第3章 5話 想い
僕はアラストリアを使い、倒れて精霊界へ…
で、精霊のおじいさんはアラストリアについて聞いていた。これは昔の事だ…
「僕が小さい頃」
ある時、僕は裏切られた事があった。僕に悪事を全て擦り付けられた僕はただ絶望した。
『少年泣くな。お前は悪くない。お前は償った。』
「――!」
そんな時に声が聞こえた。聞こえたのはおそらくアラストリアではなかったと思う。
その後、1つ変わった事があった。風の声というか、雰囲気を感じ取れるようになった。嫌な予感を教えてくれたり、辛い時に同情してくれるような優しい風が僕に吹いていた。
クラスは荒れていた。集団が力を持っているのにも関わらずその時の僕は正義ぶって噛み付いていた。
アイツらにとってはそれが面白かった。からかわれるような事はあったが、過度ないじめは無かった。
でも、人の揚げ足を取るように粘着され、からかわれて友達も近づかなくなった。反論しても集団に馬鹿にされ続け何もしなければ調子に乗る。汚い菌や、ない噂も広められた。
先生に相談したって助けてなんてくれなかった。自分が悪いのではないか?と聞いてくる始末。
僕はただ絶望した。
その時の願いはただ1つ。助けてくれる友達が欲しかった。そんな存在は現れる事は無く時間だけが過ぎていく。
ある日、僕は歩きながら1つの考えを思いついた。居ないなら作ればいい。と。
あの声を脳内で再生しながら、悔しさや悲しみを擦り付けるように、練り込むように心の中に友達を作った。何も話してくれないし、返事しかしてくれないが僕はそれだけで充分だった。
「今日も陸上の為に学校に行くよ」
――あぁ
「明日絶対に勝つ」
――あぁ。
気晴らしであって自分を出せる陸上のために僕は生きていた。1人でも必死に練習して、見返す事になって、僕達は大会は優勝し学校を騒がす存在にもなった。
しかし、変わらず気に入らない人も沢山いる訳だ。
いじめは少しマシになったが、既に僕の心は壊れていた事に気づいた。人の影が心の色が、肩に何かが掴まっているようにみえていた。
寂しい悲しい憎い辛い。僕も皆のように幸せになりたいだけだった。平凡な毎日さえあればそれで良かった。
僕は、理想とかけ離れた毎日に泣いていた。1人しかいない帰り道で。
そんな時だった。
――何を泣いている
「――!」
ある日その声は変化した。少しずつ声がはっきりして僕の頭を撫でるように暖かかった。
「今日も学校に行くよ」
――あぁ、堂々と胸を張って行けばいい
「うん」
いつの間にか、はっきりした自我を持つようになっていた。自分は何も言わせてないのに。
「で今のアラストリアが生まれました」
僕はこの事を軽く話した。
詳しい話をしたいが既に記憶には穴があいている。
「なるほどな」
おじいさんはコクコクと首を動かした。と思えば、また首を捻る。
「アラストリアはあんな姿なのじゃ?まだお前を支える優しさがあるのに、カクラジシさんから聞いたがそれは黒いとか」
確かに優しいし親みたいや存在にみえるだろう。なら、もう少し話せばいい。
「お主の想いはそれだけか?」
「いえ」
ここで終われば良かったのに、大きないじめが僕に迫っていた。
ただうるさくて醜く見えた。僕は縮こまり耳を塞いだ。
――アイツらは無視しろ。お前の害だ
「―!」
――お前には我がいるではないか。好きなようにやれ
アラストリアは彼らを指差し蔑んだ。
――アイツらはお前を傷つける。人間のゴミとはこの事か
だんだん僕の心にはや悲しさより憎しみが増え始めた。やり返してやりたいという気持ちが先に先にへと芽生えていく。
「っもう大丈夫だから!」
僕はある日サッカーで女の顔を当てた。関係無いゴミが揚げ足を取るように僕を部屋の隅に追いやった。
確かに僕も悪いがちゃんと謝って保健室に着いていって出来ることはしたんだ。相手はニヤニヤしていた。憎かった。
「……」
「なんか言えよ」
――このままでいいのか?
「…」
いい訳が無い。
根も葉もない噂をクラスには言いふらす。僕の友達は奪う。おかげで、僕にはなにもない。
僕の人生に当たり前のように入ってくるな。どうせお前らはストレス発散の道具にしているだけだ。
(ここで黙ったらダメだ。でも、1つ言ったら複数で叩きに来る。)
皆から見られる目を変えないでいいのか?間違っていることも皆が声をあげれば正しくなってしまう。正解は数で決まる?
