第3章 10話 経過
――精霊界
「えい、えい!」
僕は必死にステッキを振りかざしていた。星がゆっくりと出てきてはすぐさま落ちる。
その繰り返しだ。
高校生にもなって、デコッた魔法少女みたいな杖を振り回しているとか。周りから見たらやばい奴だとは思われるだろう。
しかし、辞める訳にはいかない。なにがあってもいいように絶対に強くなってやる。
「まだ。あと1000回。」
「うでの感覚が…やばいんですけど」
「いいから。気合い」
せっかくの決意が消えそうになりながらも、ブラック部活の顧問みたいなウェディと練習していた。
ここに来てからざっと3日は経ったはずだ。
朝はウェディと特訓し、あとはご飯を作ったりクロクの手伝いをしている。
幸い、時間が短いからか朝夕だけのご飯でいいらしく僕の負担はそんなにない。
と言っても量が多いから負担はあるか。
「今日はこれ!」
クロクはニコニコしながらドアから大きな蟹のような物を持ってきた
身体は白く手足が20本。
後ろには羽が生えている。
「イートクラブって言うんだ!美味しそうでしょ?」
イート種は食への感謝から生まれて、食べられる事を誇りに思っているとか。
しかし、感謝しないで食べると先で数が減るどころか、怨念を持たれるなどなど変わった族だ。
それでも、精霊達が食べられる唯一の肉や魚らしく精霊達は感謝しているらしい
あと、食べることが出来る代わりに何故か物凄く強いらしい。ひどい設定だな。
「昨日はイートースだったから魚類でしょ」
「あぁそうだな」
僕は机にはみ出した蟹を見た。これは捌けるのか?
蟹は魚類なのか?
昨日は馬肉らしい物だけを袋に入れて持ってきたが。
「どうしたの?」
「なんでもない。」
強いのにも関わらず、ニコニコと毎回毎回余裕そうに持ってくるクロクは何者なんだろうか。
「さぁさぁ。クッキング開始だよ」
クロクは鼻歌を歌いながら胴体をスパッと切り落としていく。
僕はその切られた足を取りナイフを突き刺しながら身を取った。
夜の分も残して鍋にでもするか。
「あぁ。昨日おっちゃんからもらったやつ…持ってきてくれない?」
「あぁ。わかった」
夜になるとおっちゃん達?から色々な物を貰う。
1部の夜行精霊が居るらしく彼らはクロクに協力を影ながらしているようだ。
「こんな夜まで?」
「夜も動かばいが世界は回らんじゃろ」
「いつもお疲れ様です。」
そんな会話をして2回目の昨日の夜だった。
「クロク様。」
「はーい、あっ、おっちゃん達!」
毎日、木の箱にいれた米のような物や水、野菜、果物、木の実をくれる。
「こんな事しか出来ませんが」
「いつもありがとうね。おっちゃん。」
「こちらこそです。昨日の肉は美味しかった!」
「そっか!良かった」
ニコニコ話すクロクとは別に、僕は真剣な表情であるものを彼女から受け取っていた。
「これは前のやつじゃ」
「ありがとうございます!」
「見習い頑張りなされな」
「はい。」
後ろからおばあさんが現れては僕を叩いた。可愛いがられてはいるんだろう。多分。
何故か僕を見習いだと思っている。都合がいいから別にいいが方言が無茶苦茶すぎないか。
少し厳しいが人間の僕に協力もしてくれているし、頼りになる存在だ。彼らも森を焼かれた被害者なのに、恨む様子も見せないし。
「わりゃが歩いてたら急に焼かれてもうたわ。変な魔法がとんでくるさで何もできんっつうねん。で、精霊達も巻き込まれてるんさ! 怒りしかわかんねーべ。」
この人達は自分の仕事をしながら人間が居たら報告をクロクにしているようだ。
「そう。分かった。僕が見ておくよ」
「ありがとうございます。クロク様。」
まだ人間の生き残りは多いらしく害を与える人もいるためクロクも大変そうだった。
「じゃーね!」
――今
僕は彼らに貰った米をじっと蒸していた。
機械がないし、蒸すと言っても物凄く時間がかかる。
