第二章 3話 そうか。ならばダイエットだ。
春歌と光希と一緒に転生前者を見つけた
いちよう、止めれたが…
「なんで異世界じゃねぇんだよおおおお!!!」
大体、160くらいで声変わりしてて骨格もよし……うん。高校生くらいだな。
「私達はですねー自殺する事なく幸せに暮らして貰う為! ここに来たんです!!」
春歌はどやっとそう返した。そういえばウィストリアも同じような事を言ってたな。
「嫌だ!俺は異世界に行くんだ!」
彼は、すぐに立ち上がり周りを見渡している。
「トラックか?」
「トラックだろ!」
まぁ、トラックが代表だしな。僕は納得した。
「トラックというものがあれば天空に行けるんですか?」
「いや……その…………」
「あーもう、うるさい! 俺は行くんだ!」
男は話している僕達を払い走り出した。そこまでうるさくした覚えはないんだが。
まぁいいだろう。
僕はすぐさま追いかける。
「なんだコイツッ………速い!」
「元陸上部をあまり舐めない方がいいぞ」
僕はすぐに男の前に立ちはだかった。相手は息切れしてるが、僕は100mも走っていないしケロっとしている。
「邪魔をするな!トラックで死ぬんだ!」
「お前なぁ………トラックが可哀想だと思わないのか?」
「え?」
男は急になにを言い出すんだ。と立ちすくしていた。
「いいか!? トラックと運転手はな、朝昼晩不規則なんだぞ! しかも、時間厳守で届けてくれるだけでなく肉体労働まである……トイレだって行けない時もあるんだぞ!」
「…」
「流石にトラック事故の援護はしないが、毎日頑張って罪のない人に殺人させたって傷を負わせ、仕事の邪魔をしていいのか!? お前はマイナーなグッズをインターネット通販で注文して届けてくれた恩はないのか!?」
僕は何故かトラックについて語り始めていた。
「トラックって凄いんですね!」
春歌は感心していた。男はじっと睨み頭を低くして耳を押えていた。
「確かにですけど、現実みせないでください。ラノベを純粋に読めなくなるじゃないですか」
うむ。まあ、ラノベ読む時に現実を考えたくないか。
「まぁ、聞きたくないなら少し話を聞いてくれ」
という事で場所に戻り事情を簡単に話した。
「えっーと、つまり俺の悩みを解決してくれると?」
「そういう事だ。」
流石、ラノベとか読んでいると理解が速くて助かるな。
「本当に天空の人なんですか?」
「はい! 信じれないなら証拠見せてあげますよ! えーと、人がいない所ってありませんか?」
春歌が立ち上がりキョロキョロと周りを見渡しながら、彼に顔を近づけた。
「あああっ……はい!あ、ありますよ!」
恥ずかしそうに顔を赤くしてニヤけるようにして走っていく。これはアレだな。僕もだけど。彼に付いていくと人気がない森の茂みだった。
「あっここなら大丈夫ですね! 眼鏡さん力を貸してください。」
春歌が眼鏡をかけるとふーっと息を吐いた。
「シーレス!!」
周りを白く囲んだ後、虹色に光って溶けていった。
「これで視界は大丈夫ですね。彩……っ零くん! 光希くんを真ん中に寝かしてください!」
「分かりました」
言われた通り真ん中に僕は光希を寝かしてあげた。
「さぁいきますよ!! 防御魔法展開! とおせん防兵隊!」
彼女が手を挙げると、弥生の周りに四人の小さな石の兵隊が現れた。
「通サン!通サン!ガガガ………」
行進を始め、光希の前に来るとピタッと止まる。
「あれ?いつも10人にくらいいるんですけどね。まあ気にしてもしょうがないか! では、『回復』を付与します!」
左腕に注射器を突き刺すと、兵隊は緑色のオーラをまとう。
「回復ダ! 回復ダ! ガガガ…」
兵隊達は腕を上下に振り飛びながら緑のオーラを全体に撒いていく。光希の傍にいた僕の意識もオーラがまとう。効果は強いようで熱中症のようになっていた意識も少しづつはっきりしていた。
「………ん?」
光希は目を覚ますと僕達を見つめていた。
「光希!? 大丈夫か?」
「うん!」
元気そうで良かった。僕達は胸を撫で下ろし安心した。無事で何よりだ。
ということで、軽く事情を弥生にも説明しておいた。
「おねえさん ありがとう!」
「いえいえ! 当然ですよ!」
春歌は嬉しそうに微笑んでいた。前は不安だったが確かにウィストリアに任かせられるだけの実力はあるな。
「あれ、私の兵隊さんは」
「うあああ! 助けてくださーい!」
安心しきっていたが、男の方を見ると兵隊達に襲れている。ケツを叩かれて痛そうだな。可哀想だから止めてあげないと。
「失礼します。」
バン!バン!バン!バン!