そんな訳ない。
――潰せ
どうせ友達がいないなら、失うものはない
「ははっ…」
「何笑ってんだよ」
「お前ら………関係無いじゃん?」
壊せばいい。
気づけば、周りで1番弱い奴を蹴飛ばしていた。
友達が居ない約1年ずっと人間観察をしてきた。誰がどういう立ち位置で、弱点……癖………人間の行動パターン。
僕は小学生でありながら人間のほとんどを知ってしまった
言葉による影響の限界。顔の強弱、空気、考え方、いじめで歪んだ僕の脳は壊れていた。
僕はアラストリアとずっと傍にいてくれた。周りからは1人でも僕にとっては2人だった。
つまらない世界でずっと人間を見ていた。
そして結論は1つ
僕は1人(2人)でも生きていける。
「何してんだよ!?」
僕を殴ってきたやつをかわし背中に蹴りを打ち込んだ。
背中の上の方を思いっきり打てば過呼吸状態になるらしい。たまたまだが、呼吸を荒らげる奴を見てそう思った。
反省など1mmもなくマジマジと見つめていた。こいつらは観察材料にしか過ぎなかった。
それほど僕の心は麻痺していた
僕の意識はあまり無かった。
どちらかと言えばアラストリアにもたれかかっている感じで、ただ全てがトントンと進んでいく。
恐怖に思えても逃げ出せなかった。
「彩夢くん怖い」
一人の女が後ろに下がった。
ザワザワと悲鳴とざわめきが僕の周りで鳴った。仕方ない。全ては自分を守る為だ。
「来るなら来いよ。これまで、散々やってくれたな。」
どうせ出来ない物を作るつもりはない。なら、力で自分を守るしかない。
この生活を続けるか。怖がられて孤立するか。
僕の答えは後者だった。
だって僕にはアラストリアがいるから。ひとりじゃない。
僕の想いは。
「ざっくり言うと、認識を壊して自由に生きていきたい。それが僕が願った想いです。」
認識というか、既成概念はそういうものだと広く認識された物。そして既に固まってしまった概念。
その時、「僕はいじめられるもの」「遊べるもの」という認識を壊し「関わりたくない人」になった。
その後に先生に散々怒られたが。
僕の狙いは当たり、そこから僕は1人になった。毎日、インターネットや本で生きていくために必要な情報を調べあげた。
誰にも怒られず法にも触れず許された範囲で動く為の。
小学校では人間を信用せずに生きていった。中学からは、友達が出来てそれを隠すようになったが、素は隠しはしきれなかった。
まあ、この話はいいだろう。
「少し分からん事はあるが、大体は分かったぞい」
きっと僕が銃を使った戦いも、アラストリアに願った想いが反映しているんだろう。
銃という認識を塗り替える。
僕は自分の手のひらを見つめていた。
「ピロピロピロ!」
1人の妖精がおじいさんに何か言っている。
「危ないってこと?」
もう1人が声をあげる。
何故彼女だけ聞こえるのか?
僕は危険人物扱いされているのか。だが、ここで殺されるのは困る。
「僕は決して危害を与えません」
僕はおじいさんに目で訴えた。
それだけは僕の信念だ。
僕をよく見てくれる人には手を出さないし、道具にでも喜んでなってやる。まだ分かりきっていない人に手を挙げるなんて最悪だ。
「ほっほほ。大丈夫じゃよ、分かっておる。こちらもお主には絶対に手を出さぬ」
おじいさんはゆっくりと喋る。やはり、何故か安心感を覚えるような温かみがある。
「お主はもしかしたら最初の時に精霊を呼び寄せたたのかもしれぬな」
「どういう事ですか?」
「裏切られた時に気持ちに大きな波が出来た………そこから魔力に目覚めた。人の心には想いの源…魔力がほんの少しあるからのう。」
魔力。
「その想いが狂って波が揺れたせいで魔力がおかしくなり何かしらの反動が起きた。それが………最初の声。つまり、精霊を呼び寄せたのかと」
「なら、僕が風の雰囲気を感じ取れたのは」
「そうじゃ。おそらく風の精霊が力をくれたのじゃな」
風の精霊が僕を助けて導いてくれた。
「その存在に会うことは?」
「そうとは言ってもなぁ。沢山の種族がいるし風の精霊など数え切れぬのじゃ」
「そうですか」
僕は落ち込んだが、またいつか会えるかもしれない。
「あまり落ち込むな。ワシらも少し探してみよう。」
「……ありがとうございます。」
次に会った時にはお礼を言わないとな。
「ピーピー!」
また、精霊がなにか声をあげていた。
「あの。さっきから1部の精霊からしか聞こえないのですが」
「じゃあ彼女は聞こえるかのう?」
おじいさんは、青緑の精霊を指差した。
「私?」
声がしっかりと聞こえる。
「 はい」
「それはお主の魔力が、風だからじゃのう」
精霊は手にフワッと小さな風を起こした。
「…どう?」
「凄いですね!」
僕が風の雰囲気を読み取れたのもその精霊のおかげで僕には風の魔力があるのか。
僕の様子を見ていたのか、隠れていた精霊達も出てきていた。
「魔力がもっとあれば他の子も聞き取れるぞい」
「………精進してみます」
「人間がどこまで出来るかは分からぬが、頑張るのじゃ」
そして、暫くの間が僕らにながれた。
要件は終わったし。
「えーと。もう帰っても?」
「まだじゃ」
「え」
「お主のアラストリア……人間に対する怒りで黒いんじゃとは思うのだが、まだまだ分からぬ」
「死呪霊に形など無いんじゃ。そして、何故……魔力のない1人の人間によって生まれそれが意識を持ったのか」
「それは僕にも分かりません。」
「お主の想いがよほど強くても、そこまでの精霊は不可能に等しい……」
おじいさんは言葉を続けていく。
「死呪霊は近頃現れるようになった。アラストリアはもしかすると」
「死呪霊がうまれた祖先に近い存在かもしれない。お前に取り付くことで何かしようとしているのかもしれないぞ」
「………僕をですか」
「そうじゃ。ワシが考えるには、お主が危険になると思う。」
僕の身体は既に危険な状態…
僕が精霊界で働く?そんな事している暇は…