第二章 2話 次なる転生前者
僕達の前に現れた死呪霊とスプラウト。
死呪霊により、ウィストリアは調べないらしい。
新人研修としてスプラウトと弥生と共に現実世界に来たが
気がつくと、どこかの山にある山頂についていた。
「なんでこうなったんですか。」
「いやー魔法ミスっちゃって」
スプラウトは、頭を掻きながら申し訳なさそうに笑っている。彼女の姿も人間ぽいし弥生も別人だな。
「えーと。じゃあ、降りましょう」
考えても仕方がないので僕達は山を降りることにした。弥生はまだ疲れてそうだし、おんぶしてあげるとすぐに眠っている。
二人っきりで歩いているが。彼女は、気遣って静かにしているように見える。思い切って何か話しかけてみよう。
「あの、前使っていた注射器らしき物ってなんですか?」
「注射器?あっこれですか?」
スプラウトは注射器をポケットから取り出した。
「これは強制魔力付与器っていうんです」
「強制?なんか見るからに痛そうですけど」
見た目的に現実の注射器と変わりないしな。
「私、生まれつきで防御の魔法しか使えないんです。でも、この社会で生きる為には攻撃の方も出来ないと駄目なんですよね」
「そんな社会が……天空って大変なんですね」
天空にも色々と事情があるんだな。この世界でいう学歴みたいな感じだろう。
「でも、これがあれば大丈夫です! これはですね、ウィストリアさんのプレゼントなんですよ」
なるほど。僕の銃と同じように道具に寄って補ってくれるという訳か。
「これは精霊から力を借りてですね。自分の魔法にあらゆる効果を付与出来るんです! あっ痛くないですよ!」
スプラウトは自分の腕に刺しても血が出ていないし何回刺しても傷跡がない。
「凄い! それに精霊もいるんですね」
「はい、私の部屋にいますよ! また見せてあげますね」
なるほど。彼女は防御魔法しか使えないけど頑張っているという事か。その時、僕は不意に大事な事を思い出した。
「ちょっと待ってください。防御魔法しか使えないんですよね?」
「そうですよ!」
スプラウトは自信満々に頷いた。
「今から行く場所分かるんですか?」
「……」
「ああああああああぁぁぁ!!やらかしたあーー!!!」
急に頭を抱えて、しゃがみこみ落ち込んでいた。
「あの〜弥生くん。天空と繋がる魔法とかー使えませんか?」
「むり…むにゃ」
スプラウトはハッと青ざめていた。でも天空と繋がるといえば、そういえば、
「メッセージは届けられますよ」
「本当ですか!?」
僕はブレスレットにウィストリアを思うと、光り始めている。
「あーウィストリアさん。僕です、彩夢です。行く場所が分からなくて」
「ウィストリアさーん! 眼鏡貸してください」
スプラウトは泣きながらスっと声をいれた。言い終わると光は勝手に消えていく。
「眼鏡??」
「ウィストリアさんの眼鏡は色々と凄いんです! ウィストリアさんの3分の1の魔力持っていて、大体は出来ますよ!」
「なるほど」
そういえば、最初の時も僕を助けてくれたな。
しばらく歩いていると、急に空から眼鏡が降ってきた。眼鏡は手紙を僕に押し付けるように渡してくる。
えーと、『今、手が離せないから私の眼鏡を貸そう。スプラウト、固定魔法を後で教え直してやるからな』
「固定魔法?」
「1日だけ、身体の性質に対して無条件に使う事が出来るやつですね。怖いよ〜ウィストリアさん!」
スプラウトの顔はどんどん青ざめている気がした。そんなに怖いのか。
「とりあえず、これで大丈夫ですね。今は早く行きましょう。」
スプライトを励ましながら歩いていく。そして、眼鏡がずっと僕にくっついてくる。
「さっきからなんだよ!?」
「彩夢くん、気に入られてますね!」