磨製石器のような物もあったし大体の発展文化は古そうだ。
「精霊たちはね。昔から文化の発展より自然の環境を豊かにしようとしてきたんだ。だから魔法を習ってない子は人間よりも弱い。」
「そうなのか」
クロクによれば夜行性の精霊たちもあまり力は無いらしい。
「魔素を持っていても使い方が分からなければ無いのと同じだよ。」
その一方で、魔法を使いたがる人間にとっては魔素が溢れる程あるから都合がいいと。
「なら、魔法を覚えれば対抗できるんじゃないか?」
「うん。出来ると思うけど皆覚えたがらないんだよ。興味が無いというか。1部の種族が覚えるものって認識だしね。それにここは豊かだから必要だと思わない。」
精霊界に住む精霊たちは自然の発展。例えば、栽培とか、種を混ぜて花を育ててみたり。そんな子達が多いらしい。
戦いを嫌い助けあう。それがここの文化だ。
「ねぇ、彩夢」
ぼーっとしていると、大きな草をクロクは抱えて見せにきた。
「野菜も大事だよね。」
「もちろんだ。」
クロクは一瞬で切り刻み皿に盛りつけている。速すぎて目が追いつかないが。
皿といっても葉っぱを重ねただけだが。触ってみると丈夫に出来ているのが分かる。
「よし、完成! 持っていこう」
「あぁ。」
ご飯が出来あがると、すぐに精霊たちの元へ持っていった。
「あり…がとう………」
「沢山食べてください」
何回かしているからか、多少は心を開いてくれたような気がする。クロクが後ろで見ているから安心しているだけかもしれないが。
食べている間に僕は掃除をする場所を考えていた。
「ここはもう綺麗じゃない?」
僕達は部屋を6つに区切って1つずつ潰していく作戦を立てていた。一気にやろうとしても、ここは何十人もいる部屋だし広すぎるからな。
前に掃除した場所の床と壁に指を擦ってみると、手に埃は着いていない。
「よし完璧だ。この調子で行こう」
「うん!やっておくね。」
僕は、クロクに掃除を任せ外に出た。ウェディに頼み魔法で浮きながら小屋の壁を石で四角に描いていく。
「何これ?」
「日が入るようにするんだ。」
「へぇ………」
精霊はほぼ外にいる事が多いから、尚更日を当てる必要がある。これなら光が入るはずだ。
僕は、とりあえず10箇所に描ききった。
あとはカーテンの代わりに、何かを用意してくり抜くだけだな。
「お疲れ様」
「ありがとう。ウェディ。」
僕は肩をクルクルと回しながら息を整える。
疲れたが、まだやることがある。
「ねぇウェディ。」
「ん、どうしたの?」
僕は彼らに貰った例のもの……葉っぱに書かれたものを見せた。
「ここに連れて行ってほしい。」
「確かにあそこは結構迷惑なんだ。うん、まかせて」
ウェディについて行き、1つの山をこえ、ある街に足を踏み入れた。
「声の情報網は厄介だからな。すぐに終わらさないと。」
「うん。」
街に踏み込むと、すぐに男の声が聞こてきた。
そこには精霊たちの群れがありザワザワと音たてる。
「皆さん! 例の街の精霊のあの現象! あれは私達にも移る、とてつもなく危険な物だ!あの街は排除しなければならない! 彼らは危険な存在だ!!」
「そうだそうだー!」
「排除!排除」
これは不味いな。
こんなヤバい政治家みたいな奴がいるとは。
まずは挨拶がてらだ。軽く息を吸い、声を高めにする。
「へぇ。ならその証拠僕に教えてくれない?」
「――なんだ君は!」
「さて、掃除も終わったよ。どうかな?……うん。そう。あの彩夢くんのおかげで楽になった。正直、人間なんて嫌いだったのにな」
「……………」
論より証拠。証拠が無い言葉に興味はないんだ。
僕もあることない事言われてきた人生だ。
さぁ。話し合いといこうじゃないか
その頃、クロクは
次回もこのくらいをよていしてます!
9話改変はもう少し遅くなります。申し訳ありません!




