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地平線の仲介者 〜死んだはずの僕が現実で転生を止める役目を受けました〜  作者: 大井 芽茜
第三章 精霊界徘徊編!

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第三章 7話 人間

精霊が人間鬱という病気らしい…

僕は特訓と共にそれを解決する事にした

「ちなみにわしはフェアエストじゃ。この精霊はウェディ」


 風の精霊は僕にお辞儀してくれた。他の精霊は何処かに行ってしまったようだな。



「……よろしく」

「よろしくお願いします。」

 彼女は少し怖がっているが頼ってはいるようだ。なら、頑張るしかないな。



「ウェディ、カクラジシさんに会いに行くから案内を頼んでも良いかのう?」

「はい。分かりました」



「後はウェディに聞いておくれ」

 フェアエストは僕に背を向けて何処かに向かうようだった。カクラジシなら天空だろうか?



「あっあの」

 僕は天空に向かうのを咄嗟に呼び止めた。



「何じゃ?」

「僕は元気だと伝えておいてください」


 他の人もそうだが、きっと弥生はものすごく心配しているだろう。ブレスレットがあるが伝わらなかったら意味ないし。



「ほっほっほ。勿論じゃよ」

 フェアエストは杖を上にあげて振りながら消えていった。


「……じゃあ案内するね」

「お願いします」

 僕は、スっーと飛んでいくウェディについて行った。やはり羽かあると便利そうだな。



「っこれは」

 さっきまで居た所は大きな木の上だったようだ。20m程まで地面から離れている。この高さは羽がないと降りるのが困難だろう。



「大丈夫。じっとしてて」

 ウェディは僕を風で包むように、下へ降ろしてくれた。


「ありがとうございます。」

 木でみえなかったが、町は全ての建物が自然で出来ていた。木から顔を出して見てくる精霊やビーバーの巣のような物で生活している精霊もいる。


 自然。もし人間がいなければこんな世界になっていたのかもしれない。人間の文化が浸透していない世界は新鮮だった。



 僕は見たことのない世界に密かにテンションが上がっていた。

「気に入った?」

「はい。最高ですね」


 僕が答えると少し間があってから声をだした。

「あの普通に話していいよ」

「いいんですか?」



 僕は会ったばかりの人は何故か遠慮してしまうのが癖になっている。気軽に来てくれたら流されるが。


「うん!」



 ま、彼女がいいなら大丈夫だろう。

「じゃあタメで。」

「タメ?」


 僕はウェディに案内されながら町の外れを歩いていた。多分、人間だからあまり姿を見せない方がいいようだな。



「そんなに見て面白い?」

「皆違っていて人間とは違う種族を学ぶのも興味深い」

 精霊と言っても、小さい子だけでなく獣や大人のような子もいて色も違う。


「そっか。特にここは沢山の種族がいるよ」

「へぇ」


 精霊と言われれば大体イメージが思い浮かぶが、実際に見てみると予想を越えるものばかりで、僕の興味を引き立てる。



 暫く歩くと町を越えたらしく、ただ山道のような場所をただひたすらに歩いていた。


 そういえば


「あの」

「どうしたの?」

 ウェディはすぐに僕をみて首を傾げていた。



「アラストリアを見て怖くなかった?僕が怖いなら……」

 皆、震えていたしウェディだって怖がっていた。怖いなら道を教えてもらって別れても構わない。



「少し怖いけど、もう貴方しか頼れない」

 ウェディは悲しそうな声で途切れ途切れに呟いた。



「時間が無い」

「時間?」


「うん。……もうすぐ消える」

 僕がこうしている間にも、死のカウントダウンはどんどん進んでしまっているらしい。ならすぐにでも行かない


「じゃあ走ろうよ」

「え?」


 ウェディは飛んでいるし身体に負担は無いと思う。それに僕も寝たっきりだったからこの場所を利用して体力をつけるのも大事だろう。


「………じゃあ、スピードあげる」

「うん」


 僕はスピードをあげたウェディに置いていかれる事なくついて行った。中々そんな人間がいないのか、彼女は僕の走りを見て驚いている。


 まぁ体力が無くて途中で少し歩いたが。



 暫く走っていくとまた小さな町が見えてきた。前の町に比べると目に見えるほど活気が無いのが分かる。


「皆、ここで隔離されてる………」

「隔離?」


「人間鬱。見た事無い病気だったから怖がられて無理やり連れてこられて監禁された。」


 扉に入ってもいないのに、周りの森からの空気が急に重い気がする。こんな場所にただ閉じ込められているなんて。