「ピピピ…」
僕が銃を打つと動きは少し鈍くなった気がする。でも、やっぱり効いていないな。
「ああああああ!!! 撤回撤回!」
春歌がそう叫ぶと、兵隊は光り輝いて消えていった。
「すいません。なんか魔力が変で」
ウィストリアも同じ事を言っていたが、何かがおかしいのだろうか?
「あっ俺は、全然大丈夫ですよ! 凄いですね。」
「いやーそんな事はないですよー?」
男は信じてくれたようだ。暫くして、男は思考中のポーズを止めてスプラウトに口を開ける。
「本当に、悩みを聞いてくれるんですか?」
「もちろんです!」
スプラウトに目が奪われているのは分かるが、僕達って眼中に入ってるか?
そう思えば、相談者にとって彼女は話しやすい雰囲気があるし適任なのかもしれない。ウィストリアより人間慣れしてるというか……
僕らは邪魔なのかという複雑な思いを抱きながら光希と静かに聞いていた。
「俺、太っているだけでずっとバカにされてるんです。学校で見下されていじめられて!」
「なるほどなるほど。それは嫌ですね。」
男は早口で喋り始めているが、スプラウトはそのスピードについていくように相槌を打っている。凄いなこの人。
「バカにされてるから友達も出来ないし、彼女も出来ないんです。俺、普通に暮らしたいだけなんです。助けてください」
「なるほど。どうしましょうか」
「どうして太っているだけで駄目なんだ。生きていく価値ないのか……俺は…俺は」
少し時間が経つだけで、どんどん自分からネガティブになっていく。
「じゃあ!!! 洗脳して何を言えないようにしたらいいのでは! 友達だって……」
「ま、待ってください! 他にいいのありますよ!」
天空の人は魔法でごり押しが好きなのだろうか?僕はスプラウトを止めて男の前に立った。
「そうか。ならばダイエットだ!」
「「???」」
皆の疑問の目が痛い。
「嫌です。俺内面には自信あるんでそれを生かし」
「ダイエットしようぜ!!」
高跳び選手にとってダイエットは当たり前だ。というより自分の一種の楽しみになっている。
「とりあえず、ダイエットだ!」
「こんなダイエットしたがる人初めてですよ。」
つまり定期的にしないと落ち着かないという訳だ。今ならその欲をぶつけても構わない。
「ダイエットしようぜ!」
「………分かりました。」
数分後の説得の後、ようやく折れてくれてダイエットに承諾した。どちらかと言うとさせた。
「本当に大丈夫なんですか?」
「まぁ、中身が大丈夫ならあとは大丈夫だ!」
彼は本当か?と言いたそうにジト目をする。
「確かに体型だけでバカにするのは駄目だ。しかし、この状況。逆に取れば大きなチャンスになる。」
「本当ですか!?」
「あぁ、周りに過程を見せよう。感動は結果より過程、それを利用する。」
「人気者になれますか!? 彼女出来ますか!?」
期待がどんどん大きくなってないか。そこまで出来るなんて言ってないんだが。
「人気者になるかは分からん。あと、僕は彼女がいた事ない」
「嘘ですよね。」
「本当だ。」
「いる癖に〜」
ニヤニヤしながら僕を腕でつついてきた。何だこのノリは。黙らせたいな。
「じゃあ失恋話でも聞かせてやろうか?」
「えー?あるんですか? 言ってみてくださいよ〜!」
そこまで言うなら仕方ない。僕達は少し離れた所に移動する事にした。
「春歌さん絶っっ対に!! 光希をこらせないでください!」
「分かりました!」
「はなせ! ぼくもきく!」
春歌は光希を必死に押さえつけていた。
――数分後
「一生ついて行きます。師匠」
「分かればいい。」
「えぇ………」
春歌と光希は呆然と見ていた。
「よし、じゃあ明日からダイエットな! 僕は零だ。」
「私は春歌です」
「ぼくは、みつき」
「俺は牙陪蘭って言います。よろしくお願いします!」
「あぁ。よろしく!」
「お前は、グッズを購入してトラックの音を楽しみにしたことはないのか!?」
「いや。俺現地で買えるので。」
「…………っ。」




