか、楽しい事でもして麻痺させればいいんじゃないか?」
次回彩夢編
2週間後になります!すいません!