「うつらないのに」



 人間も同じような事を聞いたことがある。確かに分からない病気を怖がるのは分かるがな。


「なら、大丈夫という事を証明しよう」

「証明?」


「僕に考えがある。」

 今、思い浮かんだ考えをウェディに話してみると嬉しそうに羽をパタパタと動かしていた。



「それなら! 私も手伝う」

「ありがとう」



 僕達は町に入ろうとすると

「ピエピエ!」


 門の外にいたのか、急に精霊が現れて叫んでいた。

 おそらくずっと見ていたようだ。



「ん?」

「………危険だって言ってる」



 ウェディはそう言いながら、精霊に近づいていく。

「危険じゃない!」


 ウェディは声を震えながら一生懸命に言い合っていた。あちらも善意だと思っているのか1歩も引く様子もなくピエピエ言っている。



「ピエー! ピエ!」

「……友達の悪口を言わないで!」


 大人しいはずのウェディは泣きながら叫んでいた。聞き取れないがやるしかない。

「ウェディ」

「…?」


 泣きながら僕の声に耳を傾けていた。

「僕に任せてくれ」



 僕はスっと、ウェディと精霊の間に入り争いを止めさせた。

「安心してくれ。僕は天空から呼ばれた凄い医者だ。」

「ピエ!?」



「彼女は助手でね。手が足りないから、君も手伝ってくれるかい?」

 そう言うと精霊はびっくりしたように慌てて消えていった。まぁ、精霊から見たら僕は異例だし嘘でも信じてくれるだろう。



「大丈夫?」

「……うん。あり…がとう」


 ウェディはずっと泣いていた。ハンカチでもあれば良かったんだが。



「絶対に助けるから。じゃあ行こうか」

「……うん」

 なんとか争いは止めらたし、ウェディが落ち着いて良かったが早く助けないとな。



「ここ」

「これか……」


 少し歩くと、僕達の前に大きな影が現れていた。ここの小屋だけは人工物のようにしっかりしている。



 扉はつるだらけで見えないし開けることも難しそうな感じだ。つるは太くちぎって切るには時間がかかるし、日が暮れそうだ。


「ナイフでもあれば」


「これ…」

 ウェディはどこからかナイフを取り出し渡してくれた。

 ナイフ。と言うより、これは打製石器みたいな石のナイフにみえる。


「先に行ってくる」

 すぐにウェディは上にあった小さな隙間から入っていった。速くここを開けないとな。



 ザグッ

 家では農家もしているし経験はある。

 僕はつるを掴みナイフで振り落とすと簡単に落ちていった。切り味はいい感じだ。



 数分後

 僕は手を入れ替えながらも全てのつるを切り落とす事に成功した。

「はぁ…はぁ………」


 天空より身体が動かないが鍛えておいてよかった。

 さぁ、ここからだ。



 僕はグッとドアを押した。


「ん……?」

 ダンッ

 体当たりしてもビクともしない。



「ん〜?」


 ガタッ

「――!」

 急に音がなると、僕の方に扉が開き僕に襲いかかってきた。


 ガンッ

「いてっ」



「ごめん。それ引き戸だよ」

「え……?」

 そこに居たのは居るはずもない人間だった。

 まるで人形のような体格に長い金髪で赤い眼をしている。



 服はボロボロだったが、彼はそんな事を気にすることなく僕を部屋に入れてくれた。

「この扉を使うのは久しぶりだね」



 声は男に聞こえる。髪は長いが。多分。

「君の事は聞いているよ。僕だけじゃ手が足りなくてね。僕はクロク。よろしく。」



 クロクはニコッと僕に手を出した。

「僕は彩夢だ。よろしく」


 お互いに握手を交わすと、僕は話を切り出した。

「でも、どうして人間が?」



「人間も少なからずいるんだよ。そして、人間の言葉でボランティア?みたいな感じでサポートしてる」


 見る限りここはキッチンのようだ。物が散らかっているが、最低限の整理はこの人がしているようだ。



「ボランティア?」

「人間がした事は僕にも責任があるからね」

 クロクは、表情を曇らせながら含みのある言い方をしていた。


「人間が何をしたんだ?」

「知りたいなら教えてあげるよ。」

 そう言いながら、クロクは椅子を僕の元に持ってきてくれた。木を切った楕円系の椅子か。


「どうも。」

 軽くお辞儀しながら腰掛けて、クロクと向かいあっていた。



「そうだね。簡単に言うと、天空に収まりきらずある人がここに転生者を連れてきたんだ」

「ある人?」


「それはちょっと言えないけどね。まぁある人さ。」



 そんな調子でゆったりと話していく。

「精霊界は人間からみたら珍しいでしょ?それに……精霊に対して道具のように扱う人間がいる」