眼鏡に気に入られるってなんだろ。うるさいので眼鏡をかけ山を降りると僕は2人を本屋に連れて行った。
「ここなんですか?」
スプラウトは周りをキョロキョロしながら頭を捻っている。とりあえず本屋について適当な説明をした。
「名前決めましょう、人間っぽいのを。」
「それは分かるんですけど」
前とは違う2人の女性が雑誌を見ながら話しをしていた。
「この光希くんかっこいいよね!」
「よし、弥生は光希な」
「うん」
「適当すぎません? とりあえず私も探してきます」
待っている間に、ウィストリアさんへの本を買い光希が欲しい本も買ってあげた。
「決めました! 春歌にします!」
「春の歌」という小説を見て頷いていた。
「いいと思います。じゃあ、行きましょうか」
僕達は本屋を出ると眼鏡が赤い矢印で示した方に向かっていく。ゲーム感覚だな。
「それにしても彩夢くん、ウィストリアさんが付くなんて凄いですよね」
「え、そうなんですか?」
話す人が天空にいなかったから分からなかったが珍しいのか。
「天使がつくなんてまず無いんですよ。あくまで天使は転生者の足止めくらいなので」
「知らなかったです」
ウィストリアが僕を見込んでくれたのか、はたまた人がいなかっただけなのか。
「あっここですね。」
眼鏡の赤い矢印が下に向き立ち止まった。といっても何も見当たらない。人通りが少なく車も少ない場所だし居るなら気づくはすだが。
「あっあの子じゃないですか!?」
「!」
遠い所で、その子はトラックを見つけて歩いていく。この距離は間に合わないか!?
いや、とりあえず走るしかない
「待て!!!」
トラックはもう止まれる距離じゃない。どうする? ぶつかるか? いやそれでも
「うあああ! 止まれ!!」
運転手も驚いて悲鳴をあげていた。
クソっ! 少し非現実にはなるが彼を抱えて横に回転しタイヤを間一髪でよけるしかない。
「……うごけ!」
その時、弥生の声と共にトラックが勝手に動いた。避けるというより、グイッと無理やり動かしたように見える。
例の子はぶつかったと錯覚したのか倒れこんでいた。
「がはっ」
「………大丈夫か!!!」
こう動かすのはやはり負荷が大きすぎるだろう。力を使いすぎたのか光輝が吐きながら倒れた。
「光希!!」
「私が見ます! 先にその子を!!」
「おい、気をつけろよ」
トラックのおじさんはパニックになりながらも胸を下ろし消えていった。
「すみません!」
僕は速く動かさなければと道路に転がる青年に腕を回した。が、 ……重い!
軽い気絶状態か。飛び降りとかは落ちている間に気絶するというし。陸上部としてここで挫けるわけにはいかない。俺はダンベルを引きずるように全力をだし連れていくことに成功した。
「はぁ……は……あっつ」
それにしても、コンクリートからは熱が発していて暑い。今は夏だろうか?
僕の意識も少し歪み始じめていく。彼を転がしてはリュックから水とタオルを取り、濡らして拭いてあげた。水蒸気は体に良かった気がする。部活で倒れていたら水吹きして扇いであげていたし。
相手の口に手を当てると呼吸はしているようだ。少し太っている青年だった。
太っている分、熱が籠っているが命に別状は無いだろう。僕は服を緩め手で扇いでいた。
(光希は)
周りを見渡すと春歌が抱き抱えて運んでいる。
「あの、大丈夫なんですか!?」
「はい。無理をしたようですね。後で回復してみます」
スプラウトに回復が出来るか分からないが頼むしかない。
――数分後、男の子は目を開けた。
「異世界だあああ………あれ?」
「悪いな現実だ。」
次回、異世界に行きたがっている男。
トラックの仕事も大変なんだぞ?
バカにされている?そうか
夏だし、いいタイミングだ。
次回
そうか。ならばダイエットだ。