 クロクが指を鳴らすと映像がうかびあがった。そこには、可愛らしい人間と精霊が描かれている。



「最初来た時は歓迎したんだ。人間の想いから生まれた妖精は特にね」


 彼によれば、精霊の種族にある妖精は人間から生まれ小さい小人のような形をしているらしい。


 ウェディもその類だろう。



 映像の精霊達は、人間を囲み木の実などを渡している。

「でも、人間にとってはゲーム世界のような感覚なんだろうね」



 人間は1人の妖精を捕まえ笑いながら羽を1枚ちぎっていた。

「――!」

「いつか、人間は自分の好奇心のままに動き出した。攻撃しない……つまり、自分より立場が弱いと思ったんだろうね」



 その後も、髪を引っ張ったり無理やり身体を触ったシーンが流れていく。

「そして……いつの日か。人間は群れて勝手に文明を築きあげていた。」



 シーンが変わり、人間は笑いながら火を森に放った。自然は焼き落ち、その炎の中には精霊達もいる。


「…」

「人間は自分の利益の為に自然にさえ手を出す」



 さらに木を切り落とし人間は焼き地に家を建てた。大きな建物……これはここだろうな。



「人間は自由と共に理性を捨てた」

 クロクの言葉と共に、沢山の精霊を捕まえ焼け地に戻っていく。



 獣には首輪を無理やりつけて鞭打っていた。獣は怯え……命令に従うを得ないようにみえる。



 可愛らしい妖精は建物に連れていかれ悲鳴が飛び散った。


 他の精霊は人間の営みの為に働かされ、ボロボロの精霊は使い古された道具のように土に埋められる。



「そうやって人間はここで生きていった。」

「酷い。うぇ……」


 僕はそのシーンが終わると、胸焼けと頭痛に襲われていた。叫び声が………感覚が……視界が…


 一体になるような。

「ごホッ…!!」


 砂をかけられる精霊の視点そのものの気分だ。

「大丈夫かい?」



 クロクは僕を揺すっては、すぐに葉っぱに乗った水を渡してくれた。

「すまない。」

「別にいいよ。それにしても君は感情移入しやすい体質かな?少し、刺激が強すぎたかもしれないね」


「大丈夫。」

 僕は軽く息を吸って体調を治していた。



「で人間はどうなった?」

「天国から神が来て、そこに居た人間を灰にした」


 画面は一気に明るくなると、空から神達が現れ人間を消していく。

「まぁ、おかげで精霊界と天界の関係は悪くなったけどね」



 セイファが言っていたのはこれか。でも、天国ならスプラウトではないよな?


 どうやって仲良くなったんだろうか。



「まぁ。問題は解決したけど精霊の心は壊れてしまった。」

 ボロボロの精霊は泣きながら歩いていた。土に埋まった精霊を必死に掘り出しては、抱きしめながら絶望している。



「その後……精霊はショックで身体が消えかけるようになってしまった。それが今。だけど、他の精霊が怖がってこの場所に隔離というよりは押し込んだんだ。」



「本当はすぐにでもこんな町。出ていきたいのにね」

「出れないのか?」

 僕が聞くと、クロクは微笑していた。



「見張りがいてね。出たくても出れなかった」

 シーンはまた変わり、外に出ようとするのを止めるように他の精霊が来るなと言っている。


 さっきピエピエ言ってたあいつもか。



「なるほど。でも、クロクは消されなかったのか?」

「うん。僕はこことは違う町で遊んでいたからね。知らなかった」

 運が良かった。と言っていいのかは分からないが。



「こんな事があっても精霊達は同じ人間である僕を殺さなかった」

 確かに、彼らはアラストリアを見ても殺そうや排除しようとはせず、隠れていただけだった。



 きっと、皆は人間と仲良くしたかったはずだ。

「だから恩を返したいんだ。」



「なるほど大体は分かった。ありがとう」

「それほどでも無いよ。」


 クロクは指を鳴らすと、映像は消えていった。

「僕だけじゃ限界なんだ。だから君の力を借りたい」


 今は彼がいるから、ここの精霊達もギリギリだが消えていないのか。笑ってはいるが、隈が見えているしあまりご飯を食べていないようだ。


 1人なのに頑張っていたんだな。



「もちろん。最初からそのつもりだ。」

「ありがとう彩夢。助かるよ」

 クロクは嬉しそうに微笑んでいた。

そして、僕達は動き出す




読んでいただきありがとうございました!

彩夢と弥生は2話1話で構成していきます


次の更新も土日くらいになります

また、読んでくださいね


初評価を頂きました。ありがとうございます

これからも頑張ります!

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